都市封鎖に現実味 世界に広がる「#買い占めやめよう」「スーパーはみんなで使う冷蔵庫」新型コロナ対策

(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、世界のさまざまな国で都市封鎖(ロックダウン)や外出制限が実施されている。世界人口の約20%が自由な外出を制限されている(大使館情報などによる)。

2020年3月25日20時過ぎからは、東京都庁で小池百合子都知事の緊急記者会見が開催された。

記者会見の2日前に都知事から「ロックダウン(都市封鎖)」という言葉がすでに出ており、国や都市によって制限される範囲もまちまちであるため、会見に参加した記者からは、その言葉の定義や範囲を明確にしようとする質問が相次いだ。

都知事は、都市封鎖については明言せず、在宅勤務と週末の外出自粛を呼びかけただけだったが、記者会見の後、東京都内では、スーパーに行列ができ、商品棚から食料品が消えてしまった店もあった。

しかし必要な量を買うのでなく、過剰に買い占めることは、買いたくても買えない人を生み出し、パニック購買を引き起こしかねない。また、食べ切れないほど買い込むと、家庭内で食品ロスになってしまう可能性もある。

世界各国で「買い占めやめよう!」(#StopHoarding)

すでに都市封鎖(ロックダウン)が実施されている世界各国では、食料品や日用品の買い占めが起こり、「買い占めはやめよう(#StopHoarding)」というタグが生まれ、人々に呼びかけられている。

48時間勤務の医療従事者が涙「買い占めやめて!」

イギリスでは、ヨーク在住で48時間勤務の看護師が、食料品を買うことができず、涙ながらに「買い占めをやめて」と訴えた。

オーストラリアでは空の棚の前でたたずむ高齢者

オーストラリアでは、メルボルンのスーパー「Coles(コールス)」で、食料品が買えず、空になった棚の前でたたずむ高齢女性の姿が「かわいそう」と話題となった。

オーストラリアのあるスーパーでは、開店直後の1時間(午前7時から8時まで)を「高齢者の時間」とし、高齢者カードを持っている人がゆっくり落ち着いて買い物できるような取り計らいを始めている。

参考:

豪スーパー「高齢者の時間」を導入(Bloomberg)

米・食品ロスの専門家は「買い占めは物流に負担をかける」

米国の食品ロスの専門家で、ウイリアム・アンド・メアリー大学の運動生理学・ヘルスサイエンス学科の准教授でもあるザック・コンラッド氏は、「十分な食料があるのに、人々が大量に食料を買い占め、スーパーのインフラに負担をかけている」と主張している。

ザック氏いわく、食料を大量に買い占められると、貯蔵庫からスーパーへ運ぶためのトラックと労働力が不足してしまい、それでスーパーの棚が空っぽになってしまう。

日本でも、マスクやトイレットペーパーの品切れや品薄は、いまだ続いている。

ザック氏は、食品ロスの懸念も語っている。食材を買い占めたり大量購入したりしている人たちの中には、長期保存に備えてこまめに食材を準備したことのない人がおり、「どうやって保存するかまで考えて買う必要がある」と語っている。

生鮮食品も含め、大量の食品を買い込んだ後、安全性を保って保管し、最後まで使い切るには、下ごしらえやカット、小分け、袋詰めなどの作業をいとわない「まめさ」が必要だ。その「まめさ」がないのに、ただ大量に買い込むだけでは、食品ロスになって捨てることになりかねない。

どのような準備が必要なのか?

今回の呼びかけは「外出自粛要請」で、物流がストップしたわけではなく、食料品が品薄になったわけでもない。

食料品の買い物は、生鮮食品も含めて普段通りに行い、もし備蓄できるものを買い足すとすれば、ちょっとずつ使っては買い足しながら使っていける「ローリングストック」を考えたい。

農林水産省の緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイドには、新型コロナウイルス対策や自然災害時に備蓄できる食料品の種類と数がリスト化されており、わかりやすい。

ここでは量として一週間分が推奨されている。

少し多めに買いおき 家庭備蓄のススメ(農林水産省)

世界を見渡してみると、外出制限の期間は、ドイツで2週間、中国・武漢では2ヶ月。日本ではおよそ2週間と考えると、冷蔵庫と普段の食品倉庫に1週間分くらいあるとすれば、それに加えて1週間分のローリングストックがあれば十分ではないだろうか。

1、簡単調理 2、主食+おかず 3、食べ慣れたもの

平成26年3月に神奈川県秦野保健福祉事務所 地域食生活対策推進協議会が発行した『災害に備えた非常備蓄食の考え方』は、医療施設や高齢者施設、福祉施設等で暮らす人々のための災害時に備えた備蓄食について書かれた資料だ。いわゆる社会的弱者を考慮している点から、小さい子どもや高齢者も暮らす一般家庭も参考にできる。この資料には、備蓄食としてどのようなものを揃えたらいいかについて、3つの条件が書かれている。

加熱加工等が必要ない食品を選択する。

主食となるもの、おかずとなるものを組み合わせられるよう選択する。

平常時でも使用でき、災害時にも扱いやすく、普段から食べ慣れている食品を選択する。(食べ残しを少なくし、ゴミの増加を抑える)

出典:災害に備えた非常備蓄食の考え方
2016年4月に発生した熊本地震で、皆が食べ慣れたおにぎりを作る人たち(越智新氏撮影)
2016年4月に発生した熊本地震で、皆が食べ慣れたおにぎりを作る人たち(越智新氏撮影)

お奨めの食品カテゴリ3つ

生鮮食品は普段と同じように買いものすることを心がけ、いつもの買い物にプラスアルファをするなら、どんな食品をどのくらい買っておけばよいだろうか。

人によって、嗜好も違えば家族構成も違うし、ライフスタイルも異なる。食べる量も違う。こまめに料理をする人もいれば、まったく正反対の人もいる。だから、万人に共通する食品リストを作るのは、ほぼ不可能だ。

そんな中で、普段、調理する習慣のない人も含めて、使いやすい食品カテゴリとして、次の3つを挙げる。

1、主食

日持ちのする主食として

<簡単な調理が必要>

乾麺(そば、うどん、パスタ類)

冷凍うどん・そば

<レンジ・湯か水を注ぐ>

レトルトご飯(電子レンジ)

アルファ米(水もしくはお湯を注ぐ)

カップ麺

<そのまま飲食可能>

日持ちするハード系のパン

パンの缶詰

丼めしの缶詰

などは役に立つ。

たとえば買ってきた米を、2リットル程度の大サイズのペットボトル容器(飲料として使い終わった空容器)にじょうごを使って移し替え、冷蔵庫で保存しておくと、虫もつかないし、計量するときにも便利だ。

レトルトご飯は電子レンジで調理できるので、一人暮らしの高齢者や若者にも普段から重宝されている。3個~5個程度がまとめて売られていることが多い。

アルファ米は、水やお湯を入れるだけでご飯ができる。こちらは普段使いというより、備蓄品として使われている。最近は、五目ご飯やドライカレーなども登場した。

吉野家からは「缶飯(かんめし)」というブランドで、牛丼や豚丼などの缶詰が発売されている。ご飯と具材が両方入っているものだ。1缶あたり700円(税抜)と高いが、直射日光や高温高湿の場所を避けて適切に保管すれば、3年間日持ちするので、今回使わなくても、今後の災害備蓄食になる。

吉野家が発売している「缶飯牛丼」。1缶あたり700円と高いが、3年間日持ちする(筆者撮影)
吉野家が発売している「缶飯牛丼」。1缶あたり700円と高いが、3年間日持ちする(筆者撮影)

パンの缶詰は、栃木県那須塩原市のパン・アキモトはじめ、各社が製造・販売している。缶自体の品質保持期限を踏まえ、賞味期限は3年程度に設定していることが多い。

参考:

「9・9・9」(スリーナイン)に始めた 9(救)缶鳥プロジェクト

パンの缶詰(パン・アキモト提供)
パンの缶詰(パン・アキモト提供)

2、おかず(副食)

次に、主食のおかずとなる副食について。

<簡単調理が必要>

半調理済み食品(素材を一つ加えるだけで料理が完成するもので、保存がきく加工食品。酢豚、青椒肉絲(チンジャオロースー)、麻婆豆腐など)

豚汁の素・筑前煮の素など(パック/冷凍)

<レンジもしくは湯を注ぐだけ>

レトルト食品

インスタント味噌汁

市販の冷凍食品(おかずの他、野菜や果物含む)

<そのまま飲食可能>

缶詰

レトルト食品(温めなくても開封してそのまま食べられる5年保存可能なカレーなど)

普段から調理し慣れている人であれば、購入した生鮮食品(肉・魚・野菜・果物など)を、調理加工した上で、冷凍したり、自分で調理したものを冷凍したりして保存し、必要な時に解凍して使うことができるだろう。あるいは、買ってきた生鮮食品(野菜や果物)を干すことで乾物にして日持ちを延ばすこともできる。

魚の干物を作るための網などに野菜を切って入れておくと干し野菜ができる(筆者撮影)
魚の干物を作るための網などに野菜を切って入れておくと干し野菜ができる(筆者撮影)

長期保存食として販売されているイザメシというブランドは、ハンバーグのような、おかずになるものはもちろん、主食もラインナップされている。

イザメシのラインナップの一部。ご飯ものもあるし、ハンバーグなどのおかずもある(筆者撮影)
イザメシのラインナップの一部。ご飯ものもあるし、ハンバーグなどのおかずもある(筆者撮影)

缶詰は、真空調理しているので、外から傷などが入らない限り、理論的には半永久的に保存可能な食品だ。日本では、缶自体の品質保持期限が3年間ということで、賞味期限もそれに合わせて設定されてはいるが、東京農業大学名誉教授の徳江千代子先生など、食品保存の研究者によれば、味の濃いものやシロップ漬けなどは15年以上持つという実験結果を得ているし、それ以上の年数保管されていたものでも、開封したところ、菌が検出されなかったという結果もある。品質がどれくらい保てるかは、保存条件によって異なる。

食料をまとめて買おうとする際、炭水化物に偏りがちだが、タンパク質を補給できる、魚介類や豆類などの缶詰は重宝する。

今回、万が一余ったとしても、今後の災害備蓄食として保管しておくことができる。

2011年の東日本大震災の後、トラックに積んできた自社の支援食料をおろす筆者(関係者撮影、石巻専修大学にて)
2011年の東日本大震災の後、トラックに積んできた自社の支援食料をおろす筆者(関係者撮影、石巻専修大学にて)

3、飲料

3番目は飲料だ。

ロングライフミルク

液体ミルク

野菜ジュース

サントリーの飲料水のローリングストックを勧める告知(筆者撮影)
サントリーの飲料水のローリングストックを勧める告知(筆者撮影)

牛乳は、ロングライフのものであれば、常温保存が可能だ。

乳幼児に向いている液体ミルクも、常温保存でき、現在までに、江崎グリコ、明治、雪印メグミルクが販売を開始している。

江崎グリコが発売した液体ミルク(筆者撮影)
江崎グリコが発売した液体ミルク(筆者撮影)

ヨーロッパ、特に北欧では普及しており、普段から使い慣れておくとよいと思う。

イタリアなどヨーロッパで販売している液体ミルク(筆者撮影)
イタリアなどヨーロッパで販売している液体ミルク(筆者撮影)

普段と食生活が変わり、野菜や果物が摂れない状態が続くと、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素が不足し、口内炎や皮膚炎を起こす場合がある。そのような場合に備えて、5年間保存ができる野菜ジュースがカゴメから販売されている。1日の摂取量として推奨されている350g分の野菜(30品目分)が入っている。

カゴメは、災害時の食事が炭水化物に偏り、ビタミン・ミネラルが不足することを踏まえ、お米を炊く際に、水ではなく、野菜ジュースで炊くことを提案している。

まとめ 食料品は必要な量だけ買い、過剰な買い占めはやめよう

何をどれくらい買うかは、調理するかしないか、家族構成や嗜好によって異なる。調理する人なら生鮮食品を買ってもいいが、調理し慣れていない人は、保存でき、災害時の非常食にまわせる次のようなものにした方がいいかもしれない。

1、常温保存できる食料品

2、長期間保管が可能な食料品

3、日頃から食べ・飲み慣れている食品

賞味期限は品質が切れる日付ではないことも強調しておく。

賞味期限(黄色)と消費期限(赤)のイメージ(農林水産省HP)
賞味期限(黄色)と消費期限(赤)のイメージ(農林水産省HP)

料理研究家の土井善晴氏が提唱している「一汁一菜」を参考にし、主食とおかずが揃えばOK。あれもこれもと欲張らず、ご飯と具沢山の味噌汁でも十分、整った食事だと、ゆるやかに構えよう。

うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる

先日来、ごく一部の人によるマスクやトイレットペーパーの買い占めで、長期間にわたり、どのような弊害が起こるのか、我々は思い知った。

参考:全国のドラッグストアの店員さんに届け!欠品を責める消費者の方に非がある理由とは

相田みつをは『うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる』と書いている。

パニックにならず、賢い消費者に

自分の購買・消費行動が、社会的に弱い立場にある人にどういう影響を及ぼすかを考えることは、消費者の責務である。このことは中学校の家庭科で使われる教科書に載っていることもある。

自分や家族のライフスタイルや調理技術に合わせ、無理のないような食品購入を心がけ、くれぐれも、他の人の分がなくなってしまうほど過剰な量を買い占めることは控えたい。

最後に、拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(2016年出版、5刷)で紹介した言葉を紹介したい。

「スーパーは みんなで使う 冷蔵庫」

  1. StopHoarding

参考情報

2020年3月25日20時過ぎより 小池百合子都知事が会見

緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド(農林水産省)

9年目の3.11と新型コロナ対策を機に取り入れたい「ローリングストック法」とは?

全国のドラッグストアの店員さんに届け!欠品を責める消費者の方に非がある理由とは

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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