徐々に広がりつつある「投票」以外の若者の政治参加。政策提言で社会を変える方法
関心はあっても、「変えられる」と思っていない日本の若者
4月には4年に一度の統一地方選、7月には参議院選挙が予定される選挙イヤーとなる2019年。
「政治参加」というと、一般的には「投票」のことが想起され、毎回若者の投票率が注目される。
もちろん、投票することが重要なことは言うまでもない。
しかし、本来「政治参加」とは、数年に一度の選挙期間だけに限られたものではなく、またそうあるべきではない。
若者の投票率の低さから、「日本の若者は政治に関心がない」とよく言われるが、他の先進国と比べても低い訳ではなく、むしろ高いのが実態である。
OECDが2016年に発表したレポートによると、「政治に関心がない」と答えた15~29歳は、OECD平均の26%より少ない11%。31カ国中3番目の低さとなっている。
出典:OECD
一方、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」という感覚(政治的有効性感覚)は、他の先進国の若者と比べて、低くなっているのが現状だ。
つまり重要なのは、「自分たちが政治に働きかければ、それだけの効果がある」という自信や信頼を育てることであり、そうした機会を増やしていくことだ。
海外では、日常的な政治参加によってそうした感覚が身に付いている。
たとえば、投票率の高いスウェーデンやドイツでは、政治教育において「現実の政治」が教えられているのに加え、政策立案過程に若者が参加し、若者の意見が政策に反映されている。(関連記事:スウェーデンやドイツには公的に若者の声を聞く仕組み)
日本では、教育現場において「現実の政治」が避けられ続け、こうした感覚を育てる取り組みも乏しかったが、最近は若者が政策に関わる取り組みが徐々に広がりつつあり、「投票」以外の政治参加で社会を変える事例も少しずつ増えてきている。
直接行政に提言する若者議会
たとえば、若者が行政に直接提言を行なう若者議会だ。
京都府亀岡市議会が行なう中学生議会は、市内8中学校計23人の中学生が議員となり、「中学生に市の業務内容の一端を知ってもらうことにより、地方自治への関心を高めてもらう」という目的で開催されている。
2018年10月27日に開催された中学生議会では、学校のエアコンとトイレについての改善が求められ、対応することが決まっている。
小学生が陳情
中学生議会や若者議会は議会が設置しているケースも少なくないが、そうした枠組みがなくても、行政に訴えることで変化をもたらした事例もある。
東京都中野区は新学期から区立中学校の制服を性別に関係なく自由選択にする方針に決まったが、このきっかけが小学6年の女子児童の区長への訴えだった。
政党への政策提言イベント、日本版ユース・パーラメント
国政でもこうした動きはある。
日本若者協議会が2015年から行なっている「日本版ユース・パーラメント」だ。
日本若者協議会とは、「若者の意見を政策に反映させる団体」として各政党との政策協議、政策提言を行なっている団体で、39歳以下の個人・団体会員の合計は約4,000名になる。
日本版ユース・パーラメントは各党の公約に提言を反映させることを目指したイベントで、実際に2016年の参議院選挙、2017年の衆議院選挙において、主要政党の公約に提言が反映されている。
特に公明党の35項目の重点政策の中には、ユース・パーラメントにおいて提言した「若者政策担当大臣」と「若者政策担当部局」の設置、「審議会への若者の登用」、「被選挙権年齢引き下げ」が含まれている。
2019年7月の参議院選挙に向けても、2月13日の公明党との日本版ユース・パーラメント2019を皮切りに、自民党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、日本維新の会の6党に対して政策提言を行なう。
今回のユース・パーラメントでは、今まで提言してきた「若者の政治参画」に加え、教育、社会保障、女性の社会進出などについても議論する予定だ。
また、地方の声や当日会場に来れない人の意見も集めるために、政治家とまちづくりができるアプリを運営する「PoliPoli」と連携し、6つの国政政党への政策提案キャンペーンを行なっている。(PoliPoliが日本若者協議会と連携)
若者と一緒に立法を目指す若者政策推進議員連盟
2018年5月に設立された超党派の国会議員で構成される「若者政策推進議員連盟(会長:自民党・牧原秀樹衆議院議員)」では、日本若者協議会が事務局を務め、国会議員だけではなく、若者も勉強会に毎回参加し、一緒に政策立案を進めている。
現時点で若者政策推進議連に参加している若者団体は53団体にも上る。
2018年11月28日には、各政党の政調会長に対して「被選挙権年齢の一律18歳への引き下げ」、「供託金額の大幅引き下げ」の提言を行なった。
選挙権が18歳に引き下げられ、主権者教育も本格的に始まっているが、18歳になって急に投票する権利を与えられても、その意義や効果は実感しにくい。
その前から徐々に社会に参加し、「自分たちが参加することで、物事を変えることができる」と実感することで、結果的に投票率も上がってくるのだろう。
今後もこうした取り組みが広がり、多くの若者が参加するようになることを期待したい。