飲食店だけではなく、家メシのドタキャンも許されない理由
飲食店のノーショー(無断キャンセル)やドタキャン
私はノーショー(無断キャンセル)やドタキャンについて、多くの記事を書いてきました。飲食店がいかにノーショーやドタキャンに困らされているかについて、正しく知ってもらう必要があると考えているからです。
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ノーショーやドタキャンが多くなると、飲食店は廃業してしまうか、その損害分を他の客に転嫁して利益を確保していかなければなりません。
それでは、飲食店も客も不幸になるばかりです。
家メシのドタキャン
では、食事に対するノーショーやドタキャンでも、飲食店ではなく、自宅で食べる家メシ(内食)の場合はどうでしょうか。
少し前になりますが、<家メシのキャンセル、いつまでならOK?>という記事を読んで、改めて考えさせられました。
家メシをドタキャンする場合には、どれくらい前なら許せるかという質問から話が展開されています。
キャンセルは当日でも構わないという寛容な回答から、一週間前にはキャンセルしておかなければならないという厳しい回答まであり、色々な意見が散見されます。
考えておくべき点
一見すると単なる家庭内の問題なので、それほど大きな問題はないように思えます。しかし家メシにおけるノーショーやドタキャンでも、もちろん問題はあるのです。
- 食品ロスの発生
- 作り手への配慮
- 共食の重要性
飲食店との違いも鑑みたりしながら、上記の点について考えてみましょう。
食品ロス
飲食店のノーショーやドタキャンで、真っ先に挙げられる問題は食品ロスです。予約していたはずの料理が無駄になってしまうので、問題となるのは当然のことでしょう。
ウォークインの客に提供することができればまだよいですが、いつもうまいこと他の客が訪れてくれるわけではありません。ましてや、予約時間直前のドタキャンや、連絡すらしないノーショーであれば、なおさら難しいでしょう。SNSや公式サイトで呼びかけるなど、他の客を入れるための準備が不足するので、新たな来客を創出することは容易ではありません。
では、家メシの場合は、どうなのでしょうか。料理を作る前にキャンセルされたのであれば、作らずにすみ、食材も他に使えるので、被害はほとんどなくなります。
しかし、既に作ってしまった後であれば、そうはいきません。ご近所付き合いも少ない昨今では、新たな食べ手を探すことは飲食店よりもずっと難しいです。ただ、飲食店と異なるのは、そこまでクオリティを求めなくても構わないので、料理を冷蔵したり、冷凍したりし、保存しておけることです。
作ったにもかかわらず食べられなかった料理を保存しておくことができるので、飲食店に比べれば、家メシは食品ロスを発生させないのかもしれません。
作り手への配慮
料理を作る時には、食べてもらう人のことを考えて作るものです。飲食店では、初めて来店する会ったことのない客に対してでさえ、相手のことを考えて、おいしく食べてもらえるように、楽しんでもらえるようにと、心を尽くすものです。飲食店の経営は商売であり、客に満足してもらわなければならないので、当然といえば当然のことでしょう。
ただ、飲食店では客の好みに合わせて作ることに限界があります。たとえ事前に希望を聞いていたとしても、客の好みにうまく合致し、完全に満足してもらうことは難しいでしょう。それに加えて、特定の客だけの要望を叶えることは、余計にコストがかかったり、オペレーションの効率が落ちたりするので、経営的な観点からすればあまり行いたくないのです。
家メシの場合は、飲食店と違って直接な金銭のやり取りは発生しませんが、飲食店以上に相手のことを考えて調理に励んでいるのではないでしょうか。仕事で疲れて帰ってくる相手のことを労り、愛情を込めて作っているのではないかと思います。
相手の体調や好みをよく知っているので、相手が今こういったものが食べたいのではないかと考えを巡らせることができるでしょう。そこから献立を組み立て、食材を買いに行き、帰宅する時間を見計らって提供できるように調理しているはずです。
もしも相手が食べないのであれば、今夜は何がよいだろうかと考え、献立に頭を悩ませたりすることもないかもしれません。購入する食材や作る料理は、全く違っていた可能性もあります。
1人分の食材を購入し、自分の好きな料理ばかりを選んでいたかもしれませんし、子供がいるのであれば子供が好きがメニューを作っていたかもしれません。もしくは、今日はもう疲れたので、食材を買って調理するのではなく、全て冷凍食品にしていた可能性もあります。
家メシでは、相手が食べるかどうかで、献立が変わったり、買う食材が異なったりするのです。こういった作り手の背景を想像したり、配慮したりできれば、ドタキャンは極力するべきではないでしょう。もしもドタキャンするにしても、伝え方や態度が違ってくるはずです。
共食の重要性
一緒に食事をともにする共食は、以下の通り、人間関係の構築に重要です。
農林水産省の公式サイトには、次のように、孤食や個食の問題が指摘されており、共食の必要性が説かれています。
大阪市では7つの「こしょく」を問題として挙げており、共食はこれらを解決するための鍵であるとしています。
家族は社会における最小単位のコミュニティであり、社会の基本です。食事を共にすることによって、家族内でコミュニケショーンがとられ、家族間の絆も深められるので、共食はとても大切なのです。
従って、社会を構築する共食が突然かつ不意に妨げられるという観点からすれば、家メシのドタキャンは飲食店のドタキャンよりも、悪い影響を与えているのではないでしょうか。
子供がいないのであれば、孤食を強いられることになりますし、子供がいるのであれば、家事と育児のワンオペは余裕がないので時間がとれず、子食となる可能性も高くなります。
食べないことがある程度の余裕をもって事前に分かっていれば、親類や友人に声を掛けたり、メニューを簡易化したりするなどし、孤食や子食にならないように対処できたかもしれません。
ドタキャンやノーショーは、飲食店の経営に損害を与えますが、家族の信頼関係を壊したり、子供の食育を妨げたりもするのです。
家メシのノーショーやドタキャンは認識が低い
これまで書いてきた記事では、飲食店のノーショーやドタキャンは、飲食店に損害を与えることであると指摘してきましたが、ようやく、だいぶ認識されるようになってきたと思います。
しかし、家メシのノーショーやドタキャンはあまり取り上げられることがありません。観点は異なりますが、家メシのノーショーやドタキャンも、飲食店のノーショーやドタキャンと同様に問題があることを是非知っていただきたいです。