北朝鮮、新型の極超音速中距離弾道ミサイル発射実験に成功と発表 「マッハ12で1500キロ飛行」と主張
北朝鮮国営メディアは7日、最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の参観のもと、同国ミサイル総局が6日に新型の極超音速中距離弾道ミサイル(IRBM)の発射実験に成功したと報道した。
同国の労働新聞によると、今回のミサイルはマッハ12(音速の12倍)に達し、金委員長は「我々の中距離極超音速ミサイルシステムの性能は世界的に無視できないものであり、いかなる密集した防御の障壁も効果的に突破し、相手に甚大な軍事的な打撃を与えることができる」と誇示した。さらに「極超音速ミサイルシステムは、国家の安全を脅かす可能性のある太平洋地域のあらゆる敵を確実に抑止するだろう」と述べ、核ミサイル開発を含めた国防力強化を「加速」すると宣言した。
北朝鮮メディアは今回の固体燃料式のミサイルを「新型極超音速中長距離弾道ミサイル」と表現しただけで、「火星○×」といった具体的な呼称を明らかにしていない。しかし、北朝鮮が2024年4月2日に一度試験発射した新型IRBM「火星16B」の改良型で、ミサイル防衛システムをより効果的に破れるよう設計され、機動性が高く探知の難しい弾頭を搭載している可能性がある。
労働新聞によると、今回のミサイルは首都、平壌市郊外の発射場で東北方向に発射された。ミサイルの極超音速滑空飛行戦闘部(弾頭部)はマッハ12に達する速度で「第1次頂点高度」の99.8キロメートルに達し、その後降下して再び「第2次頂点高度」の42.5キロメートルを飛行した。そして、予定された軌道に沿って飛行して1500キロメートルの公海上の目標水域に正確に着弾したという。
労働新聞は「新型極超音速ミサイルのエンジン本体の製造には炭素繊維複合材料が使用され、飛行・誘導制御システムには既に蓄積された技術に基づく新たな総合的かつ効果的な方法が導入された」と報じ、改良型の新型ミサイルであることを示した。
さらに、金委員長が「今回の試験発射は、現時期の敵対勢力によって国家に加わる各々の安全脅威に対処し、我々が極超音速中長距離弾道ミサイルのような威力のある新型武器体系をしっかり更新していることを疑うことなく証明した」と言い、「このような武器体系を保有した国は世界的に数少ないだろう」と述べた。
北朝鮮は通常、この「敵対勢力」という言葉を米国と韓国を指すのに使っている。今回のミサイル発射は6日朝のブリンケン米国務長官のソウル到着に合わせたタイミングで実施されたとみられる。また、平壌から約3400キロ離れた米軍の要衝グアムを射程に収めるIRBMは、1月20日に米大統領就任を控えたトランプ氏の第2次政権を牽制する狙いもあるだろう。
金委員長は、新型極超音速ミサイル開発の基本的な目的として「誰も対応できない武器体系を戦略的抑制の核心軸に立て、国の核戦争抑制力を引き続き高度化する」ことを挙げた。
北朝鮮メディアが報じた写真を見ると、6日に発射されたミサイルとそのくさび形の極超音速滑空体(HGV)は、新型IRBM「火星16B」に似ているように見える。一方、昨年1月14日に打ち上げた名称のない固体燃料式の極超音速IRBMは円錐形の機動式再突入体(MaRV)を搭載していた。
日本の防衛省の6日の発表によると、北朝鮮は同日正午過ぎ、北朝鮮内陸部から少なくとも1発の弾道ミサイルを、北東方向に向けて発射。最高高度約100キロ、約1100キロ飛翔し、朝鮮半島東の日本海に落下した。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外であったと推定されている。
一方、韓国軍の合同参謀本部は当初、「中距離級と推定される」と発表したが、その後、飛行距離は約1100キロで、中距離級の距離には及ばなかったと明らかにした。
北朝鮮が公表した「第1次頂点高度」は日韓当局の推定値と一致しているものの、北朝鮮が主張する1500キロというミサイルの飛行距離は日韓両国が探知した約1100キロよりもはるかに長い。この食い違いが極超音速ミサイルの飛行中の機動性によって、探知が困難になったためかどうかは分かっていない。
北朝鮮にとって、2025年は2021年1月の朝鮮労働党大会で決定された国防5カ年計画の最終年であり、金正恩氏は新型固体燃料中距離弾道ミサイル(IRBM)、海と陸の両方から発射される大陸間弾道ミサイル(ICBM)、多弾頭技術、さらには同国初の原子力潜水艦の完全配備に重点を置く可能性が高い。
今回のミサイル発射は、昨年12月23~27日に開かれた朝鮮労働党の重要会議の中央委員会総会で、金正恩氏が兵器開発の「強化」を求めた決定に端を発している可能性もある。
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