5月30日は「ごみゼロの日」全国で最もごみの少ない自治体は?人口3区分のトップ10発表
5月30日は「ごみゼロ(530)の日」。
2023年3月30日、環境省が、一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度/2021年度)を発表した(1)。一般廃棄物の処理コストは年間2兆1,499億円。前年度より159億円増えた。
環境省が毎年発表しているのが、1人1日あたりのごみ排出量が少なかった自治体だ。人口区分別に、10万人未満、10万以上50万人未満、50万人以上の3区分で、それぞれ上位10自治体を発表している。
ごみ量に大きな影響を与えるのが、食品ロスを含む「生ごみ」だ。重さの80%以上が「水」なので、重く、燃えづらい。ごみを減らすには、食品ロスを含めた生ごみをいかに減らすかがポイントとなる。
人口50万人以上では八王子市が1位
人口50万人以上の区分では、東京都八王子市が1位、2位が京都市、3位が愛媛県松山市だった。前年度(令和2年度/2020年度)は、京都市が1位、愛媛県松山市が2位、東京都八王子市が3位だった。筆者が2017年7月から廃棄物対策審議委員を務めてきた埼玉県川口市もランクインしている。
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口50万人以上)
1位 東京都八王子市
2位 京都府京都市
3位 愛媛県松山市
4位 神奈川県川崎市
5位 神奈川県横浜市
6位 埼玉県川口市
7位 静岡県浜松市
8位 広島県広島市
9位 北海道札幌市
10位 埼玉県さいたま市
東京都八王子市は、平成29年度(2017年度)、平成30年度(2018年度)、令和元年度(2019年度)と、連続して1位を獲得している。筆者が八王子市主催の食品ロス削減の講演へ行った際も、市民団体らが、食品ロスを含む生ごみを活用したコンポスト(堆肥)の作り方や、食品ロスになりそうなものを家庭から寄付するフードドライブの案内を積極的に実施していた(2)。
京都市は、20年間かけて、2000年度には82万トンあったごみを41万トンまで減らした。食品ロス削減はもちろん、全体のごみを減らすための施策を活発に行っている(3)。
愛媛県松山市は、剪定した枝や、学校給食の残さなどは、すべて資源として活用している(4)(4')。以前、9年連続で、ごみ少ないランキングの1位を獲得したこともあり、毎年、ランキング上位の常連だ。
人口10万人以上50万人未満では静岡県掛川市が1位
次に人口の多い区分では、静岡県掛川市が1位、東京都日野市が2位、東京都小金井市が3位だった。人口50万人以上の区分同様、この区分でも、ベスト10は2020年度と変わりない。
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人以上50万人未満)
1位 静岡県掛川市
2位 東京都日野市
3位 東京都小金井市
4位 東京都立川市
5位 静岡県藤枝市
6位 東京都西東京市
7位 東京都小平市
8位 東京都国分寺市
9位 東京都東村山市
10位 東京都府中市
静岡県掛川市は、2010年度と2011年度にも1位を獲得している(5)。廃棄物行政を研究してきた山谷修作氏の著書には、2006年11月に始まった、掛川市の「ごみ減量大作戦」の取り組み含め、8ページにわたって解説されている(6)。2008年1月にはごみの指定袋に記名する方式を導入し、排出者を「見える化」している。
また、「民でやれることは民でやる」とし、(大量の)剪定枝の資源化や古紙の資源化は、市ではなく、民間が行なっている。東隣に位置する菊川市と構成する「掛川市・菊川市衛生施設組合」が廃棄物処理施設「環境資源ギャラリー」を運営し、さまざまな取り組みを長年継続してきた。
人口10万人未満では長野県南牧村が1位
人口10万人未満の区分では、長野県南牧(みなみまき)村が1位だった。2位が長野県川上村、3位が徳島県神山町。
1人1日あたりごみ排出量の少ない自治体(人口10万人未満)
1位 長野県南牧村
2位 長野県川上村
3位 徳島県神山町
4位 宮崎県高原町
5位 北海道更別村
6位 長野県天龍村
7位 長野県阿南町
8位 長野県泰阜村
9位 長野県高森町
10位 長野県下條村
長年、1位を保っていたのが長野県川上村だ(5)。川上村は、生ごみを自治体が回収しておらず、住民による処理にまかせているのが、ごみを少なくしている要因だ。なぜなら、食品ロスも含んでいる生ごみは、重量のうち80%以上が「水」だ。水分が多ければ、必然的に重くなる。また、燃えにくいので、焼却処分には大量のエネルギーやコストがかかる。南牧村も川上村と同様で、乾かした生ごみであれば可燃ごみに入れてもいいが、基本的には住民の処理にゆだねられている(7)。
「燃やすしかないごみ」福岡県柳川市や京都府亀岡市
福岡県柳川市は、「燃やすごみ」というごみ袋の名称を、2021年、「燃やすしかないごみ」に変更した(8)。1枚20円だったごみ袋は40円にした。その結果、可燃ごみが10%も減ったそうだ(9)。京都府亀岡市は、2023年4月から、「燃やすしかないごみ」「埋立てるしかないごみ」と名称を変更した(10)。資源化を促進するためだ。
京都府亀岡市は、全国で初めてレジ袋を禁止した条例でも知られる。京都府亀岡市の名物、保津川下りでは、条例以降、レジ袋はほとんど見かけなくなったそうだ(11)。
長野県上田市や須坂市では、「生ごみ出しません袋」がある。基本的にごみ袋は有料だが、生ごみを堆肥化するなどして自宅で処理する場合、住民に無償で提供している(8)。
このような取り組みを続けることで、ごみ処理や施設維持に費やしている、年間2兆1,449億円もの税金(=われわれが納めた税金の結集)は何十%も安くなるはずだ。なぜなら、前述の通り、食品ロスを含む生ごみは、その重さの80%以上が水だからだ。
生ごみを燃やすのではなく、資源として活用すれば、ごみ処理費に費やす税金も減り、福祉や雇用、教育、医療など、ほかの用途に税金をまわすことができる。「ごみ」と名付けたのは人間であって、そもそも生ごみは「資源」なのだ。スウェーデン取材でお世話になったペオ・エクベリさんは、「われわれは、"生ごみ"という言葉は使いません。強いていえば "生(なま)資源"です」という趣旨を話している。
「分ければ資源 混ぜればごみ」
という標語を心に留めておきたい。
*本記事は、2023年4月10日に配信した『「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円超のごみ処理減らす全国の自治体 少ない1位は?』を編集して再掲したものです。
参考資料
1)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について(環境省、2023.3.30)
https://www.env.go.jp/press/press_01383.html
2)あなたの住む街はランキングに入ってる?環境省が最新(H29年)ごみ排出量発表、八王子市の優れた取組み(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2019.3.29)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20190329-00120035
3)なぜ燃やす?2兆円超、8割が水のごみも 焼却ごみ量・焼却炉数ともに世界一の日本(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/4/6)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20210406-00230907
4)なぜ松山はごみが少ないのか?家庭のごみを減らす全国トップレベルの秘密を探る(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021.12.13)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20211213-00272277
4')ごみ排出量が少ないまち、愛媛県松山市の3010運動 パル通信(111)(井出留美・中村優理子、2023/5/5)
https://iderumi.theletter.jp/posts/e6af9bd0-e632-11ed-b781-1381cd147fbb
5)全国ごみ少ないランキング1位の京都市、静岡県掛川市、長野県川上村 なぜ?コロナの影響も(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2022/4/5)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20220405-00289620
6)『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』山谷修作著、丸善出版
7)ゴミの分け方と出し方 袋には必ず名前を書いてください(長野県南牧村)
https://www.minamimakimura.jp/content/files/sangyoukensetsu/kankyoueisei/gomi-carender/2022gomicarender-bunbetuhouhou.pdf
8)「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円のごみ処理減らす自治体の取り組み(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021.5.30)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20210530-00240328
9)滴一滴 「燃やすしかないごみ」「埋め立てるしかないごみ」(山陽新聞朝刊、2023.1.26)
10)亀岡市指定ごみ袋が新しくなります(京都府亀岡市、2023.3.30)
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/soshiki/22/47361.html
11)「かわる/かえる」レジ袋禁止条例(京都)船頭の思い 行政動かす(愛媛新聞、2022.6.25)