2021年12月31日、韓国で、国会議員と地方議員に立候補できる被選挙権年齢を、満25歳から満18歳に引き下げる公職選挙法改正案が可決された。

これによって、欧米と同様に、高校生でも議員になることが可能になる。

韓国メディアによると、2022年1月の国務会議(閣議)での議決を経て、公布後直ちに施行され、大統領選と同時に投開票される国会議員の補欠・再選挙から適用される予定だという。

韓国では、昨年(2021年)中央選挙管理委員会が政党に加入できる年齢を現在の18歳から16歳に引き下げるべきという提案を出したり、若者の意見を金融政策に反映させるために、金融委員会政策諮問機構である金融発展審議会で「若者分科会議」を開催するなど、若者の声を政治に反映させる動きが活発になっていたが、2021年11月6日に保守系の最大野党「国民の力」の李俊錫(イジュンソク)代表(36)が引き下げを目指す考えを表明してから、素早い決着となった。

日本は25歳・30歳のまま

また新しい連立政権が誕生したドイツでは、「連立協定書」の中に、選挙権年齢の18歳から16歳への引き下げも入っており、今後さらに若者への権限付与は世界的に進むと思われる。

一方、日本では2016年の参議院選挙以来、各党の公約に被選挙権年齢の引き下げが含まれているが、実現の目処は立っていない。

今、日本ではどのような現在地にあるのか?

筆者が代表理事を務める日本若者協議会では、2015年の団体発足以来、被選挙権年齢の引き下げを主要政党に提言し、一緒に議論も進めてきたことから、これまでの議論・動きをまとめて紹介したい。

若者の声を取り入れる形で公約に「被選挙権年齢引き下げ」

まず主要政党の公約に「被選挙権年齢引き下げ」が入り始めたのは2016年の参議院選挙。

日本若者協議会では、2015年から「日本版ユース・パーラメント」を開催し、その中で被選挙権年齢引き下げを提言。

各党と3回ずつ議論した結果、各党の公約に「被選挙権年齢引き下げ」が入り、議論が加速。

これまで日本若者協議会が2015年12月に実施した「日本版ユース・パーラメント(自民党編)」以来、自民党青年局と政策協議を続けて来た政策のうち、(1)「被選挙権年齢引き下げ」の速やかな検討、(2)「国政選挙における供託金の早急な引下げ」、(3)「選挙におけるインターネットの更なる活用等」などが、3月12日の全国青年部長・青年局長合同会議で正式に決定された自民党青年局の政策提言に反映され、牧原秀樹自民党青年局長から谷垣禎一幹事長・稲田朋美政調会長に直接手渡しで、今後項目内容を自民党の参院選の公約化へ検討いただくよう要請されました。(その後自民党の公約に掲載)

これまで日本若者協議会が2015年7月に実施した「日本版ユース・パーラメント(公明党編)」以来、公明党青年委員会と政策協議を続けて来た政策のうち、(1)「若者政策担当大臣」「若者政策担当部局」の設置、(2)「被選挙権年齢引き下げ」、(3)「審議会への若者登用」を検討、(4)「若者議会の推進」などが、公明党の重点政策の骨子(案)に反映されたとメディアで報じられました。

その後、2016年11月には、民進党、自由党、社民党の野党3党が、被選挙権年齢を一律に5歳引き下げる公職選挙法と地方自治法の改正案を国会に提出している。

2017年に「引き下げ」自体は確認

2017年には日本若者協議会主催で与野党の政策責任者(部会長)を呼んで、シンポジウムなどを開催し、若者の立場から議論を喚起。

日本若者協議会主催「被選挙権年齢・供託金引き下げシンポジウム」(2017年3月7日)
日本若者協議会主催「被選挙権年齢・供託金引き下げシンポジウム」(2017年3月7日)

2017年6月13日には、自民党選挙制度調査会に、筆者が講師として呼ばれ、被選挙権年齢引き下げに関して講演(同年に民進党総務部門会議でも講演している)。

日本若者協議会
日本若者協議会

その時点で、被選挙権年齢の「引き下げ」自体は自民党内でも確認を取れていたと言うが、何歳まで引き下げるか、衆院と参院で年齢を分けたままにするかなどについて、意見がまとまらず議論は停滞。

2018年超党派で「一律18歳への引き下げ」を提言

2018年5月には、日本若者協議会が事務局を務める形で、超党派の「若者政策推進議員連盟」が発足。

まず被選挙権年齢と供託金引き下げについて議論を重ね、紆余曲折ありながらも、最終的には、若者団体で要望した「一律18歳への引き下げ」でまとまり、各党の政調会長に提言。

当時の議論内容は下記記事にまとまっている。

被選挙権年齢、供託金はどこまで下げるべきか?【若者政策推進議連第一回総会】

大学生でも政治家に-若者から被選挙権18歳、供託金10万円を提言【若者政策推進議連第二回総会】

被選挙権は18歳or20歳、どちらにすべきか?【若者政策推進議連第三回総会】

「被選挙権と少年法を一致させる必要性はない」、「選挙公営の見直しも」【若者政策推進議連第四回総会】

日本若者協議会
日本若者協議会

関連記事:徐々に広がりつつある「投票」以外の若者の政治参加。政策提言で社会を変える方法(室橋祐貴)

ただその後、具体的な議論は進まず、2019年には若者政策推進議員連盟で全国の高校・大学を回る全国キャンペーンを行ったが、当事者の高校生や大学生からやや反対の意見もそれなりにあったことから(ざっと3〜4割程度が反対。選挙権年齢18歳への引き下げは2015年世論調査だと20~30歳代では賛成が51%、反対が36%(出典:日本経済新聞))、議連内でも時期尚早のムードが強まる。

反対の意見としては、「未熟」(年齢の割に権限が大きすぎる、ほか学業が疎かになるなど)が大半だが、先進国の最多数が被選挙権年齢を18歳にしており、あまり明確な根拠、合理的な意見はない(逆に言うと、韓国のように、引き下げの動きが加速すれば、一気に決まる可能性が高い)。

2021年衆院選では?

その後は、新型コロナウイルスが広がったこともあり、大きな進展は見られないが、2021年衆院選では、国民民主党が新たに被選挙権年齢の18歳への引き下げを公約に掲載。

一方、自民党は衆院選の直前に総裁が入れ替わったこともあり、政治参加については公約にほぼ載っていない。

日本若者協議会

○政治参加年齢の引き下げ(被選挙権年齢18歳、審議会等、高校生の政治活動、党員資格)

○学校内民主主義の実現

○若者議会・若者協議会の設置(国・地域)

○若者政策担当大臣、子ども・若者省の設置

○投票環境の整備(ネット投票、駅前やコンビニ等)

○「若者の政治参加促進基本法」の制定

自民党(アンケートで回答)

●若者に政治を身近に感じてもらうため、漫画入りパンフレットの制作などの広報活動にさらに注力していく。

●若者が主体的に政治に参加する場を作るため、現在30都道府県連に設置されている学生部組織の拡大と活動の活発化を図っていく。

●18歳選挙権をテーマにした「全国一斉街頭行動」などの若者の政治参加を促進する諸活動をさらに活発に行っていく。

●議員事務所での秘書業務や政策勉強会を始めとしたインターンシップについて、更に充実を図り、若者に対して学びと交流の場を提供していく。

●党の都道府県支部にて開催している政治塾においても、受講料を優遇するなどの措置を講じることで、若者が参加しやすい環境を整えていく。

公明党

●「若者担当大臣」を設置し、政府・地方自治体の審議会に「若者枠」を設け、「若者議会」の開催を推進

被選挙権年齢の引き下げをめざす

●児童生徒、保護者、教職員が話し合って校則・学校行事等を決める「学校内民主主義」の実現

●インターネット投票の実現に向けた研究・検討

●「若者政治参加促進基本法」を制定

立憲民主党

各種選挙の被選挙権年齢を5歳引き下げるなど、若者の政治への参加の機会を増大させる

●インターネット投票の導入について検討を進める

●一般有権者もメールによる選挙運動を行えるようにすることを目指す

●主権者教育や「模擬選挙」等の実施を高校だけでなく小・中学校から積極的に行うことを推進する

●高校生の政治活動・選挙活動については、主権者・有権者にふさわしい対応とし、不要な制限とならないようにする

国民民主党

各級選挙に立候補できる年齢について、衆議院議員、市区町村長、地方議員は18歳、参議院議員、知事は25歳とするとともに、英国の若者議会の制度も参考にしつつ、若者が政治参画しやすい仕組みをつくります。

●オンラインでの投票を可能にします。

日本共産党

被選挙権の年齢をすみやかに引き下げます

●選挙に気軽に多面的に参加できるように、選挙運動の自由を広げます

●高校生の政治活動禁止・制限をやめ、主権者としての自覚と成長を支えます

●人権侵害の理不尽な校則の見直しを、高校生の参加ですすめます。

日本維新の会

●衆参両院の被選挙権年齢を18歳に引き下げ。供託金の金額を年齢に応じて見直す。

●インターネット投票の実現を目指すとともに、マイナンバーカードを活用したコンビニ投票を導入。

●主権者教育(シティズンシップ教育)を充実・強化する。

●子どもに投票権を与えて親がその投票を代行する「ドメイン投票方式」等の導入を検討する。

●ネット選挙運動の規制緩和・討論会の充実により、名前連呼の選挙から政策を語る選挙への転換を図る。

被選挙権年齢引き下げで、若者の意見反映、真の「主権者教育」を

被選挙権年齢を引き下げるメリットは、もちろん、若者の声が反映しやすくなることだ。

以前、「直接参画」と「間接参画」で、政治参加の形を区分けしたが、影響力が大きく、政策変更を実現しやすいのは「直接参画」である。

その代表例が、議員になること、つまり選挙に出馬することだが、現状の日本はその権限さえ若者に与えられていない。

「間接参画」と「直接参画」の違いについて筆者作成
「間接参画」と「直接参画」の違いについて筆者作成

関連記事:コロナショックで進む「若者の政治参加」。今後意識したい「参画」のあり方(室橋祐貴)

また、同世代が出馬したり、政治家をやることで、政治をより身近に感じやすくなり、若者世代の政治参加が進む可能性も高い。

そうした直接的なメリットに加え、主権者教育に与える影響も大きいと考えられる。

現状の日本の主権者教育は、選挙権のみが18歳になっていることから、どう若者に投票に行ってもらうかという、「選挙教育」「有権者教育」になっており、直接参画にあたる政治家の具体的な仕事内容(法案策定や意見調整など)や、出馬する方法、選挙活動などについて教えられる、実際に体験する機会はほとんどない。

しかし、仮に被選挙権年齢が18歳に引き下がれば、高校生でも出馬できることから、「選挙教育」「有権者教育」ではなく、本当の意味での「主権者教育」に変わるのではないかと期待できる。

近年若者の政治参加が進み、政策決定にかかわる機会も増えているが、いまだ国会、地方議会の中に若者を送り込むハードルは非常に高い。

今後さらに、若者の意見が政治に反映されるように、今年こそ、日本でも被選挙権年齢引き下げの議論が進むことを期待したい。