被選挙権年齢、供託金はどこまで下げるべきか?【若者政策推進議連第一回総会】
2018年5月24日、若者政策推進議員連盟(会長:自民党・牧原秀樹衆議院議員、通称若者議連)の設立総会が開かれ、正式に発足した。40代以下の国会議員を中心に、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、日本維新の会の6党の議員約35名で構成される。
また若者議連では若者と一緒に議論を進めるため、議連の勉強会等に参加できる登録団体を公募しており、5月24日時点では約40団体が登録し、設立総会には約20の若者団体が出席した。
若者の政治参加の高いハードル
設立総会では、国会図書館調査及び立法考査局政治議会調査室・課の専門調査員・政治議会調査室主任の山田邦夫氏を講師に、諸外国・日本の被選挙権制度や供託金制度の現状をヒアリングした上で、意見交換を行った。
まず、被選挙権年齢については、日本の25歳もしくは30歳以上という年齢制限は国際的に見ても高い。被選挙権年齢が判明した194カ国のうち、6割近くが21歳以下となっており、OECD加盟国(35カ国)で見ると、過半数(53%)が18歳以上となっている。
また、日本の政治参加は年齢という制約が厳しいのに加え、金銭面でもハードルが高い。
日本では選挙に立候補する際には、届け出の際に一定金額を納入しなければならない制度(供託金)が存在するが、諸外国では、アメリカやドイツのように、そもそもこの制度がない国も多く、あっても10万円程度と日本に比べると非常に安くなっている。
イギリスでは20歳の女子大生が国会議員になり、アメリカでは18歳の市長が誕生する一方で、日本は2016年の参議院選挙以降、選挙権年齢は18歳に引き下げられたが、現状同世代の候補者に投票することはできず、若い世代の声が直接政治に反映されているとは言い難い。
被選挙権年齢は何歳まで引き下げるべきか?
こうした政治参加の高いハードルを是正するために、被選挙権年齢をどう変えるべきか。5月24日の設立総会では、主に衆議院・参議院選挙で被選挙権年齢を分けるべきか、具体的に何歳まで引き下げるべきか意見交換が行われた。主な意見を紹介していきたい。
まず、衆参で被選挙権年齢を分けるべきかについては、下院(日本でいう衆議院)の被選挙権年齢と上院(日本でいう参議院)の被選挙権年齢の両方のデータが判明した70カ国中、両院の被選挙権年齢が一致している国が24カ国、下院の被選挙権年齢より上院の被選挙権年齢の方が高い国が46カ国と、上院(参議院)の方が世界的にも高い現状を踏まえ、年齢差は維持した方が良いのではないか、という意見が目立った。
「一律何歳以上という方がわかりやすいんですが、二院制における上院、下院の役割の問題もありますので、若者の政治参加の観点だけで一律下げてしまうと、他の問題も出てくるのではないかと思います。もし二院制の議論無しに下げるのであれば、今の5歳差をつけて、調整した方がいいんじゃないかと思います」(立憲民主党・落合貴之衆議院議員)
「参議院に関しては、私は衆議院と差別化を図っても良いのかなと思いますので、30歳のままにしておくかは置いておいて、衆議院と参議院で差別化していいと思っています」(国民民主党・青山大人衆議院議員)
一方、何歳まで引き下げるべきかについては、引き下げ自体には満場一致で賛成だったが、18歳まで引き下げるべきか、20歳までにすべきかで意見が分かれた。
「自分たちの世代から自分たちの代弁者を送り出す、という当事者感覚を持ってもらうという意味では被選挙権年齢の引き下げは有効な手段になりうるのかなと思っています」(自民党・中曽根康隆衆議院議員)
「被選挙権と選挙権というのは国民の参政権の一体を成すものであって、分けるべきものではないと思っております。また、各党の入党の条件として18歳以上という政党が多いのではないかと思いますが、それは18歳以上であれば政治を担う意欲や力量があると各党が考えてそうなっていると思いますので、やはり被選挙権についても18歳以上に引き下げるべきだと思っております」(日本共産党・本村伸子衆議院議員)
「今成人の年齢を18歳に引き下げようとしていますが、少年法との関係でどうなんだ、というのはよく議論に上がります。18歳で市議会議員もしくは国会議員になる時に、少年法の対象、つまり保護対象の方が市や国の判断ができるのか。被選挙権年齢を18歳まで引き下げるのであれば、少年法も同じく18歳にしないとズレが出るのかなと思います」(日本維新の会・丸山穂高衆議院議員)
「(民法を改正して)18歳を大人に定義するのであれば、18歳で選挙に出て頂いて、選挙で信任を得るのが一番フェアな制度なのかなと思います」(自民党・小林史明衆議院議員)
候補者の乱立をどう防ぐのか?
供託金額の引き下げについては、世界の中でも突出して高い国政選挙の供託金(小選挙区で300万円、比例代表との重複立候補の場合300万円=合計600万円)は下げるべきだという意見が大半を占めたが、引き下げた際に候補者の乱立をどうするかが主な議論の焦点となった。
「供託金の歴史的な経緯を調べてみると、物価が上昇するのに合わせて供託金額が上がっているんですが、バブルの時に大きく上がっている。そのバブル前の水準に戻すというのは一つの案なんじゃないかなと思います。供託金を一律にする場合は、選挙公費の負担のあり方も見直していかなければいけない」(立憲民主党・落合貴之衆議院議員)
「供託金はちゃんと得票すれば返って来るので、供託金の引き下げと若い方の立候補はそんなに関係ないんじゃないかと思っています。ただ、衆議院と参議院に関しては高い。そういう意味では供託金は国政の方を検討した方が良いのかなと思います」(国民民主党・青山大人衆議院議員)
「供託金については、やはり日本の供託金は高すぎるということで、欧米諸国では10万円以下のところが多いわけですけれども、そうした方向に引き下げて、若くてお金がない方々も『こういう現実を変えたい』と出られるような制度にしていくべきだと思っております」(日本共産党・本村伸子衆議院議員)
「今日はお金の話だけに特化してますけれども、じゃあ海外では(供託金以外で)乱立を防止しているのか、していないのか、立候補の要件がどうなっているのか、もう少し詳しく知っていく必要があるのだろうと思います。ただ一つ言えるのは、日本の供託金は海外に比べて突出して高いというのは明らかですから、やっぱりもう少し下げていくべきなんだろうと思います」(国民民主党・奥野総一郎衆議院議員)
また、海外では、乱立防止策として署名制度を導入している国も存在する。
「供託金の代わりに、例えば署名を持って代えるとか、何か代替案があれば実際乱立するようなのも避けられるのではないかなと思います」(日本維新の会・丸山穂高衆議院議員)
今後、若者団体からも被選挙権年齢と供託金引き下げについての提言を集め、さらに議論を深めていく。
議論に参加したい若者団体は若者議連のHPから登録できる。