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アップル決算 日本での値上げは「成功」したのか

山口健太ITジャーナリスト
日本での値上げは成功したのか(筆者撮影)

10月27日(米国時間)、アップルが2022年7-9月期の決算を発表し、9月期としての売上高とEPSの記録を更新しました。日本では7月に値上げが話題になりましたが、これは成功したといえるのでしょうか。

日本での値上げは成功?

アップルの7-9月期(正確には9月24日まで)の売上高は昨年同期比で8.1%増となり、コロナ禍からの急回復を遂げた2021年7-9月期(28.8%増)を上回っています。

さらに、為替の影響を除けば2桁成長だったとのことから、この期間に進んだ「ドル高」に足を引っ張られたことが分かります。

ドル高の影響とは、たとえば1ドル=100円の場合、10万円のiPhoneが売れるとアップルには1000ドルが入ってきます。しかし1ドル=150円になると、同じものが売れてもアップルに入る売上は667ドルに減ることになります。

実際にはここまで単純ではありませんが、以前と同じ1000ドルの収入を確保するには、日本での価格を10万円から15万円に値上げする必要があるわけです。

CFOのルカ・マエストリ氏によれば、アップルは世界の主要な通貨でヘッジを試みているとのこと。しかしこれほどのドル高に対応するには、新製品発売などのタイミングで価格を見直すことになると説明しています。

日本では、7月に多くのハードウェア製品が2割ほど値上げされたことが話題になりました。その結果、7-9月期の日本での売上高は昨年比で「-4.9%」と、4-6月期の「-15.7%」から大幅に改善しています。

この点だけを見れば、日本での値上げは成功だったといえそうです。ただ、アップルが公表している地域区分の中で、日本だけマイナス成長が続いているという点は気になります。

日本だけ売上高はマイナス成長が続いている(アップルの決算資料より、筆者作成)
日本だけ売上高はマイナス成長が続いている(アップルの決算資料より、筆者作成)

理由の1つとしては、アップルが価格を改定した後も急速に円安が進んだことで、日本での価格設定がまだ安すぎることが考えられます。

消費者としてはこのまま割安な価格を維持してもらいたいところではありますが、iPadについては7月の値上げに続く「再値上げ」が実施されました。

ただ、ざっくりした計算ではありますが、日本での売上高から為替の影響を取り除いてみた場合でも、他の地域ほど売上が伸びていない印象を受けます。

その原因ははっきりしませんが、価格が上がったことで買い替えを先送りにした人や、iPhone SEや旧モデルのように安価な製品を選ぶ人が増えているのかもしれません。

10-12月期はどうなる?

アップルはハードウェア製品の値上げを実施しましたが、すべてのメーカーが同じように値上げをしているわけではありません。

同じスマホでも、Android端末は激しい価格競争に晒されており、メーカーからは「iPhoneのように簡単には値上げできない」との声も聞こえています。

そういう意味では、為替の動きに合わせて値上げできること自体が、アップルやiPhoneの強さを象徴しているといえそうです。

次の10-12月期は年末商戦を含む、アップルにとって最も重要な四半期です。今年はこの期間にiPhone 14 Plusや第10世代iPadが発売されることが昨年との違いです。

ドル高や景気後退など、経済情勢の不透明さが増している中で、期待を上回るような好決算を出せるのか注目です。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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