【Yahoo!ニュース 個人】10月の月間MVAとMVCが決定

(写真:アフロ)

■Yahoo!ニュース 個人、10月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選6本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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10月のMVA

独占告白!本田圭佑から届いたメッセージ~朝鮮学校訪問の理由、愛国心とは、日本人であることとは~(キム・ミョンウ)

筆者による受賞コメント:批判的な意見が出ることも想像できたであろう本田圭佑選手の朝鮮学校訪問。「なぜ行動に移せたのか」という素朴な疑問をぶつけてみたいと思ったのがきっかけです。彼の行動力の裏側にある強い意志、アイデンティティーがどのようなものなのか、それをいつか引き出してみたいという思いもありました。取材に応じてくれた本田選手への感謝と共に、こうした朝鮮学校訪問が決して珍しくない風景になることを願っています。

キム・ミョンウ

選出理由:日朝問題がある中でもなぜ朝鮮学校を訪れたのか? 本田圭佑選手にその理由や「愛国心」、日本や日本人のあり方までも問いかけ、SNSなどで大きな反響を呼びました。「絶対無理だ」と思いながらも果敢にアタックした著者の行動力、独自の視点や問題意識で実現。プレイヤーにとどまらず「人間・本田圭佑」としての魅力を引き出した貴重な1本でした。

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ダンパー改ざん、不正は許されないが安全への過度な心配は不要、技術への信頼失墜は重大(福和伸夫)

筆者による受賞コメント:MVAに選出頂きありがとうございます。KYBのダンパー不正を通して効率化による社会のゆとりのなさを問題提起させて頂きました。先月は北海道と大阪の地震を通して、隘路の弱さによる孤立化について受賞させて頂きました。2か月続けて選出頂くとは思ってもおらず大変驚いております。毎月のように生じる災害や不祥事、少しでも社会が良い方向に進むことを祈りつつ、書き続けたいと思います。選出頂いた方々に感謝いたします。

福和伸夫

選出理由: KYBのダンパー改ざん問題をめぐり不安が広がる中、免震・減災の専門家として、また自身が関わる建物にも使用されていたという当事者の一人として現状を伝えつつ、ダンパーの役割やその安全性について冷静に解説。問題の根っこにあるもの、不祥事が頻発する背景、災害が続く中で日本の社会はどうあるべきなのか。大切な提言です。

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「ていねいな料理」からの脱却?――今年の料理レシピ本大賞にみる「初心者に寄り添う」潮流をひも解く(阿古真理)

筆者による受賞コメント:この記事は、『昭和の洋食 平成のカフェ飯』(ちくま文庫)に取り組み始めてから、10年近くレシピから時代を読み解く仕事をしてきた成果の一つです。世の中が変わり続けている時代に、メディアを通じて発表されるレシピは時代を写し出します。その傾向が、今年の料理レシピ本大賞にははっきりと表れました。そのことについて書いた記事をMVAに選んでくださり、とてもうれしいです。これまで賞というものに縁がなかったので、うれしさもひとしおです。

阿古真理

選出理由: 今年で5回目となる「料理レシピ本大賞 in Japan」の結果をもとに、今までの「簡単・時短」を超え「自分で料理を作らなかった人たちが参加できる」潮流が生まれつつある家庭料理を丁寧に考察した記事です。食文化の変遷を長年追い続ける筆者による説得力のある筆致は、料理が苦手な読者にも「挑戦してみようか」と思わせる力があります。

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樹木希林さんの生前の言葉が静かな感動を呼ぶ。宝島社の企業広告がフェイクの時代に投げかけたもの(河尻亨一)

筆者による受賞コメント:「あとは、じぶんで考えてよ。」ーー樹木希林さんとクリエイター、そして宝島社の"合作"とも言えるこのメッセージには、多くの人の心に刺さる何かがあったのだと思います。考えてみると、報道や批評の仕事は、読者や視聴者に「じぶんで考える」ための素材やきっかけを提供すること。私も引き続き、広告やデザインなどの表現を通じて「いまという時代が何なのか?」を、じぶんなりに考えていきたいと。そんな勇気ももらえる、いまどき珍しく"ジャーナリスティック"な企業広告でした。

河尻亨一

選出理由: 9月に亡くなった樹木希林さんを“起用”し話題となった宝島社の企業広告を分析した記事。制作者に話を聞き、同社の20年にわたる広告の歴史もたどりながら、この広告が感動を呼んだ理由を立体的に考察しています。長く「広告表現」をウォッチしている筆者だからこそ書ける1本です。

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沖縄知事選 ファクトチェックして分かったこと(上) 政治家らも偽情報拡散(楊井人文)

沖縄知事選 ファクトチェックして分かったこと(下) 一部の誤解を払拭するには(楊井人文)

筆者による受賞コメント:月間MVA賞に選んでいただき、ありがとうございます。FIJが発足して1年余り、ようやく「ファクトチェック」という言葉が人口に膾炙するようになってきたと感じています。とはいえ、ファクトチェックはまだ始まったばかりで、発展途上です。ファクトチェックが特定の立場を攻撃するために行われているとの批判もあるようですが、FIJのサイトで紹介しているファクトチェック一覧を見ていただければ、そうではないことがわかるはずです。もちろん、人々の分断を助長する誤情報/偽情報を検出することを目的としたファクトチェックが、その営み自身によって新たな分断を生み助長することのないようにするにはどうすればよいか、という難題と向き合う必要があることは承知しています。それを克服するための一つの方法は、右も左も関係なく、多種多様な主体がファクトチェックの実践に参画することではないかと思っています。意見や立場の相違を超えて「ファクトチェック文化」を広めるためにどうすればよいか、今後も模索しながら実践を積み重ねていきたいと思います。

楊井人文

選出理由:沖縄県知事選挙に際し、筆者が事務局長をつとめる団体で行ったファクトチェックに基づき、報道内容だけではなく公人や著名人・討論会での候補の発言まで具体的な検証内容をわかりやすく紹介。またファクトチェックについて『究極的には「事実を尊重する社会」を目指し、民主主義の基盤を強化すること』とその役割・意義も伝えました。氾濫する情報にどう向き合うべきか、深く考えさせられます。

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『チコちゃんに叱られる!』に見られるNHKらしくなさ。ではNHKらしさとは何なのか責任者に聞いてみた(木俣冬)

筆者による受賞コメント:『チコちゃんに叱られる!』をはじめて見たとき、なつかしさと新しさを感じ、その理由が知りたかったのが、インタビューをするきっかけでした。なつかしさは、昭和の子供番組『カリキュラマシーン』のテーマ曲を使用していることで、新しさは、NHKが今までのイメージを変えようとしていることだとわかりました。今、高齢者ばかりがテレビを見ると言われ、若者がテレビを見るような工夫が考えられている中で、高齢者だって不要ではなく、みんなが見られるものが必要で、「チコちゃん」の新しさとなつかしさの融合は素敵な発明と感じます。取材の視点としては、公共放送NHKにおける「公共」の意味を今後も見つめていきたいです。月間MVA選出、ありがとうございました。

木俣冬

選出理由:5歳の女の子の決め台詞「ボーっと生きてんじゃねえよ!」が今年の流行語大賞にもノミネートされたクイズバラエティー『チコちゃんに叱られる!』。その人気の理由を“NHKらしくなさ”に着目して掘り下げた、読み応えあるインタビューです。豊富な知見と鋭い観察眼をもとに巧みに話を引き出し、作り手の細部にわたる創意工夫を伝えています。

10月のMVC

『大阪府警「死の連行」パトカーに押し込まれた泥酔男が死亡』の記事へのオーサーコメント(石蔵文信)

筆者による受賞コメント:今回の受賞は読者の反応があまりなかったので、正直驚いています。ストレスと心臓の関係は私の研究テーマの一つで、論文も多数書いています。今回の例はわかりませんが、交感神経の異常な興奮が致死的不整脈などを誘発し、突然死する可能性があることは専門家の間ではよく知られています。拘束に伴う突然死は後を絶ちません。降圧剤のβ遮断剤が予防に効果的と私は考えていますが、その場では服用できないでしょう。難しいでしょうが、拘束された時に、あまり興奮せずに冷静に対応することが必要で、警察もそのような知識をもって対処していただきたいと思います。この詳細については後日コラムに書かせていただく予定です。

石蔵文信

選出理由:警官の行為に問題はなかったか疑念を示す記事を受け、医師として「無茶な行為がなくても突然死を起こす可能性」に着目。拘束されるという異常時の強いストレスが体に及ぼす影響を解説し、こうした不幸を繰り返さないために何が必要か、記事とは別の角度から課題を提示しています。