「被選挙権と少年法を一致させる必要性はない」、「選挙公営の見直しも」【若者政策推進議連第四回総会】
被選挙権、供託金額引き下げを検討している若者政策推進議員連盟(会長:自民党・牧原秀樹衆議院議員、通称若者議連)。
2018年7月6日に行われた第四回総会では、法務省、総務省、農林水産省、国会図書館調査室の担当者にヒアリングを行った。
現在、論点となっている、被選挙権年齢と少年法との兼ね合い、諸外国における選挙にかかる公営費用や乱立防止策等について理解を深めた。
第二回総会「大学生でも政治家に-若者から被選挙権18歳、供託金10万円を提言」
第三回総会「被選挙権は18歳or20歳、どちらにすべきか?」
被選挙権と少年法を一致させる必要性はない
2015年6月、公職選挙法が一部改正され、「18歳選挙権」が実現したが、その際、附則として「民法、少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」と明記された。それを受け、民法と少年法についても引き下げが検討されていたが、民法については、6月13日に改正民法が可決・成立し、「18歳成人」が決まった。ただし、飲酒や馬券等の購入が可能な年齢は20歳に据え置かれている。
一方の少年法の年齢引き下げについても、現在法務省の法制審議会において「少年」の上限年齢を18歳未満にするか検討が進められており、7月中に検討結果がまとめられる予定だ。
こうした現状を踏まえ、「被選挙権年齢を引き下げる際に、少年法との整合性を取る必要があるのか?」と質問したところ、法務省の担当者からは「論理的な連動性はない」という回答を得た。
「少年法は、少年を保護するというよりは、むしろいかに更生を図っていくか、という観点で手続きとかさまざまな処遇を定めています。ですので、(それぞれの制度で法の目的が異なるため)被選挙権年齢と若年の犯罪者をどう取り扱うかについては、論理的な連動性はないということが前提です」
公職選挙法一部改正案の附則にあるように、一般的な「成人年齢」や「選挙権年齢」を参照はするものの、必ずしも一致させる論理的な理由はないという。
同様に、競馬の馬券等の購入等の20歳据え置きについても、農林水産省の担当者からは、成人年齢と競馬法では規定の趣旨が異なるため、違う年齢になったという説明がなされた。
一方、すべての選挙で被選挙権年齢を一律にすることに対しては慎重な意見もあり、参議院の独自性については、もっと研究が必要ではないかという意見も議員からは出た。
「参議院の独自性というのは、参議院議員にとっては非常に大きなテーマ。諸外国でも上院があるところは、下院と年齢差を設けている国も多い。ただそれはどうしてなのか。参議院の独自性についてはもっと研究が必要ではないか」(公明党・佐々木さやか参議院議員)
乱立防止策については各国さまざまな取り組み
供託金については、諸外国において、(供託金以外で)どのような候補者乱立防止策がなされているのか、選挙公営の充実と供託金額との関係がどのようになっているのか、総務省と国会図書館調査室の担当者にヒアリングを行った。
日本の供託金は諸外国に比べても、非常に高額になっているが、フランスでは、1995年に「乱立防止の効果があまり認められていないのではないか」という観点から、供託金制度を廃止。OECD諸国の中で、供託金も署名制度も不要とされ、比例代表制を採用していない国はフランスのみ。
こうした結果、2017年6月に行われた直近の総選挙では、全体で577の選挙区に対して7882人もの候補者が立候補したが(1選挙区あたり平均約14人)、フランス下院は小選挙区2回投票制であり、日本とはまた異なる仕組みとなっている。
他の国では、10万円に満たない程度の供託金もしくは署名制度を採用している国が多く、どちらも採用していないOECD加盟国6か国のうち、フランスを除く5か国は比例代表制を採用している。
比例代表制では、政党や一定の要件を満たす団体でないと立候補名簿の提出が認められず、個人で立候補することは基本的に不可能になっている。
また、署名制度についても、スイスなどのように、政党ごとに一律の基準で署名要件を課す国もあれば、デンマークなどのように、政党に属しない無所属の候補にのみ署名を課す国も存在する。
選挙公費の使い道は変わらないのか?
供託金以外にも選挙には多額の費用がかかるが、一部は、公的な資金で補填される選挙公営の仕組みが存在する。選挙規制が厳しい日本と諸外国を単純に比較することは難しいが、日本は選挙公営部分が細かく定められており、費用も多い。
出典:「若者政策推進議員連盟」総務省配布資料より
供託金と同じように、一定の得票率を得なければすべて自己負担になる部分も多いが、2014年に行われた衆院選では候補者一人あたり700万円近くも公的な資金がかかっている。
特に、(一定の得票率に満たなくても)誰もが使える「新聞広告」については、候補者一人あたり約280万円もの経費がかかっている。
諸外国でも、ポスターの郵送や公共テレビ・ラジオを用いた選挙広告は無料で使える国が一定数存在するが、マスメディアを見る人がどんどん減る中で、選挙公営の使い道、あり方も考えていく必要があるのではないかという意見も議員から出た。
「新聞広告や経歴放送に合計300万円近くかかっているけれど、年々新聞を取っている人やTVを観る人も減ってきている。一方で、選挙管理委員会のHPに動画を載せたりはしていない」(立憲民主党・落合貴之衆議院議員)
「今の選挙広報のあり方というのが、果たして今の時代に合っているのか。それも見直していく必要があると思います」(自民党・小林史明衆議院議員)
他方、こうした被選挙権や供託金が直接的にどこまで投票率に関係しているのかという質問に対しては、それ以外のさまざまな社会参画の形も重要だろうという意見も出た。
「被選挙権年齢や供託金の額が投票率に関与している部分もあると思いますが、それ以外の要素もおそらく大きい。例えば、スウェーデンやドイツでは、若者協議会というのがそれぞれの街にあって、そこで若者が集って、街にどうあって欲しい、国にどうあって欲しいという議論もする。さらにそこで出た議論が政治に届くルートも出来上がっている。そういうところから、日々社会参画の機会があることで、政治を身近に感じることができている。実際、スウェーデンでは20代の投票率は80%ぐらいある」(自民党・鈴木隼人衆議院議員)
4回の総会を経て、論点は整理されつつあり、今後具体的な提言に落とし込んでいく。
議論に参加したい若者団体は若者議連のHPから登録できる。