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トランプ氏の支配が続く共和党 「バイデン氏の勝利を認めた共和党議員は27人だけ」米紙 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ジョージア州で行われた支持者集会でホワイトハウス奪還を訴えたトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

「25人、ワオ! とてもたくさんいるのに驚いているよ。我々は闘いを始めたばかりだ。25人のRINOS(Republican in name onlyの略、名ばかりの共和党員のこと)のリストを送って下さい。私はフェイクニュースのワシントン・ポストは最小限しか読まないんだ」

 トランプ氏が米国時間12月5日、こんなツイートをした。

 これは、米紙ワシントン・ポストが上院と下院の共和党議員を調査した結果、249人中、バイデン氏が大統領選で勝利したと認めたのは25人だけだったという結果を受けて行われたツイートだ(注:同紙はその後、バイデン氏が勝利したと認めた共和党議員の数を25人から27人に変更している)。調査は、トランプが46分の長いビデオ演説をフェイスブックに投稿した後に行われた。

 

 バイデン氏が大統領選に勝ったと認めた共和党議員はたったの25人(トランプ氏ツイート時)だったのに、とてもたくさんいると驚いたトランプ氏。共和党議員全員が、バイデン氏を勝ったとは認めていないと高をくくっていたのだろうか?

共和党を支配し続けるトランプ

 もっとも、共和党議員の約88%に当たる220人がどちらが勝者かという質問には無回答で、トランプ氏が勝利したと回答した共和党議員は2人だけだった。

 この調査結果について、同紙はこう分析している。

「この調査結果は、トランプ氏が80年ぶりに、3人目の再選しなかった現職大統領になったにもかかわらず、多くの共和党議員が去りゆく大統領と彼の共和党支配力に対して、恐れを抱いていることを証明している」

 つまり、トランプ氏の共和党支配はまだまだ続いているというのだ。12月14日に行われる選挙人団による投票ではトランプ氏の232票に対し、バイデン氏が306票獲得すると予想されているにもかかわらず、トランピズムは健在なのである。

 実際、共和党のミッチー・マコーネル上院議長も、トランプ氏が不正選挙を訴え、バイデン氏の勝利を認めていない状況について記者団から質問された際、直接回答するのを避け、「明日は明日の風が吹く」とはぐらかした。

 共和党としては、2024年の大統領選を見据え、トランプ氏を再出馬させて政権を取り戻そうという目論見があるのかもしれない。

上から、誰が勝ったか?、勝利を訴えているトランプ氏をサポートするかor反対するか?、バイデン氏が選挙人投票で勝ったら、次期大統領として認めるか?という質問の結果。出典:Washington Post
上から、誰が勝ったか?、勝利を訴えているトランプ氏をサポートするかor反対するか?、バイデン氏が選挙人投票で勝ったら、次期大統領として認めるか?という質問の結果。出典:Washington Post

ジョージア州知事との確執

 今も共和党を支配し続けるトランプ氏。

 しかし、そんなトランプ氏でも州政府まではコントロールできないようだ。不正選挙が行われたとトランプ氏に批判されていた激戦州はトランプ陣営の訴訟を棄却し、バイデン氏の勝利を認定した。そのため、確執が生じている。

 前の投稿にも書いたが、トランプ氏は郵便投票の署名が本人の署名と一致するかを重視し、すでにバイデン氏勝利を認定したジョージア州に署名を確認するよう求めていた。それについて、12月5日、トランプ氏と同州のブライアン・ケンプ州知事(共和党)はツイッターで応酬した。

 トランプ氏は「ジョージア州の州知事や州務長官が簡単な署名確認を認めれば、私はたやすくすぐに勝つだろう。署名確認は行われておらず、大規模な食い違いを見せている。なぜこの2人の共和党員はノーと言うのか? ジョージア州で勝てば、他はみな上手く収まるのだ」とツイート。

 それに対し、ケンプ州知事が「今朝、大統領に伝えたように、選挙プロセスの信頼を取り戻し、合法的な票だけが集計されるようにするために、私は3度署名の監査を求めた」と反論すると、トランプ氏は「しかし、署名の確認は行われなかった。君の部下たちは、君の言うことを聞かない。何を隠しているんだ? 少なくとも、すぐに州議会の臨時会を開くよう求めろ。それが君が簡単にすぐにできることだ」と訴えた。

 アメリカの連邦法では、一般投票による大統領の選択に失敗した場合、その州の州議会が選挙人を選ぶことができるシステムになっているが、トランプ氏は、臨時会を開いて州議会がトランプ氏に投票するような選挙人を任命するようケンプ州知事に圧力をかけたのである。もっとも、ケンプ州知事はトランプ氏の要求を拒否した。

 しかし、トランプ氏がたとえこの方法でジョージア州の選挙人票を獲得したとしてもその数は16。306票を獲得しているバイデン氏との間にある74票という大差を縮めることは難しい。

3週間でホワイトハウスを奪還する

 それでも、トランプ氏は、1月5日にジョージア州で行われる連邦上院選の決選投票に臨む共和党候補たちを応援するために駆けつけた支持者集会で、大統領選の選挙結果を覆し、敗北しないと訴えた。

「ホワイトハウスを奪還するぞ。2024年までは待ちたくない。3週間で奪還したい。決して敗北しないぞ」

 ところで、同州の連邦上院選の結果はバイデン氏の政権運営を左右する。民主党が同州の2議席を勝ち取れば上院の過半数を獲得し、バイデン政権は推進する政策を通しやすくなるが、共和党が勝ち取れば“ねじれ議会”となり、政策が阻止されることになるからだ。

 そのため、トランプ氏は集会で、ジョージア州の有権者に投票に行くよう強く呼びかけたが、トランプ氏自身が大統領選の不正選挙を訴え、ケンプ州知事に圧力をかけて選挙結果を覆そうとする動きに出たことは、連邦上院選にマイナスに働く可能性もあるのではないかという懸念の声もあがっている。共和党候補が勝っても負けても、トランプ氏にその原因が求められる状況なのだ。

 その意味で、同州の連邦上院選はトランプ氏の求心力が試される選挙になるかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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