同盟国は「子分」だから外交の必要はないと見せつけられた
フーテン老人世直し録(337)
霜月某日
トランプ大統領の初のアジア歴訪によって日本、韓国、中国に対する米国の本音を見せつけられた思いがする。同盟国である日本と韓国は米国製兵器を買わせる対象でしかなく、敵と認める中国だけが「外交」の対象とされた。つまり同盟国は「子分」だから外交の対象にならない。
今回のアジア歴訪は米国にとって北朝鮮の核開発をどのように抑え込むかが第一の課題だとされた。トランプ大統領はこれまでしきりに軍事オプションに言及し、一方で政権幹部は外交交渉の可能性をちらつかせ、両面作戦で北朝鮮の譲歩を引き出そうとしてきた。
各国首脳の中でトランプ大統領の軍事オプションを支持するのは日本の安倍総理ただ一人である。韓国や中国は各国と同様にあくまでも話し合いで解決する道を模索している。当たり前の話で米軍が北朝鮮を軍事攻撃すれば韓国経済は壊滅的打撃を受け、中国も日本も深刻な打撃を免れない。
しかし軍産複合体に支持基盤を置くトランプ大統領は米軍の演習の回数を増やし、軍事予算を増額しなければならない立場にある。軍事オプションの可能性を繰り返し発信しないわけにはいかない。ただし本当に軍事オプションが可能かと言えば簡単でないことは皆分かっている。
トランプ大統領に気に入られることだけが目的の安倍総理はトランプ大統領の言うことにはすべてイエスである。従って軍事オプションも支持するし、トランプ大統領の意向を忖度し米国軍需産業が作る兵器購入も重要な選択肢に入る。
日本の税金の使い道に占める軍事費の割合は上昇する。それを批判させないためには国民に北朝鮮危機を深刻に受け止めさせる必要がある。ミサイルが発射されれば戦争の前線である韓国もやらない空襲警報を鳴らし避難訓練をさせるのは、国民に身体で恐怖感を味わせるためだとフーテンは考える。
これを見ればトランプ大統領は「国民の安全を守るため米国製兵器を買ってそれで北朝鮮のミサイルを撃ち落とせ」となる。「日本国民も安全になり米国軍需産業も儲かるから日米ウィンウィンになる」というわけだ。断る理由は見つからない。つまり北朝鮮の核・ミサイル実験は現状では米国の利益になりそれは最大限に利用される。
しかし米国内では迎撃ミサイルの性能について「18回の実験で10回しか当たらない」と報道され、北朝鮮危機を煽って当たるかどうかわからない兵器を米国が売り込むことに批判的な報道もある。昔は日本でも自民党内にそうした批判があったが、どういうわけか最近では全く聞かれなくなった。
米国製兵器の購入は最初の訪問国である日本での共同記者会見でトランプ大統領から持ち出され安倍総理が購入を約束した。同じことは翌日の韓国でも繰り返され、韓国も兵器購入を約束した。米国から見れば日本と韓国は同盟国だがそれは限りなく「子分」に近い。本音では主権国家と見ていないところがある。
歴代米国大統領は日本と韓国に対し一応主権国家と認める素振りをしたが、トランプは本音の人だから建前にこだわらない。今回の歴訪で初めて大統領専用機が到着したのは日本の主権の及ばない横田基地であった。そこは米国領であるから米軍兵士の熱烈な歓迎を受けるところからトランプ大統領の日本での日程は始まった。
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