1.17 阪神・淡路大震災から24年 自然災害に備え 貴重な食料を食品ロスで捨てないための3つの提言

(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

1995年(平成7年)1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災から24年が経つ。

2018年は、西日本豪雨や北海道地震など、多くの自然災害に見舞われた年だった。今後も自然災害を避けることはできない。非常時に、貴重な食料を食品ロスとして無駄にせず捨てないために、どのようなことが考えられるだろうか。

いち個人の考えではあるが、主なものを3つ挙げてみたい。

1、賞味期限や消費期限よりずっと手前にある「販売期限」を賞味期限・消費期限ギリギリにする

消費者は、食品を購入するとき、賞味期限や消費期限しか見ない。だが、食品業界の関係者は、その手前に「販売期限」、さらに手前に「納入期限」があるのを知っている。

賞味期間全体を3分の1ずつ均等に分け、最初の3分の1でメーカーは販売者に納品し(納品期限)、次の3分の1で販売者は売り切る(販売期限)。納品期限や販売期限が切れたら、返品もしくは廃棄する。これが「3分の1ルール」だ。

かつて流通経済研究所が調査した結果によれば、この「3分の1ルール」により、年間1200億円以上のロスが生じていた。

法律ではない業界の商慣習である「3分の1ルール」。賞味期限の手前に存在する販売期限や納入期限により、年間1200億円以上の損失が生じている(流通経済研究所調べに基づき筆者作成)
法律ではない業界の商慣習である「3分の1ルール」。賞味期限の手前に存在する販売期限や納入期限により、年間1200億円以上の損失が生じている(流通経済研究所調べに基づき筆者作成)

2012年10月から、農林水産省や流通経済研究所、食品業界が、この「3分の1ルール」の緩和に向けて動いてきた。

参考資料:

平成29年度食品ロス削減のための商慣習検討WT(ワーキングチーム) とりまとめ(流通経済研究所)

良心的な企業は、食品ロス削減に向けた3分の1ルールの緩和のため、動いてきた。が、全国を見渡せば、全ての企業がそうしているわけではない。そこで2017年5月9日、農林水産省と経済産業省は、連名で通知(食品ロス削減に向けた加工食品の納品期限の見直しについて)を出している。

2018年7月に発生した西日本豪雨では、この「販売期限」が足かせになった。道路が寸断し、食品関連企業や運送業者が懸命に運ぼうとしても、平常時の時間通りには運べない。販売期限の切れる1時間前に食品が到着し、ほとんど売る時間がなく廃棄されたことは、「廃棄1時間前に入ってきたパン、ほとんど捨てた」食料が運ばれても西日本豪雨被災地のコンビニが嘆く理由に書いた。

前述の「3分の1ルール」は、主に加工食品など賞味期限の長いものが対象だ。だが、現状では、デイリーと呼ばれる消費期限の短い食品にも販売期限がある。コンビニで弁当やおにぎりを買おうとして、まだ消費期限まで時間があるのにレジが通らない、というのは、この「販売期限」があるためだ。企業によって設定は異なるが、筆者の取材によれば、おにぎりや弁当、サンドウィッチなどは、消費期限が切れる2時間前あるいは3時間前に販売期限が切れる。

西日本豪雨被災地のコンビニでは販売期限が切れた食品が大量に廃棄された(被災地のコンビニオーナー提供)
西日本豪雨被災地のコンビニでは販売期限が切れた食品が大量に廃棄された(被災地のコンビニオーナー提供)

非常時だけこのルールを緩和する、と言っても、店舗で働いているのはパートやアルバイトなど非正規雇用の職員だ。とっさの判断で臨機応変に対応を、と求めるのは酷だろう。

非常時のみならず、平常時にも、この「販売期限」を緩和していきたい。

京都市は販売期限を賞味期限・消費期限ギリギリまで延ばす社会実験をスーパーと実施 ロスが減り売り上げ増

京都市は、市内のスーパー、平和堂とイズミヤと協力し、販売期限を賞味期限・消費期限ギリギリまで延長する社会実験を実施した。

その結果、廃棄した点数は対前年比(前年の同時期と比べて)約10%削減し、5店舗合計の売り上げ金額は5,084万5千円から5,376万円へと約5.7%増加した。

小売店にとって、廃棄コストが減り、売り上げが上がるとなれば、メリットがあるだろう。全国の小売店には、京都市の実証実験の結果を参考に、販売期限をできるだけ緩和し、賞味期限・消費期限ギリギリまで販売するようにして頂きたい。

2、非常時には「おにぎりの海苔無し」「幕の内弁当の一品おかず無し」を許容するなど臨機応変な対応を

2018年9月に発生した北海道地震では、停電で停止したレジと車のバッテリーを繋ぎ、すぐに営業を開始したセイコーマートの対応が賞賛された。

セイコーマートの運営会社であるセコマの丸谷智保社長は、当時の対応について、

もう一つ好評だったのは、多くの店舗で、温かいおにぎりを提供できたことです。セイコーマートには店内で調理する『ホットシェフ』というサービスがあるのですが、11年の東日本大震災をきっかけに、ガス炊飯器を備えた店を増やしていました。そのため停電中でもごはんを炊けたのです。カツ丼などの提供をやめ、たくさん作れる塩むすびに切り替えました

出典:セイコーマートの運営会社セコマの丸谷智保社長の発言

と語っている。

普段は海苔を巻いているおにぎりも、海苔が無ければ塩むすびに、弁当の一品がなくてもよしとする臨機応変な対応が素晴らしかった。停電時に備えたマニュアルは、暴風雪被害や2011年の東日本大震災、2016年の台風被害などのたびに見直しを重ねてきたという(2018年9月17日付毎日新聞)。

食品安全教育研究所代表の河岸宏和氏は、

食品工場も日常的に、地震があって停電した時に、製品、半製品を含めて、どう取り扱ったらいいかを自治体と打ち合わせておくべきです。

電気が復旧した時点でも、炊飯などはできるがラベル表示ができない、パンはあるが印字できないといったトラブルが発生する可能性があります。

「商品に手書きのアレルゲン表示、消費期限表示をメモ書きでも書いて避難所に納品してもいい」「食中毒を起こさない管理を行えばいい」といったシミュレーションを行っていれば、食べるものがないという事態は防げたと思います。

出典:河岸宏和氏の発言 ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2018/09/post_24885.html Copyright まるアール  Business Journal All Rights Reserved.

と語っている。北海道地震では、弁当のうちわずか一品が無いために出荷できず、結局、それ以外の全部を廃棄せざるを得なかった会社の社長が泣いていた、と報道されていた。非常時は、完璧やマニュアル通りを求めるのでなく、「あるもので賄う」という姿勢で臨んで欲しい。

3、備蓄はパン・アキモト方式で循環させる

備蓄食料の多くが捨てられている。毎日新聞の調査によれば、62自治体のうち、3割近い17自治体が、2010年から2014年までの5年間で176万食にのぼる備蓄食料を廃棄していたということがわかっている。しかもこの備蓄の廃棄は、日本の食品ロスの統計値「646万トン/年」にはカウントされていない。

「備蓄を入れたらおしまい」ではなく、「入れたら出す」で、きちんと使い切ることを原則としたい。

栃木県那須塩原市のパン・アキモトは、救缶鳥(キュウカンチョウ)プロジェクトで、パンの缶詰を無駄にせず、賞味期限が迫ったものを引き取り、世界の戦闘地や被災地へ送って役立てている。

パン・アキモトの「救缶鳥」プロジェクト(パン・アキモト提供)
パン・アキモトの「救缶鳥」プロジェクト(パン・アキモト提供)

以上、3つの提言を挙げてみた。

今後も避けることはできない自然災害。命の綱である食料が不足する非常時にどう対応し、少しでも捨てられる食品を少なくできるか。

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から24年のこの機会に考えたい。

阪神・淡路大震災で犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

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