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恵方巻チラシ30枚167個を解析してみた 最も使われている具材ベスト10

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
恵方巻167個が掲載された28枚のチラシ(筆者撮影)

2月3日は節分だ。2018年の恵方巻は、ご飯ものだけではなく、生クリームを使ったロールケーキなど、デザートタイプもチラシに載っている。金箔で巻いた、1万円以上する恵方巻も登場している。

2017年は、恵方巻の大量廃棄が報道され、ソーシャルメディアで話題となった。2月3日の節分当日だけでなく、その前の週にも廃棄が出るという。予約販売や新聞の折り込みチラシに載せるために作られた恵方巻は、撮影が終われば廃棄される。商談の時にも、どれを採用するか、試食用に作られるものも同様だろう。

関係者が語る「節分当日だけでなく、恵方巻の試作品の廃棄が多い」

恵方巻の売れ残りをこれまで処理してきた関係者によれば、節分当日以降に廃棄が出るのはもちろんだが、実は、当日より前に作られる恵方巻の試作品の廃棄も、それに匹敵するくらい多いという。

しかし、2018年は、2017年とは様相が異なっている。恵方巻の売れ残りなどを処理する工場に、恵方巻が届いていないようなのだ。関係者は「昨年の反省なのか、それとも、たまたまなのか・・」と言う。ある報道関係者は「昨年のことがあるので、おそらく(販売会社から)箝口令(かんこうれい)が敷かれているのではないでしょうか」「報道されないように、別のところで処分しているのか、それとも関係者で食べてしまったのか・・・」と語る。

ただ、2018年も、節分当日に備えて恵方巻が大量に作られていることは確かだ。複数の食品工場では、節分の一週間以上前の2018年1月下旬に、恵方巻を作るための短期アルバイトを募集開始している。2月1日と2日限定、2月2日限定といったものだ。「練習日があるので未経験者でも安心」と言った謳い文句もある。失敗しても、作り直しができるのでOKという意味だろうか。「サクッと稼げる」などと書いたものもある。

スーパー勤務者291名に聞いた結果では、チラシ制作が終わってから捨てるもの、商談のために使ったサンプルの廃棄も多いという結果が出ている。

各社、恵方巻の予約販売のためのチラシを配布したり、新聞の折り込みチラシに恵方巻を載せたりしているのは2017年と変わらない。そこで、集めた恵方巻のチラシを調べ、どんなものが使われているのか調べてみることにした。

恵方巻の掲載されているチラシ30枚。コンビニ、スーパー、百貨店、ショッピングモール、寿司店など。企業名や店名などは伏せてある(筆者撮影)
恵方巻の掲載されているチラシ30枚。コンビニ、スーパー、百貨店、ショッピングモール、寿司店など。企業名や店名などは伏せてある(筆者撮影)

調査期間:2018年1月24日〜2月2日

チラシ枚数:合計30枚

チラシの出稿元:スーパーマーケット、ショッピングモール、コンビニエンスストア、寿司店、惣菜店など

掲載されている恵方巻の個数:合計167個(トルティーヤやロールケーキなどは除いた)

掲載されている恵方巻の合計販売金額:90,909円(最高金額:3,240円、平均金額544円/個)

使われている具材を1個ずつ数えてみた。チラシの写真の横に、使われている主な具材を明記してあるものも多かった。記載されていないものについては写真そのものから読み取り、わからないものについては含めなかった。

恵方巻に使われている具材ベスト10

1、海苔 164

2、卵 100

3、きゅうり 90

4、マグロ 61

5、海老 31

6、サーモン 30

7、かんぴょう 19

8、いくら・大葉(しそ)・おぼろ(でんぶ) それぞれ16

9、とびっこ・穴子 それぞれ15

10、イカ・椎茸 それぞれ14

恵方巻に使われている具材 11位以下

11、カニカマ 12

12、帆立・たくあん・リーフレタス それぞれ9

13、アボカド 8

14、数の子・焼肉・ヒレカツ それぞれ7

15、カニ・(クリーム)チーズ それぞれ6

16、ツナ・人参 それぞれ4

17、ローストビーフ・ごぼう・高野豆腐 それぞれ3

18、ブリ・ガリ(生姜)・白身魚・小松菜・パプリカ・ハム・玉ねぎ

以上

以下の具材は、使われているのがすべて1回のみであった。

牛肉・山形牛・アンガス牛・神戸牛・生ハム・ネギ・シメサバ・ポテトサラダ・三つ葉・サンチュ・イワシ塩焼き・梅肉・インゲン・昆布・うに・大根・トレビス・カーボロネロ・グリーンリーフ・ドライトマト・菜の花・水菜・ルッコラ・人参の明太子和え・大豆もやし・キムチ・おろしりんご入りツナマヨネーズ・蒸し鶏ほぐし・鶏ムネ肉・卵サラダ・コーン

冬に夏野菜、生もの、インスタ映え

これらの具材を見て感じるのは、まず、夏野菜のきゅうりが頻出していることだ。きゅうりの旬は6月から8月にかけてである。冬にこれだけ使われるのは、きゅうりや、きゅうりを育てる農家にとって負担ではないのだろうか。

次に、当然だが、生ものや海鮮が多く使われており、日持ちがしにくいということだ。マグロ、海老、サーモン、いくら、穴子、イカ、帆立、数の子、とびっこ(トビウオの卵を塩漬けにしたもの)など。

そして、「インスタ映え」と言われるように、チラシの多くが見栄えの良さを誇っているように見えた。ここまで美しい姿に仕上げるためには、一回作っただけでは到達しないのではないか。

恵方巻=刺身と思っていたが、今回のチラシを見てみると、焼肉やアンガス牛、神戸牛、山形牛など、牛肉も案外使われており、折り込みチラシでも、牛肉との提案をしているものが目立った。

同じ日に同じ物を一斉に食べることによる生き物への負荷

具材で2番目に使われているのは卵だ。クリスマスの時期に備えて冷凍しておくクリスマスケーキの(土台の)ように、卵焼きも、前もって出荷の増えるこの時期に作っておくのだろう。とはいえ、卵は、ニワトリから生まれる物だ。ニワトリは、1個の卵を24時間以上かけて産み出している。

1位の海苔は、以前に比べて養殖技術やバイオテクノロジーなどで、品質が安定したものが供給されるようになった。とはいえ、海から頂いている食べ物には変わりない。

ある小売店の方が、1月に開催されたシンポジウムの挨拶で「年末になると、毎年、卵や三つ葉の需要が一気に増える。もう少し、一年を通して、ならして(平均して)食べてくれないかと思う」と話していた。みんなが食べるから、世間で売っているからと言って同じ時期に買って食べなくても、食べたくなった時に味わって食べれば、それこそが幸せ(=福を呼ぶ)なのではないか。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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