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「正々堂々と負けたい」 トランプ氏が「今までで最も重要なスピーチ」で訴えたこと 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
不正選挙を訴え続けるトランプ氏は、正々堂々と負けることができるのか?(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏の2024年の大統領選出馬が徐々に現実味を帯び始めている。

 米メディアは、トランプ氏が選挙後、「不正選挙と闘う」という大義名分の下、170ミリオンドルという莫大な献金をトランプ支持者から集め、その多くが2024年の大統領選の選挙運動に充てられる可能性を指摘している。

 また、トランプ氏がホワイトハウスで行われたパーティーで「素晴らしい4年間だった。私たちはさらに4年間できるよう取り組んでいるが、そうでなければ、4年後に会おう」と4年後の大統領選出馬を示唆したことも注目された。

 2024年の大統領選出馬の可能性を匂わせているトランプ氏だが、まだまだ、不正選挙と闘う姿勢も崩していないようだ。

 米国時間12月2日、トランプ氏は「これは、今までで最も重要なスピーチになるかもしれない」という説明とともに、46分間にわたる動画をフェイスブックで公開し、不正選挙と闘い続ける意思表明をした。

Statement by Donald J. Trump, The President of the United States

トランプ氏があげた証拠とは?

 ホワイトハウスであらかじめ録画されたスピーチで、トランプ氏は“不正選挙の証拠は大いにある”と強く訴えた。先日、トランプ氏の腹心とも言える司法長官のウィリアム・バー氏さえ「不正選挙の証拠はない」と明言したばかりなのだが、このスピーチは「証拠はない」と方々から批判され続けていることへの反論とも言えるものかもしれない。

 例えば、トランプ氏は以下の証拠を例としてあげた。しかし、その多くは裁判で認められず、すでに棄却されたものである。

・ミシガン州では「ドミニオン・システム」の欠陥のため、6万の票がトランプ氏からバイデン氏へと変更された。

・ミシガン州では大幅にリードしていたのに、午前6時31分に突然、149,772票がバイデン氏に入った(トランプ氏はグラフを指し示しながら説明した)。

・ジョージア州ではなぜか有権者の署名が本人の署名であるか確認されることなく、たくさんの票がバイデン氏に流れた。署名が本人の署名とマッチするか確認する必要がある。

・本人かどうかIDを確認されず、米国市民かどうかも確認されず投票した人々がいる。死者も投票した。

・民主党が強い都市では、選挙立会人が集計室から追い出された。不法な活動を行なっていたからだ。

・ペンシルベニア州では、多くの有権者が郵便投票用紙を2通も受け取ったが、彼らの多くは民主党支持者だった。

・有権者登録していない人々の中には、偽名で投票するようにと言われた人々がいる。

・締め切りを過ぎて到着した票が何千票も集計されたという証言がある。

・デトロイトでは、選挙管理人が、同じ票を何度もカウントした。また、複製された票もある。多くの票がみな同じ署名だった。

・ネバダ州では、署名を確認するマシンが低標準で設定されていたため、多くの票が集計に入れられた。実験的に、9人の人々に意図的に正しくない署名をしてもらったところ、うち8人の署名が正しい署名であるとそのマシンにより判断された。

・激戦州では、郵便投票の拒否率が非常に低かった。ジョージア州では拒否率が0.2%とほとんど拒否されなかったに等しい。一方、2016年の大統領選時の拒否率は6.4%だった。

 この中でもトランプ氏は特に、郵便投票の署名について懸念を示しており「少なくとも、郵便投票の署名が本人のものであるか分析する必要がある」と訴えた。

今は中国人が一番ハッピー

 大規模な不正選挙が起きた理由については、トランプ氏はこう話している。

「民主党が、パンデミック、チャイナ・ウイルスを郵便投票を行う言い訳に利用したことが、大規模な不正選挙につながった。今、中国人以上にハッピーな人はいない」

 また、民主党はこんな選挙結果になるとわかって動いていたと、民主党による陰謀論にも言及した。

 そして、不正選挙と闘い続ける意思表明も行った。

「今さら、選挙結果を訂正しようとしても遅すぎるという声もあるが、時間はたくさんある。この選挙は完全なるカタストロフィーだったが、我々は不正であることを証明する。連邦最高裁も理解すると願っている」

「不正票が排除されたら、我々は全州で、激戦州で簡単に勝つのだ。選挙当日の午後10時時点のように。勝利に必要な票の何倍も得票したことを証明する」

 さらには、フィクションにしか聞こえないのであるが、「メディアや判事も誰が選挙で勝利したかを知っているが、それを受け入れていない」と息巻いた。

正々堂々と負けたい

 また、敗北についても言及した。

「選挙に負けても気にしないが、選挙には正々堂々と負けたい。アメリカの人々から選挙結果が盗まれるのはいやなので、私は闘っている」

 トランプ氏自身は「いかなる正しい選挙結果も受け入れる準備ができている」という。しかし翻せば、これはトランプ氏が指摘した不正選挙による正しくない選挙結果は受け入れないということになる。

 結局のところ、トランプ氏は不正選挙を訴え続ける限り、正々堂々と負けることはできないだろう。敗北宣言をすることなく、2024年の大統領選の選挙運動を開始することになるのではないか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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