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被選挙権年齢を18歳に。若者政策推進議連が各党政調会長に提言

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
出典:若者政策推進議員連盟

2016年以降、選挙権年齢や成人年齢は18歳に引き下げられた一方、被選挙権年齢は25歳・30歳のままになっている。

結果的に、日本は先進国で最も若い議員が少ない国になっており、それが若者の政治参加を妨げる大きな一因にもなっている。

こうした状況を変えるため、日本若者協議会が事務局を務める若者政策推進議員連盟(会長:自民党・小林史明衆議院議員)は、被選挙権年齢の18歳への引き下げ、供託金の大幅引き下げ、そしてそれを議論する協議会の設置を求めて、提言をまとめた。

それらを自民党の渡海紀三朗・政調会長をはじめ、各党の政調会長に申し入れをした。

若者政策推進議員連盟
若者政策推進議員連盟

提言全文はHPに掲載している。

若者政策推進議連では、国会議員だけではなく、若者も勉強会に毎回参加し、一緒に政策立案を進めている。申し入れの場にも一緒に同席し、なぜ被選挙権年齢の引き下げが必要かを訴えた。

若者にとって同世代の代表がいない日本の議会

日本では超少子高齢化によって、若者の人数が少なく、政治への影響力を持たないことは広く知られている。

筆者作成
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しかし、投票数だけでなく、議会にも若い世代がいない。

10代が一人もいないだけでなく、20代でさえ0.2%程度しかいない。30代を含めても10%もおらず、明らかに有権者と政治家の年代別構成に大きな乖離がある。

過半数を50代と60代だけで占めており、地方議会に至っては、40代以下よりも70代の方が多い。

筆者作成
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結果的に若者世代が抱える課題が当事者目線で語られることが少なく、優先度もなかなか上がってこない現状がある。

国際的に見ても、日本は若い議員が少なく、国会議員に占める40歳以下の政治家の割合は、他の先進国だと30%前後を占めるのに対し、日本は6%にしか満たない。

これは世界147カ国中134位となっている。

筆者作成
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なぜこんなに若い議員が少ないのか。

その大きな理由の一つが、立候補できる年齢である被選挙権年齢が25歳・30歳と高く設定されていることにある。

OECD加盟国38カ国中、61%にあたる23カ国は18歳に設定している。

同じく下院議員の被選挙権年齢を25歳に設定しているアメリカでは、州によっては年齢規定がないなど、地方議会も含めて被選挙権年齢が高い日本は例外的と言えよう。

筆者作成
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若者政策推進議連では、2018年の発足以降、この被選挙権年齢を引き下げようと提言をまとめ、各党に働きかけているが、今も実現に至っていない。

しかし、2021年の衆議院議員選挙の公約では、自民党が「引下げの方向で検討します」とした上で、「適用年齢・対象選挙は若者団体等広く意見を聴いた上で結論を出します」と、任期中(2025年10月まで)に結論を出すことを公約にしている。

筆者作成
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他の政党も公約に引き下げを入れており、立憲民主党や日本維新の会は既に被選挙権年齢を18歳に引き下げる法案を提出しており、残るは与党内の議論だけという状況だ。

5月9日には「被選挙権年齢引き下げに賛同する若者と、国会議員との対話集会」を開催。全主要政党が参加し、50名の若者と国会議員が議論を行った(写真・日本若者協議会)。
5月9日には「被選挙権年齢引き下げに賛同する若者と、国会議員との対話集会」を開催。全主要政党が参加し、50名の若者と国会議員が議論を行った(写真・日本若者協議会)。

立候補年齢を引き下げれば、若者の投票率が上がる?

被選挙権年齢の引き下げを議論すると、「18歳選挙権になったのに、若者の投票率は低い。まずはそれを上げるのが大事ではないか」という意見をよく聞く。

確かに、日本の主権者教育は十分ではないし、投票率を上げるためにできることは山ほどある(詳しくは拙著『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)を参照)。

ただ、被選挙権年齢が高く、若い立候補者・議員が少ないから、若者の投票率も低いという見方もできる。

実際、2006年に被選挙権を18歳に引き下げたイギリスでは、それ以降の選挙で、18-24歳の投票率が、他の世代と比べて大きく上昇している(2001年、2005年総選挙の18-24歳の投票率はそれぞれ40.4%、38.2%だったのに対し、2010年は51.8%、2015年は51.5%、2017年は64.7%へと投票率が大きく上昇(全体の投票率は微増))。

日本でも、若い候補者が立候補すれば、若い世代の投票率が高くなるというデータもある。

若者の政治参加を促進するNO YOUTH NO JAPANは「立候補者年齢と投票率」について、2019年と2023年の統一地方選挙を対象に調査を実施。

2019年と2023年の首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の統一地方選のデータを分析した結果、立候補者に占める20代立候補者率が10ポイント上昇すると、10代投票率が1.85ポイント上昇するとわかったという。

NO YOUTH NO JAPANインスタグラムより
NO YOUTH NO JAPANインスタグラムより

6月13日には、立候補年齢を25歳・30歳以上から18歳へ引き下げることへの賛同・応援コメントを集める「#未来を生きるわたしが決める」キャンペーンが始まった。

そのキックオフイベントに登壇した、ニュージーランドで18歳で地方議員になったソフィー・ハンドフォードさんは、初めて選挙に出馬した際、多くの人から「経験不足」と言われたという。

これに対し、ソフィーさんは次のように答えていたそうだ。

「経験がある人を選び続けてきた結果、今現在、気候変動など全く解決されていない問題があります。実際に何かを変えたいのであれば、人々は勇気を出して、これまでとは違うものに投票する必要があります。そうしなければ、何も変わりません。」

「#未来を生きるわたしが決める」 キャンペーンイベントにて筆者撮影
「#未来を生きるわたしが決める」 キャンペーンイベントにて筆者撮影

変化に疎く、現役世代・将来世代の生活が苦しくなりつつある日本にこそ、必要な言葉だと感じる。

欧州では、選挙権を16歳に引き下げるなど、若者の政治参加がさらに進んでいる。世界の変化に遅れないよう、日本も被選挙権年齢を早急に引き下げ、新しい知見を取り入れられる政治へと変化していくべきだ。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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