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1ドル150円台 アップル製品の値上げはあるか

山口健太ITジャーナリスト
アップル製品の値上げはあるか(アップル提供画像)

5月2日(米国時間)、アップルが発表した2024年1〜3月期決算では、「円安」による売上の減少や生成AIへの乗り遅れといった課題が浮き彫りになりました。

果たしてアップル製品が日本でさらに値上げされる可能性はあるのか、決算の内容から考えてみます。

円安でドル建ての売上が減少か

アップルの1-3月期決算は、売上が昨年同期から4.3%減少しています。内訳は「サービス」が14.2%増と好調なのに対し、「製品」が9.5%減と足を引っ張ったことがうかがえます。

原因の1つは、昨年1-3月期には在庫不足に陥っていたiPhone 14 Proシリーズの供給が改善したことにあるといいます。その影響を差し引けばプラス成長だったと、CEOのティム・クック氏は決算発表後の電話会議で釈明しています。

注目の中国(決算発表では中華圏)での売上は予想されていたほど悪いものではなかった一方で、日本での売上は12.7%減と、悪化が目立つ結果になりました。

影響として考えられるのはドル円の為替レートです。2023年の1-3月期は130円台前半だったのに対して、今年は140〜150円となっています。アップルは日本円での売上をドルに換算して計上するため、円安は逆風になります。

この影響をざっくり取り除いて計算してみたところ、日本での売上は小幅な減少にとどまり、世界の他の地域と比べて遜色のない数字になりました。

日本でアップル製品は例年並みに売れているものの、価格が為替レートに対して安すぎるために売上が落ち込んでいるのであれば、対策として考えられるのは「値上げ」となります。

直近で注目したいのは日本時間で5月7日23時に予定されている発表イベントです。CFOのルカ・マエストリ氏は、4-6月期にiPadの売上が2桁成長を見込んでいると語っていることから、iPadの新製品が登場することはほぼ確実といえます。

過去の事例を振り返ると、アップルは製品発表の数週間前の為替レートを参考に日本向けの価格を決定しているようです。そうなると、iPadのモデルによって1〜3万円程度の値上げはあっても不思議はないと予想できます。

iPad Airの例。1ドル150円台の為替レートで計算すると、1万円程度高くなる(アップルのWebサイトより)
iPad Airの例。1ドル150円台の為替レートで計算すると、1万円程度高くなる(アップルのWebサイトより)

また新製品だけでなく、既存製品がいきなり値上げされる可能性もあります。2022年7月1日には、発表会などのイベントとは関係なく、多数の製品が一斉に値上げされた事例があります。

値上げを予想して買い物をするというのはなかなか難しいものがありますが、少なくともいま日本で売られているアップル製品の価格が、為替レートに対して割安なまま放置されていることは間違いなさそうです。

アップルは生成AIにどう向き合うか

アップルは過去最大規模の自社株買いを発表したことも相まって、時間外で株価は上昇し、ようやく年初の水準に戻りつつあります。

ただ、主要なテック企業が生成AIの追い風を受けて株価を伸ばしていることを考えると、アップルが最近のトレンドにうまく乗り切れていない感は強まっています。

この点について、CEOのティム・クック氏は生成AIに多額の投資をしていることを強調。詳細は今後数週間で明かしていくと予告していることから、5月7日の発表イベントや6月のWWDCに期待が高まっています。

かなりハードルが上がっている状況ではありますが、生成AI機能の出来次第では、米国でここ数年価格を据え置いてきたiPhoneの値上げにつながる可能性もあることから、大きな注目が集まりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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