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婚活系の出会いと職場での出会い「結婚できた男の年収差は100万円以上」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

34歳までに8割結婚していた時代

国勢調査によれば、1980年男性30-34歳の未婚率は22%であった。8割近くが34歳までに初婚していたことになる。それが、2020年には52%へと過半数を超えた。半分以上の男性が34歳までに結婚できていないことになる。

なお、女性の場合は、は1980年の30-34歳未婚率は9%。9割以上が34歳までに初婚をしていた。それが2020年には38%へなっている。

34歳までに男性の8割が初婚できたのは、ひとえに結婚に対する「社会的なお膳立て」があったからに他ならない。

1980年代初頭でも、いわゆる伝統的な「見合い結婚」比率は3割もあった。残り7割もすべてが自力で恋愛結婚をしていたわけではなく、減りつつあった見合い結婚の代替としての「職場結婚」が機能していた。それが3割で、見合い結婚と合わせて6割の結婚が、何かしらの周囲のお膳立てによって支えられていた。

当時、結婚をすることそれ自体は難しいものではなかった。「中学を出れば高校に行く」くらいの感覚で若者は結婚していった。だからこその皆婚だったわけである。

経済環境も現代のようにそれほど重視されていなかった。

民間給与実態調査によれば、1980年の30-34歳男性平均給与は330万円である。その収入で8割が結婚していたことになる。もちろん、今とは物価も違うが、当時の全体の平均的な家族世帯収入も400万円程度で、今よりも圧倒的に社会保険料などが少なく(ボーナスからは社保料は引かれなかった)、可処分所得が多かったことも大きい。

そうした中間層の収入でも十分やっていけるという空気感があったことも、ひとつの「結婚の経済的お膳立て」である。

2022年就業構造基本調査によれば、30-34歳で1980年の未婚率と同様22%になる年収は700万円以上である。これはこの年代の中間層の年収以上であり、40年前と今とでは「結婚の経済的ハードルがあがっている」ことになる。

失われた「結婚のお膳立て」

1980年代には存在していたふたつの「社会的お膳立て」「経済的お膳立て」が失われた今、婚姻数が激減するのも当然であろう。お膳立てがなかろうと自力で結婚する強者は今も昔も一定数いて、それらの婚姻数は減ってはいない。つまり、お膳立てによってかつては拾われた弱者の婚姻数が減っているだけなのだ。

参照→日本の結婚は30年前にはすでに詰んでいた。失われた社会的システム

提供:イメージマート

さて、今までも男女の「出会いのきっかけ」にまつわるデータをたくさん紹介してきた。

具体的には「恋愛に至る出会いのきっかけ」「結婚に至る出会いのきっかけ」「きっかけ別結婚までの交際期間」などである。

詳細については以前に記事化しているので参照いただきたい。

◇独身男女の恋愛のきっかけ
「みんなはどこで恋愛相手に出会っているの?」18歳から49歳の年齢別独身男女の恋愛の入り口

◇出会いのきっかけ別結婚までの交際期間中央値
知り合ったきっかけ別「結婚までの交際期間中央値」でわかる結婚の旬のタイミングとは?

◇恋愛のきっかけと結婚のきっかけの違い
「恋愛で終わるか?結婚に至るか?」恋愛のゴールと結婚のスタートとは必ずしも一致しない

結婚のきっかけによる年収の違い

今回は、結婚のきっかけ別男性の年収の違いについて見てみよう。全国20-34歳既婚男性の結婚のきっかけ別年収の中央値を算出した。

結果は以下の通りである。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

もっとも高いのが「お見合い」で560万円。次いで「結婚相談所」の557万円と続く。「婚活パーティー」も538万円、「婚活アプリ」も520万円と高い。おしなべて婚活系のきっかけで結婚した男性の年収は高い。逆にいえば、婚活で結婚するには高年収が必要になるのである。

一方で、もっとも年収が低いのが「職場・仕事」で451万円である。これは職場の出会いであれば、将来の互いの収入もある程度予測できることもあり、安心感があるからだろう。

「学校」の出会いも年収は高くないが、これは就職して早々に20代で結婚するカップルが多いこともある。

全体的に言えることは、婚活系の出会いに対して、私的な出会いによる結婚の方が年収条件に左右されていないということだ。私的な出会いでも、多分に値踏みをされる「飲み会・合コン」は少々年収があがるが…。

求められる「令和のお膳立て」

20代の若者のうち、「結婚したいと思っているのにできない不本意未婚」は4割いる。その4割のうち「経済的理由」をあげているのがそのうちの半分以上いる。つまり、全体の2割は「経済的理由で結婚相手が見つからない」のだが、それらの層が婚活をしたところで、「経済的条件で選別される」婚活市場ではそもそも平均程度の年収では結婚できない。

とはいえ「職場結婚」が激減している背景には、昨今のいきすぎたコンプライアンスによって「職場でデートになんか誘おうものならセクハラになる」というリスクで、若者自身が動けなくなっている点もある。企業側も昭和のように「部下の結婚にお節介をやく上司」などすっかりいなくなった。

かつては、社内運動会や社内文化祭、社員旅行などの「会社の祭り」が多数あり、そこで普段一緒に仕事をしていない者同士の出会いなどがあり、それきっかけで結婚したカップルも多かったことだろう。恋とは祭りで生まれるものなのである。

しかし、今では飲み会すら開くのも躊躇する有様である。

写真:アフロ

かつての疑似家族のような強い結びつきを企業が機能として果たすことは現代では時代遅れであるし、そうした状態に戻ることもあり得ないとは思うが、結婚の6割を支えていた「結婚の社会的お膳立て」の重要性は見直すべきかもしれない。

婚姻減少は自動的に出生減少となる。

選択的に非婚を希望する若者に結婚を強要するものではないが、「したいのにできないが4割」いることもまた事実である。

「お膳立てがなければ何もできないなんて情けない」などと言うおじさんたちも何かしら「お膳立てがあってこそ」だったのではないだろうか。

結婚支援とは、若者に婚活のツールを提供することではない。それでは結局「金の問題」は解決されない。また、若者に金をバラまくことでもない。そもそも社保料など取りすぎなのだ。

本当の支援とは、若者の行動を邪魔せずに、徒にリスクばかり植え付けて無行動にさせずに、ある程度のルールの中で思う存分動けるフィールドを提供してあげることではないだろうか。今必要なのは「令和のお膳立て」とは何かを考えることではないか。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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