コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情

(ペイレスイメージズ/アフロ)

節分にはSNSで大量に売れ残った恵方巻が話題に

2016年2月3日、フランスで、大手スーパーの売れ残り食品廃棄禁止という世界初の法律が成立してから2年が経過した。フランスで法律が成立した日は、奇しくも「節分の日」。TwitterなどのSNS上では、深夜になっても大量にコンビニエンスストアの店頭で売れ残る恵方巻の写真が投稿され、フランスの動きと対比された。なぜなら、深夜に大量に売れ残った恵方巻は、生モノであるため、やがて廃棄処分されるしかないと容易に想像できるからだ。実際、大量に廃棄された恵方巻の写真も多く投稿されていた。

今年も「節分の日」を迎える。各百貨店やスーパー、コンビニの店頭には、恵方巻が並ぶことだろう。恵方巻の由来は諸説あるが、その年の恵方(干支にちなんで良いとされる方角)を向いて無言で丸かぶりすると幸運が巡る、などとされている。

買い物に行った近所のスーパーでは恵方巻の予約チラシが置かれていた。コンビニではどうなのか?

首都圏のコンビニ10店舗をまわってみたところ、いずれもポスターやチラシで予約販売が告知されていた。(調査日:2018年1月25~29日、調査店舗のうち告知があった店舗:ファミリーマート目黒三田通り店、ファミリーマート川口駅東口店、セブン-イレブン川口駅北口店、ローソン川口栄町店、セブン-イレブン川口幸町店、ファミリーマート川口幸町二丁目店、ファミリーマート川口栄町三丁目店、ファミリーマート川口樹モール店、セブン-イレブン川口東口店、ローソン川口駅前店)

期待はすぐに打ち砕かれた

「これは売れ残りの食品ロス削減のための施策ではないか」――。そう思った私の期待はすぐ打ち砕かれた。

コンビニ各社のお客様相談室を通して担当部署の方に伺ったところ、どの企業の答えも概ね「予約販売はロス削減のためではない」とのことだった。あるスーパーの方にも同じ質問をしたところ、同様の答えだった。

そのスーパーでは、恵方巻全体の売上高のうち、予約販売が10%を占めるとのこと。毎年の「催事として集客を目的とする」ほか、「売上高のベースを固めておきたい」、「お客様の来店理由にもなり、“ついで買い”も見込めるから」とのことだった。コンビニ各社の予約販売の目的もほぼ同様のようである。

コンビニの予約販売をてっきり「食品ロス対策だろう」と早合点してしまったのには、理由がある。

コンビニの大量廃棄が取り沙汰されるが、実はデータを確認すると、コンビニ各社の食品廃棄物発生量は、10年前と比べると減少傾向にある。

例えば、セブン-イレブン・ジャパンでは、長期保存できるパウチ総菜を販売している。総菜といえば日持ちがしない食品の一つだが、食品包装の技術や製造技術の改良により、賞味期限延長が可能となったものだ。食品業界の商慣習である「3分の1ルール」(賞味期間全体を均等に3で割り、最初の3分の1を納品期限、次の3分の1を販売期限とするもの。参照:卵は常温で2ヵ月保つ!大量の食品廃棄を生む賞味期限のウソ)についても、ロス削減に向けて緩和したと公式サイトにある。

「3分の1ルール」のうち、菓子・飲料に関しては、平成26年度にはイトーヨーカ堂、東急ストア、ユニー、セブン-イレブン・ジャパン、サークルKサンクスで、平成27年度にはファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ、スリーエフ、イオンリテール、ポプラでも緩和されている(出典:農林水産省食料産業局発表資料)。

ローソンに連絡した際、広報の方がセミオート発注システムについて教えてくださった。需要と供給の差(=廃棄ロス)を少なくする取り組みで、2015年秋に導入したとのこと。このシステムでは、各店舗の直近の販売実績、曜日、天候、気温、競合環境、カード会員の購買データなど、約100項目の条件をベースに、どれくらい売れるかという販売予測を立て、店舗が発注するとよいと考えられる商品数を自動算出し、推奨している。この推奨値を元に、最終的には店舗オーナーが決めているとのこと。廃棄ロスだけではなく、商品を売り逃してしまうロス=機会ロス・販売チャンスロスも最小限にとどめることを目的としている。

このように、コンビニ各社は、食品廃棄物の削減には前向きに取り組んでいる。それでは、なぜ毎年、恵方巻の大量廃棄が取り沙汰されるのだろうか。

スーパーよりもコンビニの方がロスを減らしづらい

複数の食品小売企業の15名に“個人的見解”を伺うことができた。まず、恵方巻については、スーパーとコンビニと「調理の面での差」がある。スーパーの場合、店舗内での調理が可能だ。今回伺った企業では、「店で巻いて作り値引きして売りつくす」、「恵方巻の消費期限を8時間延長」、「閉店前の段階で残数を数え担当者へ連絡してロスをなくした」、「消化率の悪い店から消化率の良い店へと振り替えした」等の答えが返ってきた。

かたやコンビニの場合、唐揚げなどの一部商品では店内調理はあるものの、恵方巻は店内で巻いているわけではない。したがって、スーパーのように、販売在庫や客の入りを見ながらの製造調整は難しく、また基本的に店舗の裁量で値下げができないため、恵方巻に関しては「コンビニの方がロスを減らしづらいのでは」とのことだった。

ついでに、スーパーの方々に、「なぜ食品廃棄がなくならないのか」と伺ったところ、「品切れ=罪悪・容認されない・恐怖・販売チャンスロス」、「過剰在庫にどれだけ余分なコストがかかっているのか社員が把握していない」、「ある程度のボリュームがないと売り場が映えない」等が挙げられた。ちなみに、品切れなどの機会損失については、むしろスーパーよりコンビニの方がより厳格でシビアなのが、流通業界の“常識”ということ。ということは、コンビニでも「食品廃棄の根絶は難しい」と、容易に想像できる。

では、どうしたらいいのだろうか。

重ねて伺ったところ、「法律でペナルティを課す」、「アウトレットで消費期限間近のものを販売する」といった意見のほか、消費者(顧客)側に対しても「賞味期限や消費期限についてきちんと理解し、食べられるのに些細な理由で嫌悪することを控えてほしい」といった要望があった。

個人の気持ちとしては「もったいない」

さらに踏み込んで、「仕事上で食べ物を捨てたときに抱いた感情」についても聞いてみた。「後ろ向きの作業で無駄」「疲れる」「苦痛」「もったいない」「自分の力量にがっくり」「世の中おかしい」「貧困国の子どもの顔が浮かんで申し訳ない」「産まれてきた牛に申し訳ない」等、残念さや罪悪感をあらわす“素のままの気持ち”が伝わってきた。

フランスの法律が成立してから「日本でも同様の法律を」という声を聴く。それも一案だ。ただ、余ったものを捨てずに寄付する以前に、「作り過ぎない」「売り過ぎない」「買い過ぎない」といった、「適度な製造・販売・消費」が求められていると思う。

それは2015年秋の国連サミットで決められた「持続可能な開発目標」(SDGs、Sustainable Development Goals)の17のゴールのうち、12番目でも謳われている。もう大量生産・大量消費の時代ではないだろう。先進国として、環境配慮しながらのビジネスが必須と考える。

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより引用)
SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより引用)

個人としてなら正常に判断できる。でも、組織としては感覚が麻痺して異常な行動(=大量廃棄)をとってしまっている。それはなぜなのだろう。

かつて筆者は、食品メーカーの広報責任者として務めており、個人で思ったことがあっても、会社を代表する立場としては口を閉ざす場面が多くあった。会社を辞めて独立した今思うのは、「自分の本心や五感」を殺して働いていた部分があった、ということだ。

それは“組織人”として働く人の多い日本社会全体にいえるのではないだろうか。個として働くのでなく、組織に所属して働くと、「組織>個人(個人より組織の意向で動く)」の関係式ができる。

組織人は、組織から給与をもらう。生活費である給与をくれる組織の意向を忖度(そんたく)し、歯向かわないのは、組織に雇われている人の多くの姿勢だろう。不倫を報じる週刊誌も、コンビニについては報じない。なぜなら週刊誌は売上の多くをコンビニに依存しており、失うと痛手だからだ。自分の食い扶持をくれるところに楯突かないのは、組織に勤める人全員に言えることなのではないか。

組織人は、給与だけでなく、出張費などの経費も所属組織からもらう。自分の懐は痛まない。必然的に、当事者意識は希薄になるのではないだろうか。個人として、食料廃棄は「もったいない」と感じても、組織としては仕方がないし、自分がそのコストを払う訳でもないし、所詮は“他人ごと”なのかもしれない。

コンビニ本社は各店舗に“ノルマ”を課しており、アルバイト店員らに恵方巻を無理矢理買わせていた事例が多々あったと、NHKニュースで報道されていた(2017年1月26日NHKニュース)。ドキュメンタリー映画『コンビニの秘密 便利で快適な暮らしの裏で』でも、コンビニのアルバイトに課せられたノルマについて、経験者が語っている。

本来、恵方巻は「幸運を招く」という謳い文句なのに、それでも売れ残って廃棄するのなら「運を開く」どころか、逆に「運気を落とす」、「バチがあたってしまう」のではないだろうか。

ダイヤモンド・オンライン コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情 2017.2.3より一部加筆・修正の上、転載

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