なぜ37歳のイニエスタは大幅減俸を受け入れて神戸との契約を2年延長したのか?
あえて37歳の誕生日に設定され、前日には「重要な記者会見」と意味深に告知されていた舞台で待っていたのは、日本サッカー界にとって最高のサプライズだった。 来日4シーズン目を迎えている元スペイン代表のレジェンド、MFアンドレス・イニエスタが11日に都内で記者会見に臨み、今シーズンで満了するヴィッセル神戸との契約を2年間延長すると発表。記者会見に同席した神戸のオーナー、楽天の三木谷浩史会長兼社長とともに新たな契約書にサインした上で、神戸で現役を終える希望も明かした。 「サッカー選手としてのキャリアを、最後までここで続けていきたい。そして、サッカー選手としてだけでなく、このクラブとはいろいろな形で関わっていきたい」 16年間所属したスペインの名門バルセロナから加入したのが2018年5月。夫人のアンナさんと4人の子どもたちも心から愛する神戸の町を、笑顔で「第二の故郷になった」と位置づけたイニエスタは生涯2つ目のチームと契約を延長した理由をこう説明した。 「信頼され、大切にされていると感じられたことが自分にとって一番重要なキーポイントになった。加えて神戸でのプロジェクトとチームのための自分のベストを出すことに、モチベーションを感じ続けているかどうかも重要だった。新たに2年間、このプロジェクトに関われる自分にワクワクしている。3年前と同じ思いでこの挑戦を続けていきたい」 イニエスタが何度も言及したプロジェクトとは、神戸を日本、そしてアジアのナンバーワンクラブへ導く仕事だった。バルセロナとスペイン代表で望むすべてを手にしていた男にとって、日本国内のタイトルを獲得した経験すらなかった神戸の成長を託され、先頭に立って歩んできた過程そのものが新たなモチベーションと化してきた。 だからこそ、パフォーマンスへの対価となる年俸はファーストプライオリティとならないのだろう。会見のなかで三木谷オーナーはこんな言葉を残している。 「新型コロナウイルス禍でヴィッセル神戸だけでなく、さまざまなクラブが経済的にも大変厳しい状況にあります。そのなかでイニエスタらしいと思うのですが、経済面でもかなり歩み寄りをしていただいた。本当に感謝しております」