防災食「入れたら出す」仕組みで無駄なく活用

(写真:アフロ)

今日9月1日は防災の日。全国で防災訓練が行なわれ、メディアは「災害に備えて備蓄しましょう」と謳い、スーパーは防災の日フェアと称し、備蓄食品が大陳(大量陳列)される。だがその一方で、備蓄食品は賞味期限の手前で大量廃棄されている。

備蓄の4分の1にあたる176万食が廃棄に

毎日新聞の調査によれば、全国47都道府県と20政令都市にアンケートしたところ、県として備蓄していない神奈川・青森など5県を除く62自治体のうち、3割近い17自治体が、賞味期限を迎える備蓄食品の引き取り手を見つけられず、廃棄処分していたことが判明している。2016年3月25日の毎日新聞の報道によれば、過去5年間の総廃棄量は、全備蓄量の4分の1にあたる176万3,600食にものぼっている。

ここ5~6年以内に発生した自然災害では、発災直後、被災者の方々に充分行き渡るだけの備蓄食品がなかった。私が何度も現地に足を運ぶことになった東日本大震災でも、発災直後は、おにぎり1個を4人で分けたり、一日ソーセージ一本しか食べるものがなかったりなど、一日に摂るべき栄養素は充分に摂れていなかった。

東日本大震災時、支援物資の仕分け作業をする筆者(2011年4月)
東日本大震災時、支援物資の仕分け作業をする筆者(2011年4月)

備蓄の廃棄は「日本の年間食品ロス量」の統計値にカウントされていない

フードバンクで広報責任者を3年間務めていたとき、企業などの事業者からの備蓄食品の寄贈は多かった。早ければ、賞味期限の8ヶ月前など、一年近く前に寄贈されていた。

地下鉄の東京メトロや、郵便局の日本郵政など、事業者が自社の職員向けに備蓄していたものを、入れ替え時に、フードバンクに寄付して頂けるのは有難かった。備蓄が廃棄されずに活用されるのは喜ばしい。企業側のメリットとしては、廃棄コストの削減、NPOなどへの寄付を社会貢献の一環としてアピールすることができる点である。ただ、日本全体でみると寄付する事業者は非常に限られているので、毎日新聞の調査を考慮しても、捨てられている備蓄食品は多いと思われる。しかも、農林水産省が定期的に発表している年間の食品ロス量(最新値は621万トン、東京都民が一年間食べる量と同等)の中に、これら備蓄の廃棄は含まれていない。畑で廃棄される大量生産や規格外の農産物や、魚肉類の規格外品なども、政府が発表する数字にはカウントされていない。

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海外では賞味期限が切れても活用できるルールがある

海外では、たとえ賞味期限が過ぎても、日持ちのする食品、たとえば米国では、乾麺やシリアルなどは、フードバンクで活用することができる。欧州でも同様のルールがある。今年2月にフランスに渡航した際、農業省の女性職員は、集団給食(学校給食や社員食堂など)で余ったものも、福祉施設に寄付をしていると語っていた。農林水産省のフードバンク調査結果でも、賞味期限が過ぎても食べられるものについては、寄贈先に説明した上で活用している。

イギリス最大のフードバンクの職員たち(2017年2月、筆者撮影)
イギリス最大のフードバンクの職員たち(2017年2月、筆者撮影)

「賞味期限は目安」と言いながら、賞味期限の一年手前で備蓄を入れ替える日本

日本の行政に矛盾を感じるのは、「賞味期限は美味しさの目安。五感を使って、賞味期限が過ぎても活用し、資源を大切にしましょう」と告知物で呼びかけておきながら、その一方で、賞味期限の8ヶ月も一年も手前に入れ替え、それまで保管していたものを容赦なく廃棄してしまうことだ。つい先日の時事通信社の報道では、消費者庁のトップが、スーパーで買い物するとき、棚の奥から取る、と答えていた。消費者の手本となるべき組織のトップがこうでは、いくら啓発しても、ざるに水を注ぐようなもので、無駄ではないだろうか。

賞味期限は、品質の切れる日付ではない。美味しさの目安であり、かつ、リスクを考慮し、製造者は短めに設定するのが通例だ。消費者庁も、安全係数として「0.8以上」を推奨している。安全係数は義務ではないし、数値が決められているものではないが、たとえば10ヶ月の賞味期間の食品があれば、企業は、リスクを考慮して0.8などの数字をかけ、「8ヶ月」の賞味期間と設定し、日付を印字する。直射日光や高温高湿など、食品に負担のかかる条件を避けて正しく保管してあれば、賞味期限を過ぎても日持ちする可能性は大きいのだ。

賞味期限(黄色いライン)と消費期限(赤いライン)の違い(農林水産省HPより)
賞味期限(黄色いライン)と消費期限(赤いライン)の違い(農林水産省HPより)

「備蓄をしましょう」とインプットを呼びかけておきながら、備蓄したものを使い切りましょう、活用しましょう、というアウトプットのほうは、なおざりではないか。「入れたら出す」は健康管理の基本。仕事もインプットとアウトプットを日々繰り返していく。

2013年4月、東京都は帰宅困難者対策条例を施行した。都内の事業者は、全従業員が3日間過ごせるだけの水と食料を備蓄することが努力義務として課せられているが、これに基づけば、六本木ヒルズなどは、全従業員分の備蓄食料をそろえると2,000万円分になると全国紙で報じられていた。東京の一つのビルだけでこれだけの金額なのだから、日本全国の備蓄食品の金額を合計したら兆の単位ではないだろうか。

提言:賞味期限の長い備蓄食品は賞味期限を過ぎても活用できるルールを作る

ひとくちに「食品」といっても、生ものや生鮮食品などの日持ちしにくいものから、缶詰やレトルト食品など、賞味期限が何年間も長いものもある。缶詰は3年持つし、備蓄用食品には5年間日持ちするものもある。備蓄食品として販売されているもののほとんどは、3年から5年の賞味期間がある。したがって、日持ちしやすい食料品に関しては、賞味期限が過ぎても、生活困窮者支援などで活用できるルールを作ってはどうか。

フランスのフードバンクに備蓄されていた缶詰(2017年2月、筆者撮影)
フランスのフードバンクに備蓄されていた缶詰(2017年2月、筆者撮影)

東京都は、2017年1月5日、プレスリリースで、賞味期限が2月末のクラッカーを、都内の希望者に配付すると発表した。実際、私も1月に東京都で食品ロスの講演をしたとき、聴講者の方々にそのクラッカーが配られていた。東京都は、6月にも、クラッカーに加えてアルファ化米の賞味期限接近食品を、水素館で希望者に配ると発表した。毎日新聞の調査の時点では、東京都は活用しきれていなかったが、このような流れは望ましい。私がアドバイザーとして参加している東京都文京区のこども宅食でも、文京区の備蓄で賞味期限接近したクラッカーを、就学援助世帯・児童扶養手当を受け取っている世帯のうち、希望する世帯へ届ける食品の一部として活用する。

栃木県の株式会社パン・アキモトは、賞味期限37ヶ月のパンの缶詰を備蓄用として製造・販売している。賞味期限の切れる手前1年の時点で、再度同じ商品を購入してくださる顧客から、保管していたパンの缶詰を受け取り、最貧国に寄贈している。つまり、製品を売るだけでなく、寄贈の仕組み 救缶鳥(きゅうかんちょう)プロジェクトも一緒に顧客に提供している。

株式会社パン・アキモトの「3年経っても焼きたてのおいしさ」パンの缶詰(パン・アキモト提供)
株式会社パン・アキモトの「3年経っても焼きたてのおいしさ」パンの缶詰(パン・アキモト提供)

日本は毎年自然災害が発生する国である。したがって、備蓄は、事業者においても家庭でも不可欠である。特に数が膨大となる事業者においては、ただ備蓄することだけ(=インプット)を推奨するのではなく、災害が来ないで使わずに済んだ後の活用(アウトプット)もセットで仕組みにしたい。備蓄の一部は賞味期限が過ぎても活用できるルールを設定したい。本当は、全国の備蓄食品が一括で管理できるクラウドのようなものがあればいいのだが。家庭においてはローリングストック法(サイクル保存)を使い、少しずつ使っては買い足していき、無駄のない備蓄の活用を続けていきたい。