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「生ごみを 臭くするのは 人間だ」1,600回生ごみ処理機を使って気づいたこと

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
台所によくある三角コーナーと、そこに投じられた野菜の切れ端(写真:イメージマート)

筆者は2017年6月から、家庭用生ごみ処理機を使い、家庭で出る生ごみを乾燥させ、乾燥前後の重量を記録している。乾燥させたものはコンポスト(堆肥)に入れるか、そのままごみとして出している。

玉ねぎの皮や、グリーンピースの鞘(さや)、野菜のかたい部分などは、生ごみとして捨てないで、密閉用袋に入れて冷蔵庫のチルド室に保管しておく。一週間ぐらい経つと量がたまってくるので、深鍋に移し、水を1リットル程度注いで1時間ほど煮出す。するとベジブロス(野菜だし)ができるので、玄米カレーやミネストローネ、リゾットなどに活用している。

玉ねぎの皮や枝豆の鞘などはベジブロスにする(筆者撮影)
玉ねぎの皮や枝豆の鞘などはベジブロスにする(筆者撮影)

ベジブロスを煮出したあとの搾りかすは、家庭用生ごみ処理機で乾燥させるか、量が多い場合はそのままコンポストに入れている。

マンション住まいだとコンポストで堆肥が作れないという話を聞くが、筆者はマンションのベランダ2カ所にコンポストを置いている。そのうち1カ所ではLFCコンポスト(1)というバッグ型のコンポストを使っている。これだと場所をとらないし、上はファスナーで閉められるので、虫の心配もない。

生ごみ乾燥前後で1,600回計測した結果は

家庭用生ごみ処理機で1,600回乾燥させ、乾燥前後で計測した結果は次の通り。

計測期間:2017年6月16日から2023年12月31日まで
乾燥前の生ごみ重量累計:616kg
乾燥後の生ごみ重量累計:197kg
減らすことのできた生ごみ重量累計:419kg
乾燥後に減った重量%の平均値:70.0%

下のグラフは、計測100回ごとの平均値を、乾燥後に残ったもの(水色)と減らせたもの(オレンジ)を示したものである。600回以降で、家庭用生ごみ処理機の機種変更をし、バージョンアップしたので、減少量(オレンジ)の割合が高くなっている。

生ごみを家庭用生ごみ処理機で乾燥した場合の残量(水色)と減った部分(オレンジ)(筆者データをもとにHitomi Kawafuchi制作)
生ごみを家庭用生ごみ処理機で乾燥した場合の残量(水色)と減った部分(オレンジ)(筆者データをもとにHitomi Kawafuchi制作)

乾かすだけで生ごみ重量の70%以上を減らすことができる

減らすことができた割合(減少率)を見ても、600回以降はコンスタントに70%以上を減らすことができている。

生ごみを家庭用生ごみ処理機で乾燥した場合の残量と減少量およびパーセンテージ(筆者データをもとにHitomi Kawafuchi制作)
生ごみを家庭用生ごみ処理機で乾燥した場合の残量と減少量およびパーセンテージ(筆者データをもとにHitomi Kawafuchi制作)

食品ロスを含む生ごみ重量の8割前後は「水」

これまで7年近く、生ごみの乾燥前後で重量を計測してきて気づいたことがいくつかある。

1)食品ロスや生ごみは80%が「水」

まず、食品ロスを含めた生ごみは、その重量の80%前後が「水」であるということだ(2)。筆者の場合、生ごみを乾燥させるだけで70%以上の重量を減らすことができた。

2)発生直後は臭いがない

生ごみ=臭い、というイメージを持つ人が多いが、それは、80%以上が水分である生ごみを放置した結果、腐らせてしまったためだ(3)。生ごみ発生直後は臭いがない。筆者は発生した生ごみを家庭用生ごみ処理機で乾燥させているが、乾燥させたものは、臭いどころか、むしろ、香ばしい香りを漂わせている。特に気温の上がる夏場には、臭いもしないし、コバエも飛んでこない。

3)ごみ出しの回数が激減する

生ごみは、水分が多く、かさばる。重くなるし、放っておくと臭くなる。でも、筆者の場合、生ごみを乾燥させたことで、ごみ出しの回数は激減した。しかも、ごみそのものが軽い。

「分ければ資源 混ぜればごみ」

という標語がある通り、生ごみを、他のごみと混ぜないで、資源としてコンポストに使えば、ごみそのものを大きく減らすことができる(4)。

4)再生可能エネルギーを活用できる

家庭用生ごみ処理機は、いわば、生ごみ専用のドライヤーだ。生ごみを入れてスイッチを押すだけで乾く。このとき電気を使うので、「環境に負担をかけるのでは」という意見があるが、筆者は2020年に、実質100%自然エネルギーのハチドリ電力(5)と契約し、再生可能エネルギーを使っている。それに加えてベランダで太陽光発電もおこない、太陽光発電で得られたエネルギーも日常的に活用している。

家庭用生ごみ処理機。この中に生ごみを入れ、スイッチを押すだけ(筆者撮影)
家庭用生ごみ処理機。この中に生ごみを入れ、スイッチを押すだけ(筆者撮影)

5)徐々に食品ロスや生ごみを減らすことができる

食品ロスや生ごみを家庭用生ごみ処理機で処理していると、たとえば冷蔵庫で野菜をだめにしてしまったり、調理しすぎで余らせて食べられなくなってしまったりすると、それらを目の当たりにするので罪悪感を感じる。「次はこうならないようにしよう」と思う。

意識が変わると行動が変わる。

行動が変わると成果に結びつく。

すなわち、食品ロスが徐々に減ってくるのだ。

6)精神的にすがすがしさを感じることができる

生ごみを出さない、できるだけ廃棄物を出さない、食べ物を無駄にしない、ということを積み重ねていくと、気持ちがすがすがしくなる。

日々を過ごす上で、これはとても大切なことだと実感している。

海外や日本の複数の自治体では生ごみを「ごみ」とせず「資源」にしている

生ごみは、乾かすだけでもごみ処理に使うエネルギーやコストを大幅に削減できる。そこから一歩進んで、生ごみを「資源」として活用できれば理想的だ。

韓国では、1996年に2.6%だった生ごみリサイクル率が、2012年には97.1%になっている(6)。ニューヨーク市では、食品ロスを含む生ごみや落ち葉、剪定枝などの有機ごみを、埋め立てずにリサイクルし始めており、生ごみリサイクル義務化へと動いている(7)。

2023年は、観測史上、最も暑い年となった。日本のメディアは「暑い」とだけ報じるものがほとんどだった(8)。あたかも自然現象だから手立てがない、どうにもしようがない、と言わんばかりだった。だが、その気候変動の要因として人間の活動があることは、世界中の研究者や専門家のデータで証明されている。そして、世界の200人近くの専門家や研究者が関わった『ドローダウン』プロジェクトでは、地球温暖化を逆転させる100の方法として、1位から100位まで示された中の3位に「食品ロスの削減」が挙げられている(9)。

同様に、生ごみは「臭い」とネガティブに評価されがちで、それはどうにも変えようがないととらえられ、生ごみのせいにされている。が、生ごみを臭くしているのは人間自身なのだ。

参考情報

1)LFCコンポスト 公式サイト

2)生ごみの水切りをしましょう! ~生ごみの80%は水分、水切りだけでも環境にやさしい~(東京都町田市、2024/3/7)

3)生ゴミやゴミ箱から発生する嫌な臭いの原因は?簡単にできる消臭対策7選(くらしとアロマ、2022/10/3)

4)分ければ資源・混ぜればごみ 食後の「生ごみ」にも関心を 10月は食品ロス削減月間(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2023/10/3)


5)ハチドリ電力 公式サイト

6)『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』(山谷修作、丸善出版)


7)ニューヨーク市で進行中 日本が学ぶべき生ごみ・有機ごみの資源化政策(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2023/11/9)

8)「死ぬほど暑い」12万年ぶりの猛暑 なぜメディアは表層的な現象しか報じないのか(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2023/8/20)

9)『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン編著、江守正多監訳、東出顕子訳、山と渓谷社)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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