お笑い芸人たむらけんじ氏を揶揄したラーメン店が大炎上。飲食店が持つべき4つの意識とは?

(ペイレスイメージズ/アフロ)

ラーメン店のツイートが大炎上

ここ最近、世間を賑わしている飲食店の話題があります。

様々なテレビ番組でも取り上げられ、キャスターの安藤優子氏やお笑いタレントの松本人志氏なども意見を述べています。

2019年1月下旬に、お笑い芸人で飲食店も経営するたむらけんじ氏が大阪市内のラーメン店に訪れて食事をとり、スタッフから希望されたサインや記念撮影に快諾しました。

ラーメン店はTwitterで画像と共に「先程『たむけん』さんが来店されました!」と投稿し、さらには「マイク、カメラなかったらおもろ無い奴でした」とツイートしたのです。

それに対して、批判的なリプライが寄せられて大炎上しているところに、たむら氏は「ちょっとびっくりなんやけど」と驚きはしたものの「ネットの皆様へ もう、やめましょう。僕に対するお言葉はこの後もありがたく頂戴しますが、向こうへのお言葉はもうやめましょう」と感情的にならず、落ち着いた態度で沈静化に努めました。

ラーメン店の店長であり、社長でもある人物が2月6日に「ツイッターを含め各種SNSの更新は全て私が行っており、社長の私に全て責任がございます」と責任の所在を明らかにし、「この度は、私の軽率な言動ならび行動によりたむらけんじさんに不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます」と謝罪しましたが、炎上が収まる様子はありません。

「ネットやったら何言うても許される的に陥ったのも間違いで。たむらさんに対しても芸能人であるっていう思いから勝手に自分で…期待したのが間違いです」と発言したことも、炎上に油を注いでいるようです。

考察するべきポイント

私はこれまでにも客と飲食店のトラブルに関する記事を書いてきました。一部を列挙すると以下のようになります。

今回も飲食店と客のトラブルなので、いくつか考察しておきたいことがあります。この事件では、次の点がポイントになると考えています。

  • 客はいちおう神様
  • 客に喜んでもらいたい
  • 客はプライベートで訪れている
  • 客が給料を払っている

サービス業であるにも関わらず、上記をよく理解していない飲食店がこのようなトラブルを起こしがちです。それぞれについて説明していきましょう。

客はいちおう神様

「お客様は神様」は三波春夫氏の名言ですが、モンスター客が増えてきていることもあって「客は神様ではない」が定着している感があります。

客だから偉いと思っている人は、飲食店のスタッフのことを見下すような態度をとったり、無理難題やワガママを要求したり、些細なことをあげつらってきたり、私もよく問題として記事に取り上げているノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)を悪びれもせずに行ってしまいがちです。

そういった客の中には、飲食店による空間やサービスのコストも考えず、注文しないでも平気で店内に居座る人まで現れてしまっています。子連れの是非や食べ残しについてなど、様々な問題についても取り上げました。

客が飲食店に敬意を払わず、ぞんざいな態度でいれば、スタッフも心のある人間なので、素晴らしいサービスを提供するのが難しくなるなるかもしれません。そうなれば、客にとっても喜ばしいことではなくなるので、客が「お客様は神様」であると考えて振る舞うことは好ましくないでしょう。

しかし、スタッフが「お客様は神様」ではないと全く考えないのは少し違うと考えています。

飲食店のスタッフは客に料理やサービスを提供する立場にあるだけに、「お客様は神様」とまではいかないまでも、「お客様はいちおう神様」くらいには思わないと、パフォーマンスを発揮するのは難しいのではないでしょうか。

なぜならば、見下したり、甘くみたりしている相手に対して、よりおいしい料理を作ったり、より快適により楽しく過ごせるように腐心したりすることはできないからです。

つい昨日<木村拓哉氏の大ヒット映画「マスカレード・ホテル」は、あの美食ホテルが舞台?>でも取り上げた「マスカレード・ホテル」では、主人公のホテリエが「お客様は常に正しい」という信条を述べています。ホテルを取材していると、ゲストに対して常にベストを尽くすといったホテリエが多いことは確かです。

現実的には「お客様は神様」「お客様は常に正しい」と考えるのはいきすぎかもしれませんが、飲食店が起こす炎上事件をみていると、カジュアルなラーメン店であっても「お客様はいちおう神様」と考えた方がよいと思ってしまいます。

客に喜んでもらいたい

飲食店やホテルでホスピタリティを発揮しているスタッフには共通点があります。それは、客に喜んでもらいたいという気持ちを有していることです。

客に喜んでもらうことが自分の喜びであるからこそ、できるだけ希望に叶うサービスを行ったり、相手の期待を上回るアイデアを考えて実行したりできるのでしょう。そうでなければ、週休1日で長時間労働、休憩時間が少なくて立ちっぱなしの飲食店は肉体的に辛いだけです。

そして、客に喜んでもらうこととは、つまり、客に喜びを与えることであり、客から喜びを与えられること、もしくは、それを求めることではありません。

しかし、この件では、ラーメン店の社長はたむら氏に面白いことをいってもらうことを期待しています。つまり、客に喜びを与えるのではなく、客から喜びを与えてもらうことを期待しているのです。

しかも、面白いことをいってもらえなかったと揶揄しているのは、客に喜んでもらいたい気持ちがないだけではなく、客から喜ばせられなかったことに対して文句を述べていることになります。こういった態度は明らかに筋違いではないでしょうか。

客に喜びを与えることには関心がなく、客から喜びを与えてもらうことを期待しているようでは、飲食店に向いていないように思えてしまいます。

客はプライベートで訪れている

テレビの撮影、雑誌やインターネット記事の取材など、仕事が関わっていないのであれば、訪れたのが芸能人や著名人であったとしても、それはその人にとってプライベートな時間かつ空間です。

訪れた人は、ただ空腹を満たすために食べているのかもしれませんし、同行者と楽しい時を過ごすために来ているのかもしれませんし、休息も兼ねて食事しているのかもしれません。

どのような目的であるにせよ、訪れた人は仕事と切り離されるべきです。なぜならば、仕事と切り離されていないのであれば、何かしらの報酬も発生されるべきだからです。

たむら氏は芸能人としてではなく、一人の客としてラーメン店を訪れたにも関わらず、ラーメン店はサインや記念撮影をお願いしました。それを快諾してもらい、撮影した写真を公開してラーメン店の宣伝にも利用できただけでも、本来は十分に満足するべきところです。

しかし、それでも満足せず、プライベートで訪れたたむら氏に、本業であるお笑いを求めたことに、大きな問題があると考えています。

今回ツイートしたラーメン店社長が「芸能人であるっていう思いから」と述べていることを鑑みれば、訪れた客にプライベートがあることを全く想像できなかったといえるでしょう。

客がプライベートな時間を過ごしていると理解していない飲食店では、誰が誰と訪れたとか、何を注文したとか、どのような話をしていたとか、こういった個人情報が安易にリークされてしまいます。

飲食店に訪れた客は、仕事と切り離されたひとりの人間であると認識することは非常に重要なことです。

客がお金を支払っている

飲食店で働くスタッフの給料は、売上の中から支払われています。予約台帳を利用していたり、クレジットカードを利用していたりすれば、直接とならない時もありますが、飲食店の売上が基本的に客から支払われていることには変わりないでしょう。

飲食店のスタッフは、客に喜んでもらいたいという資質がなければ、モチベーションを保つのが難しく、よいサービスを提供するのが難しいと述べました。

しかし、最低でも、目の前にいる客が、自分自身の給料の原資となっていることが理解できていれば、客をぞんざいに扱うことはないのではないでしょうか。

ラーメン店社長というラーメン店のトップが、お金を支払っている客をこきおろすような態度をとっていれば、その下で働くスタッフも同じような感覚を持っていると思われても仕方ありません。なぜならば、社員教育は社長の哲学が基本となっているからです。

お金を払えば何でも偉いということはありません。

しかし、数ある飲食店の中から選んで訪れ、お金を支払ってくれた客に対して、気遣いができないばかりか、揶揄してしまう感覚は理解に苦しみます。

客をそのように扱う飲食店は、消費者を相手とするBtoCビジネスはもちろん、企業間のBtoBビジネスを展開していくことも難しいのではないでしょうか。

飲食店に必要な心持ち

飲食店が客に対して認識しておくべき点を通して、今回の事件を考察してきました。

「お客様は神様」ではありませんが、それは決して飲食店が客をぞんざいに扱ってもよいことにはなりません。客が「客は飲食店よりも偉い」と考えることに同意はしませんが、飲食店が「飲食店と客は対等だ」と声高に叫ぶことにも、私は少し違和感があります。

飲食店は「客はプライベートで訪れている」と配慮しながら「客に喜んでもらいたい」としてサービスに励み、「客がお金を支払っている」と感謝の念を持ちつつ、この店を成り立たせてくれている「客はいちおう神様」であると考えなければ、ただでさえ競争の激しい日本の飲食業界で、生き残っていくことは難しいのではないでしょうか。