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NHK「ネットのみ」視聴でも受信料支払いを義務化へ 放送法改正に向けた経緯 #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:YUTAKA/アフロ)

NHKにネット同時配信や見逃し配信などを義務づける放送法の改正案が衆議院総務委員会で可決されました。5月上旬に本会議で可決され、参議院に送られたあと、会期中に成立する見込みです。この法案は受信契約の締結義務の対象を「ネットのみ」視聴にまで広げるものです。NHKはその受信料を地上契約と同水準とする方向で検討しています。改正に向けた経緯について、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

▼放送法はNHKの受信が可能なテレビなどの設置者に受信契約の締結を義務づけており、憲法違反ではないというのが最高裁の判例

最高裁がNHK受信契約の義務規定を初めて「合憲」と判断 その理由と今後の受信料徴収に与える影響(Yahoo!ニュース エキスパート 前田恒彦)

▼しかし、チューナーレステレビなどNHKを受信できない機器であれば受信契約の締結義務がなく、受信料を支払う必要なし

ニトリが発売して話題の「チューナーレステレビ」…「NHK受信料」の支払い義務は本当に“ない”のか? 【弁護士に聞く】(THE GOLD ONLINE)

▼ネット社会が広がる中、テレビを持たない人にも番組を配信し、受信料を徴収できるようにすることがNHKの悲願だった

「チューナーレステレビあります?」…安定財源の要だった受信料制度がNHKの首を絞めだす皮肉(読売新聞オンライン)

▼そこで、放送法の改正により、スマホやPCなどを含めて「ネットのみ」視聴を開始した人にも受信契約の締結義務を課すことにした

放送法改正案が閣議決定。スマホ視聴でNHK受信契約対象に(AV Watch)


エキスパートの補足・見解

NHKは「ネットのみ」視聴に関する受信契約の内容について、具体的な検討を進めています。現時点で判明しているポイントを挙げると、次のとおりです。

(1) すでにテレビを設置し、受信契約を締結していれば、新たにネット配信を視聴しても追加の費用負担はない。

(2) スマホやPCなどを保有しているだけなら、受信契約を締結する必要はない。

(3) NHKの配信アプリをインストールし、規約に同意してユーザー登録し、試用期間を超えて配信を受けたら、受信契約の締結義務が生じる。

解約が容易だとNHKにとって確実な財源となりにくいので、解約方法などがどのような形で契約条項に盛り込まれるのかも重要となるでしょう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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