浦和の”逸材”18歳GK鈴木彩艶が世代交代の歴史動かす
いつものリーグ戦と光景が違う。J1リーグ史上で9人目、キーパーでは3人目の通算500試合出場を達成したばかりの守護神、西川周作がベンチで戦況を見つめている。浦和レッズのゴールマウスを守ったのは18歳の大器、鈴木彩艶(ざいおん)だった。 ホームの埼玉スタジアムでベガルタ仙台を2-0で下した、9日の明治安田生命J1リーグ第13節。浦和にとって4試合ぶりとなるクリーンシートで、緊張と興奮が交錯するリーグ戦デビューを勝利で飾った彩艶は真っ先に先輩たちへ感謝した。 「ルヴァンカップよりも少し緊張していた部分はありましたけど、仲間の選手たちが声をかけてくれたこともあって、いつも通りのプレーができたと思っています」 前半のキックオフを告げる笛が鳴り響いてからわずか6分。仙台の鋭いプレスの前にミスを連発するなど、浮き足立ちかけていた浦和を彩艶のビッグセーブが救った。 左タッチライン際でスローインを受けたMF小泉佳穂が、仙台のFW西村拓真、MF加藤千尋がかけてきたプレスの隙間を縫って右斜め前方へパスを放った。しかし、ボールは味方ではなく、浦和陣内の中央にいた仙台のMF氣田亮真にわたってしまう。 フリーだった氣田は間髪入れずに、ペナルティーエリア内へポジションを移してきた西村へ縦パスを通す。右足でトラップした西村が、流れるような動きから左足を振り抜く。必死にブロックへ飛び込んできたDF槙野智章も、わずかに届かなかった。 万事休す、と思われた直後だった。冷静に間合いを詰めてきた彩艶が、西村がシュートを放つ刹那に身長189cm体重91kgの恵まれた身体をさらに大きく広げた。目の前に現れた彩艶の右足にボールが当たり、弾き返された場面を西村は悔やんだ。 「チームを勝たせるためにも、フォワードとして決めなければいけない場面だった」 2014シーズンから浦和の守護神を拝命し、同年のブラジルワールドカップ代表にも名前を連ねた西川が、リーグ戦で先発から外れるのは今回で2度目となる。 最初は2019年11月1日の鹿島アントラーズ戦だったが、このときは例外と言える事情があった。直後に控えていたアル・ヒラル(サウジアラビア)とのACL決勝ファーストレグで、西川が累積警告による出場停止処分を科されていたからだ。 代役を担った福島春樹(現京都サンガF.C.)は、実はJ1リーグ戦に出場した経験がなかった。ゆえにACLをにらんで福島が鹿島戦に先発し、その後は再び西川が浦和のゴールマウスに君臨。今年3月には日本代表へ約3年4ヵ月ぶりに復帰した。