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子連れ客に苦言を呈した「銀座ウエスト」に提案したい3つの施策

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

銀座ウエスト

<銀座ウエストのツイートが話題 「子連れで銀座」への賛否>で紹介されているように、1947年に創業し、贈答品「ドライケーキ」で有名な「銀座ウエスト」がTwitterに投稿した内容が話題となっています。

「銀座ウエスト」の店舗は当初はレストランとして営業していましたが、1950年代から喫茶店に業態を転換し、そのクラシカルでゆったりとした空間にファンが多いです。私も特に乃木坂にある「銀座ウエスト 青山ガーデン」の雰囲気や限定メニューが好きで、時折訪れています。

Twitterへの投稿内容

「銀座ウエスト」がTwitterに投稿した内容は以下の通りです。

小さなお子様をお連れの喫茶室ご利用のお客様へのお願い:炎上覚悟で申し上げます。大きなお声を出したり、走り回るなどのお子様の行為が周囲のお客様へ多大なご迷惑となっている場合がございますので、くれぐれもご注意の程何卒お願い申し上げます。

出典:銀座ウエストの投稿

大きな声を出したり、走り回ったりする子供が他の客に迷惑を掛けているので、注意するようにと親へ喚起しています。この当然とも思える内容が「炎上覚悟で申し上げます」と述べられていることが話題となっているのです。

昔銀座は特別な場所でした。銀座へ行く時のために、親が銀座ワシントンの靴とヤングエージの服をわざわざ買ってくれたのを思い出します。今銀座も特別な場所ではなくなってしまいましたが、ウエストはそういう場所になりたいと思っています。

出典:銀座ウエストの投稿

昔の銀座を回顧し、ウエストが目指すところも述べています。多くの人は賛同していますが、一部の人は敷居が高いと思う人もいるようです。

昨日のツイートに対し多くの肯定的なご意見を頂きありがとうございます。年齢制限してはとのご意見もございましたが、就学前とおぼしきお子様がアイスクリームの器を前にきちんと足を揃え、少し緊張してお座りになっているのは微笑ましいものです。こんな素敵なお客様を締め出す事は出来ません。

出典:銀座ウエストの投稿

最後は、一連のTweetは子供を拒否するものではなかったと述べ、子供の来店については歓迎しているような姿勢を示しています。

飲食店の子連れ問題

子連れ客に関して、私はこれまで以下のような記事を書いてきました。

飲食店における子連れ問題について、正解はありません。時代によって、親の働き方やライフスタイルも異なりますし、社会における子供のあり方や扱われ方も異なっているからです。

それだけに、飲食店の子連れ問題について、色々と考察を述べてきました。

対応策

世界の中でも、最も飲食店が多い都市とされている東京で、飲食店が営業していくためには、しっかりと個性を発揮していかなければなりません。他の記事でも述べてきたように、そういった状況で、「子連れOK」であるのに「大人の空間」という矛盾する価値を保つのは非常に難しいことです。

客のマナーを向上させることは確かに重要なことですが、ただ単に訴えるだけでは、効果的な解決にはつながらず、「子連れOK」「大人の空間」が並び立つようには思えません。

この2つの要素を実現するには、飲食店による努力も必要であると考えます。具体的には以下のような施策を取るべきではないでしょうか。

  • 年齢制限
  • 日時の制限
  • テーブル制限

もちろん、ここで述べた施策を行えば完璧というわけではありません。しかし、行わないことに比べればはるかによいと考えています。

それぞれについて説明していきましょう。

年齢制限

もしも本気で「大人の空間」を保ちたいのであれば、最低限でも子供の年齢は制限される必要があると考えています。

求める「大人の空間」にもよりますが、最低でも小学生以上を入店対象にするべきではないでしょうか。

未就学児であれば、特別に行儀がよかったり、おとなしかったりする子供は別として、多くの子供は30分以上の喫茶タイムを静かに自分の席で過ごすことが難しいからです。

小学生であれば、学校で1コマ45分の授業を毎日こなしているはずなので、自分がやりたくない、つまらないことであっても、立ち歩いたり大声を上げたりせず、ある程度は我慢して過ごせるでしょう。

飲食店が求める「大人の空間」に食事マナーも必要なようであれば、小学生ではまだ難しいので、それなりのフランス料理店のように中学生以上にしたり、グランメゾンのように高校生以上にしたりする必要があります。

乳児も幼児も入店するのであれば、「大人の空間」を保つことはてるだいぶ難しくなるので、年齢制限は必要ではないでしょうか。

日時の制限

日時の制限を設ける施策もあります。

ミシュランガイドで星を獲得し、普段は中学生以上を対象としているフランス料理店であっても、月に1回ファミリーデーを設けて年齢制限を撤廃することがあります。

これと同じように、例えば月に1日だけ、もしくは平日のアイドルタイムにだけ、子連れを歓迎して受け入れるのはどうでしょうか。もしくは、夜は大人の時間として、夕方以降は子供を不可とするのでも構いません。

時間を分ければ、飲食店のポリシーを理解し易くなるので、客にとってもよいです。

飲食店が公に「子連れOK」と宣言している時間帯であれば、子供が我慢ならない客は積極的に訪れないでしょう。

「子連れOK」の時間帯に訪れている客であれば、子供に寛容な可能性は高いので、トラブルに発展することも少なくなります。

テーブル制限

子連れ客には、テーブルを制限する施策もあります。

年齢制限が厳しい 高級なフランス料理店であっても、個室であれば年齢を制限していないところがほとんどです。

「銀座ウエスト」は喫茶店であり、個室は有してないので、全く同じことはできません。しかし、なるべく他の客から目立たない奥のテーブルやサービススタッフの出入りの少ないテーブルなどを「子供OK」のテーブルに設定し、そのテーブルにだけ子連れ客を入れるのがよいでしょう。

子連れエリアには、怪我につながったり壊れ易かったりする物を置かなければ、なおよいです。子供用のテーブルウェアがすぐに準備され、近くにはオモチャや絵本が用意されていれば満点でしょう。

「銀座ウエスト」に関していえば、面積の広い「青山ガーデン」であればもちろん、「銀座本店」や「ベイカフェ ヨコハマ」でも奥の一画に子供エリアを設けることは可能であると考えています。

ポリシーやルールを定める

お客様は神様ではありませんが、飲食店は客を甘くみてはいけません。また、客が飲食店を選ぶ権利があるように、飲食店も客を選ぶ権利はあるのです。

飲食店は好みの客に訪れてもらうように、ポリシーやルールを定めることができます。今回Tweetした方は「銀座ウエスト」の社長であったので、まさに「銀座ウエスト」のビジョンや方向性を示し、規則を策定する立場にあるでしょう。

「銀座ウエスト」のポリシーが決まっているのであれば、ルールをしっかりと考えて明文化し、公式サイトや店舗に掲示することが、「銀座ウエスト」を利用するかどうかも分からない不特定多数のインターネットユーザーに対して発信するよりも、よほど意義があるのではないでしょうか。

「子連れOK」「大人の空間」という矛盾を孕んだ要素の共存を客に委ねていては、うまくいかないのではないかと危惧しています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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