2023年5月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート
この記事では、先月の記事「2023年4月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート」に引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。今回は特に、G7広島サミットを機に、解散総選挙が噂されはじめた2023年5月のデータをみていきます。
岸田内閣の支持率は未だ上昇傾向が続く
まず、モーニングコンサルト社のデータです。モーニングコンサルト社が行っている内閣支持率調査では、5月23日時点で、支持率が34%、不支持率が52%となりました。3月から4月にかけて大きく上昇していた内閣支持率も、5月は伸び悩む結果となりました。しかし、長期的に見れば支持率は上昇傾向にあるため、支持・不支持の差は少しずつ縮まっています。
グリーン・シップ社の調査では、4月から5月にかけての内閣支持率は35.5%、不支持率が53.2%の結果になりました。3月から4月にかけての内閣支持率は31.5%であったため、前回と比べて4ポイント上昇しました。G7広島サミット後には、一時的に支持率が40%を超えましたが、24日に、岸田首相の長男で首相秘書官であった翔太郎氏が昨年末に首相公邸で開催された忘年会にて不適切な行為を行ったことが週刊文春に報じられたことをきっかけに、内閣支持率は最終週に大きく下落しました。(モーニングコンサルト社の調査は、本記事執筆日6月1日の時点で、5月23日までの情報を公開していたので、忘年会を報道されたことによる影響は、支持率に反映されませんでした。)
日別内閣支持率推移(4〜5月)と5月の振り返り
内閣支持率は、国民の関心がある話題となったテーマや、メディアの報道一つで変動していきます。5月の岸田首相に関する主な報道を確認してみましょう。5月初旬には岸田首相のアフリカ歴訪・日韓のシャトル外交と外交面での話題が多かったほか、5月中旬にはタイム誌インタビュー・バラエティ番組出演が話題となりました。下旬にはゼレンスキーウクライナ大統領も電撃参加したG7広島サミット、5月下旬に翔太郎氏に関する週刊文春の報道がありました。
より詳しくみていきます。5月7日の岸田首相韓国訪問は、2011年以来のシャトル外交となり、日韓関係が今年3月の日本で行われた首脳会談と併せて改善傾向にあることが好意的に捉えられたとみられ、内閣支持率の押し上げ要因となった可能性があります。
10日には、アメリカのタイム誌がウェブサイト上で、岸田首相のインタビューを公開しましたが、その内容が「平和主義だった日本を軍事大国に変える」との記述であったために、懐疑的に捉える国民は多かったとみられます。しかし、後日外務省が異議を伝えたことで内容は変更され、ワイドショーなどでの取り扱いも少なく、支持率への影響は軽微だったとみられます。13日には、岸田首相が日本テレビ「世界一受けたい授業」に出演しましたが、これも民放他局では取り扱いにくい内容だったことから、大きな影響はなかったとみられます。
19日から21日にはG7広島サミットが開催され、結果的に内閣支持率を大きく伸ばす要因となりました。緊迫する国際情勢の中、日本も防衛費増額を行うなどの政策で国民から批判を受けましたが、サミットが広島で開催され、岸田首相が「歴史的な意義があった」と述べてサミットの成功を強調したこと、そして各国の首脳たちが平和記念資料館などに訪れたこと、ゼレンスキー大統領の来日を電撃的に実現させたことは、国民にとって「平和への取り組み」を再確認する機会となったと考えられます。新聞各社の論評も(いくつかは実効性に懐疑的な記事もみられましたが)概ね好意的だったことからも、内閣支持率の押し上げ要因となったとみられます。
内閣支持率を49歳以下と50歳以上の年代区分でみると、49歳以下は支持率が微増傾向にあり、50歳以上の方は支持率が微減傾向にあります。特に、5月末の岸田翔太郎前首相秘書官に関する報道については、50歳以上の方の支持率に多大な影響を与えており、テレビ報道での取り扱いの多さも相まって、権力の私物化に対して批判的な考えが数字に表れたものだと考えられます。
支持率低下傾向の立憲と急増傾向の維新
4月から5月にかけての各政党の支持率は、自民党が33.2%、日本維新の会が14.7%、立憲民主党が7.9%、れいわ新選組が4.6%、国民民主党が4.5%、共産党が4.0%、公明党が3.5%、参政党が2.8%、NHK党(政治家女子48党)が1.5%、社民党が0.5%となりました。推移を見ると、自民党は32%で横ばい状態が続いています。日本維新の会は5月末に16.8%となり、先月に引き続いて上昇傾向が続いています。一方、立憲民主党の支持率は4月から5月にかけて9.0%から8.0%となり、未だに低下傾向となっています。立憲民主党の泉代表は5月11日、次期衆議院選挙で150議席を獲得できなければ代表を辞任する強い意志を示して党内の結束を高める試みをしましたが、この発言自体は支持率を取り戻すことには直結していない様子です。なお、維新・立憲に次ぐ政党は、れいわ新選組と国民民主党となっており、同程度の支持率を獲得しています。
このグラフは朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞の新聞5社の世論調査を基に、政党別支持率の平均値を算出したものです。範囲は2022年1月から2023年5月までのグラフとなっています。日本維新の会と立憲民主党の推移をみると、維新と立憲の両党とも、2022年初頭、低下傾向にあった政党支持率が参議院議員選挙の期間に伸びました。立憲は支持率上昇傾向が2023年1月まで続きましたが、維新の政党支持率は選挙後に低下していきました。ところが、2023年に入り、立憲が政党支持率を低下させていく一方、日本維新の会は統一地方選挙があった3〜4月に急激に支持を獲得し、支持率も急上昇しました。
日本維新の会と立憲民主党の支持率でここまでの差が開いたのは、統一地方選挙における日本維新の会の議席大幅増という実績があるでしょう。奈良県知事選挙で大阪府以外初となる公認知事候補の当選を実現させたことや、馬場代表が掲げていた「統一地方選挙は600議席を目標に」をほぼ達成したことなど、維新に関するポジティブな報道が増えたことも一因となっているとみられます。これまで、立憲民主党はシニア層の支持が多かったことで維新支持者との棲み分けが行われていましたが、現時点では日本維新の会の支持者はすべての年代で立憲民主党の支持者を上回っており、現在の日本維新の会と立憲民主党の差の開きはもはや一時的なものではなく決定的なものになったとみられます。当面の間、政党支持率における野党第一党は日本維新の会がキープするものとみられます。