新型コロナ「抗原検査」「抗体検査」「PCR検査」それぞれの違いは?
●抗体があると新型コロナにかかりにくい?
一般に抗体を持つ場合、特に高い抗体価を持つ場合には、対象の感染症にかかりにくいと考えられています。そのため、感染力が非常に強い麻疹(はしか)などでは、海外留学などをする際に抗体検査の結果を求められることがあります。新型コロナウイルスの場合、「抗体を持っている人」は今後感染しにくいだろうと期待されていますが、本当に感染しにくくなっているかどうかは確認していく必要があります。 感染防御に十分な抗体価はどれくらいか、十分な抗体価が長期間維持されるのか、抗体以外の免疫の仕組みが感染防御にどれくらい貢献しているのか(図2)など、現状まだ分からないことだらけだからです。抗体価については、感染後数か月で減少する事例・維持できている事例や再感染についての報告も上がってきていていますが、抗体の測定方法が統一されていないために結果の比較が難しいという問題があります。今も抗体についての情報が更新されている最中で、新型コロナウイルス感染症へのかかりにくさを考える上で、抗体検査の結果の解釈は1年以上が経過した今でも非常に難しく、注意が必要といえます。
●検査は感染症と向き合うための大事なツール
私たちの体には、ウイルスなどの異物を排除する免疫の仕組みがもともと備わっています。この仕組みのおかげで、普段私たちは感染症にかかってもちゃんと治り、健康でいられるのです。今回、この免疫の仕組みを利用した抗原・抗体検査を紹介しましたが、検査は感染症と向き合うための大事なツールの一つです。その一方で、検査の特徴や目的を理解していないと、検査が混乱の原因になることもあります。完璧な検査は存在しません。それぞれの検査の特徴や目的を理解した上で、正しい使いどころで検査をし、使いこなしていけるとよいと願います。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 高橋明子(たかはし・あきこ) 1980年、東京都生まれ。専門は生態学。動物と植物の相互作用を研究。大学の研究員を経て、2016年4月より現職。趣味は物件の間取り図をながめること