Yahoo!ニュース

バイデン親子の疑惑「揉み消される」トランプ氏 バー司法長官もクビ!? 選挙人投票バイデン氏勝利

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
11月7日、勝利宣言をした父を祝福するハンター・バイデン氏(左)。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 12月14日、選挙人団による投票で、ジョー・バイデン氏の大統領選の勝利が正式に確定した。バイデン氏は25州から306票を、トランプ氏は25州から232票をそれぞれ獲得。全激戦州6州の選挙人はバイデン氏に投票した。

 バイデン氏の勝利は不正選挙の結果だと主張してきたトランプ氏は法廷闘争を続ける姿勢を示している。

 バイデン氏の正式な勝利確定が報じられる中、トランプ氏は「選挙で不正が行われた証拠は見つからなかった」と明言していたバー司法長官の辞任をツイッターで伝えた

「ホワイトハウスでビル・バー長官ととても良いミーティングを持ったばかりだ。我々の関係は非常に良好だった。彼は素晴らしい仕事をした! 書簡に書かれているように、ビルは家族と休暇を過ごすクリスマス直前に辞任する」

 もっとも、トランプ氏は、12月12日、バー氏をクビにすべきだと訴える投稿をリツイートしてバー氏を攻撃していたので、バー氏の辞任表明はトランプ氏の攻撃に追い込まれた結果と言えるだろう。トランプ氏にクビにされたのと変わりないかもしれない。

息子ハンター氏の疑惑調査

 勝利が確定したバイデン氏。しかし、バイデン氏の大統領としての船出は順風満帆には行かないかもしれない。

 息子ハンター・バイデン氏の中国ビジネスをめぐる疑惑が調査されているからだ。そのことを発表したのは、ハンター氏自身だった。12月9日、ハンター氏はデラウェア州の連邦地検から税務調査を受けていることを発表したのである。

 これに対し、バイデン氏の政権移行チームは「次期大統領バイデン氏はここ数ヶ月の悪意ある個人攻撃を含む大変な問題を戦い抜き、強くなった息子を誇りに感じている」という声明を発表した。

 また、12月13日のAP通信の報道によると、ハンター・バイデン氏は、税務調査の一貫として、ウクライナのエネルギー企業ブリスマ社での仕事に関する情報の提供も求められたという。

 政権移行が行われている重要な時期に、ハンター・バイデン氏が2つの調査を受けている状況はバイデン次期政権にとっては痛手になるのではないか。

1,100万ドル得ていた?

 ハンター・バイデン氏については、米上院の国土安全保障・政府活動委員会のロン・ジョンソン委員長(ウィスコンシン州の上院議員、共和党)が9月、『ハンター・バイデン、ブリスマ社、汚職 -アメリカの政策へのインパクトと懸念』と題する調査報告書を出していた。この報告書によると、中国企業のCEHCは約500万ドルをハンター・バイデン氏が運営している企業に送っていた。

 また、この報告書では、ハンター・バイデン氏と親しいビジネスパートナーは、中国企業から600万ドルを受け取った可能性が高いと指摘されている。このビジネスパートナーはバイデン家の代理人になりたがっていたという。

 ジョンソン氏はハンター・バイデン氏について、フォックスニュースのインタビューでこう話している。

「中国から1,100万ドル得ていた可能性がある」

 もっとも、ハンター・バイデン氏は10月に受けたテレビのインタビューで、「1セントも受け取っていない」と全面的に疑惑を否定していた。

 ジョンソン氏はこうも話している。

「ジョー・バイデン氏は息子ハンターとは海外のビジネスについては話していないといっているが嘘だ」

 実際、ハンター・バイデン氏の元ビジネスパートナーのトニー・ボブリンスキー氏によると、ハンター・バイデン氏は中国共産党と繋がりがある企業とビジネスをしていたが、ジョー・バイデン氏もそのことを知っていたという。

なぜ選挙の前に明かさなかったのか?

 選挙で劣勢に立っていたトランプ氏は、10月、特別検察官を任命して“バイデン親子の疑惑”の捜査を始めるよう、腹心であるウィリアム・バー司法長官に呼びかけた。特別検察官のロバート・ムラー氏がトランプ氏の“ロシア疑惑”を調査したように、バイデン親子の周辺を調査する特別検察官が必要だと考えたのだ。

 そのバー氏について、12月10日付のウォール・ストリート・ジャーナルが「バー氏はハンター・バイデン氏のビジネスと金融取引に関わる調査が行われている事実について、遅くとも春から知っており、選挙運動中、それが明るみに出ないようにしていた」と報じている。

 この報道を受け、トランプ氏はツイッターで怒りを露わにした。

「なぜバーは選挙の前に、国民にハンター・バイデンについての事実を明かさなかったのか? ジョーは討論会の場で何も不正はないと嘘をつき、記者もそれを認めた。投票の際、共和党にとって大きく不利になった」

「なぜフェイクニュースやFBI、司法省は、選挙の前にバイデンのことを報じなかったんだ」

 司法省はガイドラインで、調査は選挙結果に影響を与える恐れがあることから、選挙運動期間中は明らかにしないよう規定しているという。バー氏はそのガイドラインに従い、ハンター・バイデン氏が調査されていることを表沙汰にしなかったと思われる。

 トランプ氏は、選挙人投票が行われている最中、冒頭に書いたようにツイートでバー氏が辞任したことを告げた。バー氏が選挙で不正は見つからなかったと明言したことはもちろん、ハンター・バイデン氏が調査されている事実を知っていたにもかかわらず表沙汰にしなかったことにもよほど腹が立ったのだろう。

4.6%がバイデン氏に投票しなかったかも

 伏せられていたハンター・バイデン氏に対する調査。

 トランプ氏や共和党サイドはハンター・バイデン氏を巡る疑惑が国民に広く知らされなかったことが、今回の大統領選の結果に繋がったという見方をしている。

 トランプ氏はツイッターで、「有権者の10%がハンター・バイデンの話を知っていたら、投票する候補者を変えていただろう」というニューヨーク・ポストの記者のコメントを引用ツイートしていた。

 前述のジョンソン氏も、主要メディアがハンター・バイデン氏の疑惑を報じなかったために、多くの国民が疑惑について知らされなかった点を問題視して、こう話している。

「バイデン氏に投票した人の36%は、ハンター・バイデン氏のストーリーを知らなかったという調査結果がある。また、そのうち13%がハンター氏のストーリーを知っていたら、バイデン氏には投票しなかったと答えている。つまり、バイデン氏に投票した人の4.6%が、ハンター・バイデン氏のストーリーを知っていたならバイデン氏には投票しなかったということになる。その場合、トランプ氏が選挙に勝っていただろう」

 トランプ氏もジョンソン氏も、バイデン氏が勝利したのは、ハンター・バイデン氏の疑惑がメディアにより大きく報じられなかったことが一因としてあると訴えているのだ。

バイデン親子の疑惑は民主党に揉み消される

 そして、ジョンソン氏はこう予測している。

「バイデン氏の地位を利用してビジネスが行われてきたことは、バイデン氏が大統領になった暁には大きな混乱を引き起こすだろう」

 実際、共和党議員たちはすでに、バイデン次期政権は特別検察官を任命してハンター・バイデン氏に対する調査を監督するよう圧力をかけているという。来年初めに行われるジョージア州の上院選で共和党議員が勝ち、共和党が上院の多数派になれば、その圧力はさらに強まるかもしれない。

 しかし、トランプ氏は、逆に、バイデン親子の疑惑は民主党に握り潰されると見ているのか、こうツイートしている。

「バイデンが大統領に就任したら、ハンターやジョーには何も起きないだろう。バーは何もせず、政権入りする民主党議員たちがすぐに全てを揉み消すぞ」

 政権移行中に入ったハンター・バイデン氏に対する調査で、どんな新事実が明らかになるのか注目されるところだ。

(大統領選関連の記事)

トランプ流の退任の仕方とは? 逆転勝利ならずか 米大統領選

トランプ氏の支配が続く共和党 「バイデン氏の勝利を認めた共和党議員は27人だけ」米紙 米大統領選

「正々堂々と負けたい」 トランプ氏が「今までで最も重要なスピーチ」で訴えたこと 米大統領選

「私は大差で勝ったのだ」 トランプ氏「ホワイトハウス退去」を撤回か? 米大統領選

トランプ、“敗北宣言”に向け第一歩? “政権移行機関”はなぜバイデン勝利を認めたのか? 米大統領選

逆転勝利できないトランプ氏が悪あがきを続けるワケ 共和党議員にも見限られる! 米大統領選

郵便投票の消印が改ざんされた?=宣誓供述書 トランプ、内部告発者を「勇敢な愛国者」と賞賛 米大統領選

トランプ陣営、「不正投票」をするよう働きかけか! 米紙報道 米大統領選

「そこには愛があるから」 バイデン氏勝利! 米大統領選の勝敗を分けたものは何だったのか?

マーカーペンを巡る陰謀論「シャーピーゲート」が浮上 「票が数えられなかった」と訴訟に発展 米大統領選

トランプ氏が不当な勝利宣言 「トランプに投票」は1人もいなかった ドジャース球場の投票所ルポ

意外にも「たくさんの黒人がトランプ氏に投票する」その理由とは? 米大統領選

「バイデンに投票」はたった2人だけだった! “トランプランド”の投票所で直撃取材 米大統領選 

日本にも「隠れトランプ」がたくさんいると思うワケ 実はあなたも? 米大統領選

ジョージって誰のこと? 200万回近く再生された“バイデン認知症疑惑“動画の真相 米大統領選

“中国事業に関与”証言も出たバイデン氏は“人格”で勝てるのか “経済”ではトランプ氏圧勝 最終討論会

「トランプ氏は終わらない」元側近バノン氏が暗躍 “バイデン氏メール・スキャンダル”の信憑性

トランプ氏がついた「致命的に危険な嘘」 共和・民主両党失墜のリスクも 対話集会

トランプ氏、バイデン氏を老人ホームの入居者に仕立てたパロディー画像で侮辱 バイデン氏の勝率91%

傲慢?それとも母親みたい? 注目を集めたのはカマラ・ハリス氏の表情だった 米副大統領候補討論会

トランプ氏、「完全に危機から脱したわけではない」のに退院 感染の口止めもしていた!

「トランプ氏はプロの嘘つき。感染は同情を得るためのフェイク」マイケル・ムーア監督が“陰謀論”で警告

“米大統領選のノストラダムス”の大予言 大統領選の勝者は? ロシア、中国、イランが選挙介入か

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事