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トランプ、“敗北宣言”に向け第一歩? “政権移行機関”はなぜバイデン勝利を認めたのか? 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
一般調達局がバイデン政権に対して政権移行手続き開始に入ることを認めたトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

 大統領選の敗北を頑なに認めてこなかったトランプ氏が米国時間11月23日、驚きのツイートをした。

 米連邦政府一般調達局(GSA)がバイデン氏に対して政権移行手続きを開始することを認めるツイートだ。

「GSAのエミリー・マーフィーの我が国への強い貢献と忠誠心に感謝したい。彼女は、ハラスメントにあい、脅され、いじめられていたが、彼女や、彼女の家族、GSAの職員にそんなことがおきるのを私は見たくない。我々の訴訟は力強く続いていく。我々は善戦を続け、勝つと信じている。

 それでも、我が国の最善の利益を考え、エミリーと彼女のチームが最初のプロトコールに必要なことを行うよう勧告し、私のチームにも同様のことをするよう伝えた」

受けていた圧力を否定

 政府の資金や国家機密情報など米政府のリソースを握っているGSAは、政権移行を行うために重要な機関だ。マーフィー長官が勝者を認定しない限り、政府の重要なリソースはバイデン氏の政権移行チームと共有されない。

 しかし、バイデン氏が2週間前に勝利宣言した後も、マーフィー長官はバイデン氏勝利を認めず沈黙を保ってきた。そのことを、トランプ氏は賞賛していたものの、民主党やバイデン氏はもちろん、最近では共和党側さえ政権移行手続きにスムーズに入るよう、マーフィー長官に圧力をかけていた。下院民主党はマーフィー長官に、政権移行のための資金へのアクセスを阻止している理由を説明するよう要求していた。そのマーフィー長官がやっとバイデン氏勝利を認めたのである。

 様々な圧力を受けていたマーフィー長官だが、バイデン氏側に送った政権移行手続き開始を認める書簡の中では、そんな圧力を否定し、自ら独立した立場で判断を下したと記している。

「法と事実に基づいて、私が独立的に決断を下したということをわかって下さい。私は、決断の内容やタイミングについて、ホワイトハウスやGSAの人々を含め、いかなる官僚からも直接的にも間接的にも圧力をかけられませんでした。はっきりさせておきますが、決断遅延の指示は何も受けませんでした」

なぜバイデン氏勝利を認めたのか

 マーフィー長官の書簡は、ミシガン州がバイデン氏勝利という選挙結果を正式に認定した直後、バイデン氏側に送られた。ジョージア州で行われた再集計ではバイデン氏の勝利が再確認され、ペンシルベニア州でもバイデン氏勝利という選挙結果の認定が行われようとしている。つまり、激戦州はどの州もバイデン氏勝利を認定する状況なのだ。また、トランプ陣営が不正選挙が行われたとして起こしていた数々の訴訟も証拠不十分を理由に棄却されている。

 このような状況から、マーフィー長官はトランプ氏にはもはや勝算なしと判断したのだろう。

 迅速に政権移行手続きに入らないことで、国家安全保障に関わる機密情報がバイデン氏側と共有されない状況も懸念されていた。

 また、マーフィー長官は、アメリカで新型コロナウイルスの感染者数が激増する中、米国民の命を左右する情報をバイデン氏と早急に共有する重要性を感じたのではないかと思われる。バイデン氏側が、新型コロナウイルスのデータやワクチン分配計画に関する情報提供の遅延は、米国民の命を危険にさらすと訴えていたからだ。

 アメリカの最善の利益のために政権移行手続きに入ることを許可したトランプ氏だが、これは、同氏が“敗北宣言”に向かって第一歩を踏み出したということなのだろうか?

 しかし、冒頭のツイートで、トランプ氏は“訴訟を継続し、勝つと信じている”と法廷闘争での勝訴に自信も見せている。これは、これまで応援してくれたトランプ支持者に対するアピールなのか?

 まだまだ、トランプ氏の今後の動きから目が離せない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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