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ますます結婚がきつくなる「地方の男女マッチング不全」20年間で大変化した20代の男女比格差

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

若者の人口減

現在、20代の若者は、1990年代半ばから2000年代前半にかけて生まれた層である。本来、1970年代に生まれた第二次ベビーブーム世代の子として、第三次ベビーブーム世代となるはずだったが、それは起きなかった。そのため、2022年時点での20代の人口は、2000年時点と比べて▲30%である。

20代の総人口そのものが3割も減っているのだから、当然彼ら20代が2000年時点と同等の既婚率だったとしても、自動的に3割既婚人口は減る。既婚人口が減れば、それを母数とする出生数も減る。そもそも、2000年と2022年とでは若者の未婚率もあがっている。

総人口の減少と未婚率の上昇による既婚人口減少というダブルパンチで、出生数が激減するのは当然の成り行きなのである。これが私のいう「少母化」というものだ。

前回の記事(参照→日本で出生率1.0を切る可能性/少子化先進国の韓国で起きていることは、やがて日本でも起き得る)で示した通り、この20年間で20代の出生率はジワジワと低下している。若者が20代のうちに結婚や出産に踏み切れない要因のうち、経済的要因については繰り返し当連載で書いてきたが、それだけではない。エリアごとの男女バランスが大きく変わっている。

男女人口の違い

高齢者も含めた全体での男女比では女性の方が多い。それは女性の方が長寿だからである。そもそも、男女の出生性比は1.05で男児の方が多い。乳幼児死亡率が限りなくゼロに近い現代では、この生まれたままの性比で20代まで進む。

しかし、20代で若者の人口大移動が起きる。

日本の人口移動はほぼ20代によって構成されている。20代以外、県域をまたぐような大きな人口移動は起きない。その大部分が、進学や就職などで東京をはじめとする大都会への流出である。東日本は東京へ、西日本は大阪、福岡へと集中することは以前書いた(参照→各都道府県別20代男女の東京流出率でわかる「関西男と東北女の行く道」)通りだが、問題は地方から移動するのが女性の方が多いということである。

この20代での人口移動によって、出生性比を超える男女の人口差が生じてくる。いわゆる「男余り・女余り」の偏り現象である。

2000-2022年の比較

配偶関係別の統計は5年おきの国勢調査でしかわからないので、20代総人口での男女比をエリア毎に確認していこう。

まず、2000年時点での20代男女比は以下の通りである。

全国的に、男余りが多いが、それでも女性が多いエリアが19もあった。大きく分けて、北海道を除けば、男余りの東日本と女余りの西日本という構図だ。特に、九州はすべて女性の方が多い。男性が10%以上多いのは、東京、神奈川、千葉の首都圏のみだった。

それが、2022年になると一変する。

東日本の男余り状況はさらに進むが、2000年にトップ3だった東京、神奈川、千葉は、逆に女性の流入が増え、10%以上男余りだった状態からやや補正されている。そのかわりに、栃木・茨城・福島の3県が15%以上も男が多いエリアとなってしまった。同様に、石川、富山、福井の北陸3県も15%以上である。

かつて、女余りだった九州も福岡と鹿児島を除いて男余りに転じた。

2000年から2022年を通じて、女余りを維持しているのは、福岡、鹿児島、兵庫、奈良の4県のみで、新たに大阪が加わった。大阪の20代女性が増えているのは、それこそ西日本中の女性の流入によるものだろう。

写真:アフロ

地方のマッチング不全

女性に限らず、20代の若者が移動するのは、そこに魅力的な仕事があるからである。裏を返せば、生まれ育った地元にそれがないことになる。地方から都会へ女性が流出すれば、地元は男余りにならざるを得ない。

ただでさえ、各年齢5%多い中で、地元でマッチングをするというのは徐々に困難になっていく。特に、東北地方や北陸など雪国に顕著で、それらの婚姻率の低下が著しいのはそういう要因による。

とはいえ、夢と希望を抱いて都会へと向かう若者を無理やり引き留めることはできない。さらに20年後には、東京・大阪・福岡以外は真っ青になっているかもしれない。

一方、女性が集中する大都会で婚姻増が進めばいいのではないかという話もあるが、皮肉にも東京など大都会ほど婚姻率も高いが、未婚率も高いという状況になる。

魅力的な仕事を求めて上京したがゆえに、仕事に邁進し、経済的にも自立できるようになると、気付けば「結婚する必要あるんだっけ?」となってしまう。

また、婚活を始めたとしても、運よく経済同類縁で出会えれば、パワーカップルとしてタワマン住まいの生活が可能だが、なかなかそううまくはいかない。それなりの収入を自分で稼いでいる以上、それと同等以上を求めるがゆえに、今度は「頭数は足りていても、適当な相手がいない」という状況に陥る。

地方に残っても、大都会に出ても、結局は未婚化が進むジレンマがそこにはある。

江戸時代にあった再現

この状況は、かつての日本の歴史にもあった再現である。

江戸時代、江戸は日本中から一旗あげようと農家の次男坊・三男坊の男子が集結した。結果、江戸は女性の倍以上の男余りになってしまった。そもそも絶対数としてマッチング対象が存在しない中、生涯未婚のまま一生を終える江戸の男たちが多かった。歴史人口学的にはそれを「江戸のアリ地獄」という。

今、起きているのは、「東京のアリ地獄」なのかもしれない。

提供:アフロ

ちなみに、念のため繰り返すがこれは総人口男女比であって未婚の男女比ではない、少なくとも未婚男女比で見た場合、47都道府県全てが男余りである。それは、離婚再婚を繰り返す「時間差一夫多妻男」のせいである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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