2023年6月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート
この記事では、先月の記事「2023年5月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート」に引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。衆議院の解散風が強烈に吹き荒れた6月について分析します。
岸田内閣の内閣支持率は1ヶ月で激減
まず、モーニングコンサルト社のデータです。モーニングコンサルト社が行っている内閣支持率調査では、6月27日時点で、支持率が26%、不支持率が62%となりました。
内閣支持率は、結果的に今年5月のG7終了時点が上昇のピークとなり、岸田首相の長男で首相秘書官であった翔太郎氏が不適切な行為を行ったことが週刊文春に報じられて以降は、その上昇傾向に歯止めがかかりました。そして、6月になり、衆議院解散に関連する岸田首相の反応や、政府のマイナンバーカードを巡る対応によって内閣支持率が低下基調に入ったと考えられます。
岸田内閣の支持率が激減したのは「不信感」が原因
グリーン・シップ社の調査をみても、モーニングコンサルト社の調査結果と同様に、内閣支持率は5月から低下傾向となっていました。この内閣支持率は岸田首相就任以降の支持率の中でも、かなり低い数値となっています。
なぜ今年1月から上昇傾向にあった内閣支持率が、これほどまでに低下してしまったのでしょうか。
前回、内閣支持率のトレンドが上昇から低下に入れ替わったときは2022年7月頃です。当時の低下の原因も考慮すると、国民の岸田首相への「不信感」が内閣支持率激減の要因となったとみられます。つまり、岸田首相が「公共の利益」よりも「政治家としての個人的または政治的な利益」を優先する可能性があるとの不信感を国民に与えると、内閣支持率は激減するのです。
前回、内閣支持率が大幅に減少したのは、安倍元首相の「国葬」を実施するかしないかの議論の最中である2022年の7月でした。岸田首相は、野党や一部の報道機関が国葬の取り扱いを批判していた中で「国葬」の決定を行ったため、強行したというイメージを持った国民も一定いたとみられます。結果として執り行われた国葬は、一部の国民にとって理解できる説明がないまま執り行われたものと写り、それが岸田首相への不信感へと繋がり、旧統一教会と自民党との関係が徐々に明らかになったことも影響して、内閣支持率が激減するきっかけとなったとみられます。
今回の内閣支持率激減の中で、内閣支持率に影響を与えた岸田首相の行動は、「岸田首相の身内である首相秘書官が不祥事が辞職したこと」と「首相の専権事項である衆議院解散について、記者会見などで匂わす発言があったこと」だと考えられます。前者は、センセーショナルな写真に加えて一般的な政治家の世襲批判も相まって、支持率を大幅に低下させました。また後者の衆議院解散については、衆院解散の「温度感」を変えるような発言を首相自らが行ったことで、永田町を中心に強烈な解散風が吹いたにもかかわらず、結果的に衆院解散が行われなかったことで、求心力の低下につながったとみられます。いずれにせよ、これら二つの要因が、個人的または政治的な利益を優先している印象を国民に与え、不信感に繋がったと考えられます。
実際に、岸田首相が「解散しない」と明言する前に世論調査を行った主要調査機関は、NHK、ANN、時事通信の3社です。この3社の内閣支持率の平均は、先月と比べて内閣支持率-3.5、内閣不支持率+4.4の数値となりました。一方、「解散しない」と明言した後に世論調査を行った主要企業は、朝日新聞、読売新聞、産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞、共同通信、選挙ドットコム(電話調査のみ)です。この7社の内閣支持率の平均は、内閣支持率-7.5、内閣不支持率+7.2の数値となりました。この結果からみても、「解散しない」という岸田首相の決断が、内閣支持率の低下に大きく影響したと考えられます。
マイナンバーカードの問題は支持率に影響を与えたか
先述の通り、岸田首相の「衆議院を解散しない」という表明前に調査した3社の内閣支持率が減少していたのは、5月末に岸田翔太郎元首相秘書官が更迭されたためです。その後、この「衆議院解散」問題が加わったことにより、追い討ちをかけるように内閣支持率が激減したと考えられます。
また、6月の岸田首相の内閣支持率が減少した理由として、メディアで取り上げられがちなのは「マイナンバーカード」に関する問題です(これについては、拙稿「マイナンバー問題は岸田政権にどれだけ影響を与えるか」をご参考下さい)。
しかしながら、この問題に対するメディアの批判の矛先は、主に岸田首相ではなく、河野太郎デジタル大臣です。もちろん、岸田首相には任命責任があり、マイナンバーカードの批判が岸田首相に対しても一定あることは間違いありません。しかし、内閣支持率は、その名称が指す内閣全体の行動に対する評価というよりも、首相本人の行動や発言への支持率を反映している側面が強くあります。首相の行動が支持率の増減に直結しているのです。そのため、内閣支持率が低下した理由のひとつとして「マイナンバーカード」に関する諸問題があるのは間違いないですが、主な要因は国民の岸田首相に対する「不信感」が高まっている結果と考えられます。
政党支持率では、横ばいだった自民党の支持率が低下
6月の各政党の支持率は、自民党が30.8%、日本維新の会が16.1%、立憲民主党が8.5%、れいわ新選組が5.2%、国民民主党が5.3%、共産党が4.3%、公明党が3.6%、参政党が3.2%、NHK党(政治家女子48党)が1.2%、社民党が0.5%となりました。推移を見ると、自民党はこれまで横ばい状態が続いていたものの、6月末に28.2%と低下しました。維新と立憲は共に微増傾向となっています。維新・立憲に次ぐ政党として、先月に引き続き、国民民主党とれいわ新選組が同程度の支持率を獲得しています。
れいわ新選組のパフォーマンスは政党支持率に影響を与えたか
6月8日には、「れいわ新選組の山本太郎参議院議員が入管難民法改正案採決の際、参議院法務委員長に向かって後ろから飛びかかろうとした」という事件がありました。この事件に関する一連の報道に対し、6月8日以降のれいわ新選組の支持率に注目すると、政党支持率は数日は伸びたものの、その後は従前と同様に戻っており、効果は一時的なものだったと考えられます。『山本太郎参議院議員の「ダイブ行為」は支持率を上げるためのパフォーマンスだ。』などの批判もありましたが、今回の出来事に対する政党支持率上昇という効果はなかったようにみえます。