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恵方巻廃棄対策としてスーパー・コンビニが回答する「予約販売」は食品ロス削減目的ではない その理由とは

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

2019年1月、農林水産省が小売の業界団体に対し、恵方巻きは需要に見合う量を販売するようにと通知を出した。毎年話題となる恵方巻きの大量廃棄を少しでも減らすのが目的である。

これに対し、一部企業は次のように「予約販売の強化」を対策として挙げた、と報じられている。

農水省の呼びかけを受け、流通大手の各社は「予約の強化」などの対策を挙げる。

出典:2019年1月16日付 朝日新聞 恵方巻き大量廃棄の悲劇防げるか 国が呼びかける事態に

大手小売店は「店内加工で売れ行きを見ながら生産調整している」(イオンリテール)、「予約販売を強化し、無理な店頭販売をしないよう加盟店に指導している」(ローソン)など、売れ残り削減に向けた取り組みを一部で開始。

出典:2019年1月11日付 時事通信「恵方巻 適量販売を 農水省 小売業界に通知 売れ残り廃棄の削減目指す」

売れ残りが大量に破棄される問題で、農林水産省が需要に見合った販売をするよう業界団体に要請したのを受け、各社は予約販売や需要予測を強化する取り組みを進めている。

出典:2019年1月15日付 共同通信 「料理店監修、手軽な長さも 恵方巻き商戦、本格化」

ただ、流通各社が予約販売を行う主な目的は、食品ロス削減のためではない。

2017年のコンビニ・スーパーへの取材によれば、予約は「集客目的」「売上高の土台固め」「ついで買い促進」

筆者は、2017年1月、大手コンビニ3社とスーパー1社に取材した。「恵方巻きの予約販売を進める理由は食品ロス削減のためか」という質問を各社に問い合わせた。

答えは4社とも「NO」だった。

「これは売れ残りの食品ロス削減のための施策ではないか」――。そう思った私の期待はすぐ打ち砕かれました。

実際に、コンビニ各社のお客様相談室を通して担当部署の方に伺ったところ、どの企業の答えも概ね「予約販売はロス削減のためではない」とのことでした。あるスーパーの方にも同じ質問をしたところ、同様の答えでした。

そのスーパーでは、恵方巻全体の売上高のうち、予約販売が10%を占めるそうです。毎年の「催事として集客を目的とする」ほか、「売上高のベースを固めておきたい」、「お客様の来店理由にもなり、“ついで買い”も見込めるから」とのことでした。コンビニ各社の予約販売の目的もほぼ同様のようでした。

出典:コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情(ダイヤモンドオンライン)

「予約販売」と言われると、「食品ロスを減らすため」と思ってしまったのだが、実際は違った。事前に一定の売り上げを確保しておくことや、来店時の「ついで買い」を見込むこと、催事としての集客、などが目的だったのだ。

「予約強化」は「予約限定」ではなく「当日販売量の削減」とは限らない

Twitterでは、恵方巻きの大量廃棄の問題が話題になると、「予約にすればいい」という意見がたくさん出される。実際、コンビニの中でも、セイコーマートは恵方巻きの予約販売を、店頭およびインターネットで行っている(恵方巻き予約チラシ)。

筆者も含めて一般消費者が「予約」と言われて頭に描くのは、おせちのような、「事前の予約販売」のような形だろう。おせちは元旦当日に店頭で「へい、いらっしゃい!」と販売したりはしない。元旦より前に予約を受け付けた分だけを売る。高額のおせちは基本的に「予約限定販売」といった形が多い。

でも、今回の農林水産省を受けて、流通各社がマスメディアの取材に答えている恵方巻きの「予約の強化」は、「予約限定」ではない。当日売りもある。

大手流通各社は「前年実績を上回る販売を目指す」姿勢を変えていない

予約を強化するから、その分、当日販売量を少なくする、というのならわかる。でも、各社「当日販売量を減らす」とは明言していない。むしろ、前の年を上回る販売量を目指すと答えている。

2019年1月16日付の朝日新聞の記事「恵方巻き大量廃棄の悲劇防げるか 国が呼びかける事態」では、

各社とも、前年実績を上回る販売を目指す姿勢は変えておらず、食品ロスをどの程度減らせるかは未知数だ。

出典:2019年1月16日付 朝日新聞有料記事

と報じている。

前年実績を上回る販売数を達成するためには、恵方巻の売り上げ全体の10%とスーパーが答える「予約販売」に依存するのは難しいだろう。対前年比増を達成するためには、売り上げの90%を占める「当日販売」が勝負だ。となれば、あえてそれを減らす戦略を取るだろうか。

国から通知を出され取材を受ければ社として何か見解をのべる必要があるから

恵方巻き大量廃棄を回避するため、国から小売業に対し、通知を出された。となれば、小売各社は、社として何らかの対策を述べる必要がある。取材が来れば、「うちはこうして減らします」と答えなければならない。その一つが「予約の強化」なのだろう。

だが、前述の通り、これは「予約限定」100%にする、というわけではなく、当日販売を減らすわけでもない。兵庫県のヤマダストアーは2018年「前年と同じ量を作る」と宣言したが、朝日新聞の記事では大手流通各社とも「前年実績を上回る販売を目指す姿勢」を変えてはいない。

「うち(の会社)は、恵方巻きの大量廃棄を防ぐため、予約の強化をします」と言われて「へー」と鵜呑みにして納得していては、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られる。 予約販売は、必ずしも「食品ロス削減」のためとは限らないからだ。

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注:タイトル文字数制限の関係で、本文中の「恵方巻き」の表記を、タイトルでは「恵方巻」とした。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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