新型コロナ「抗原検査」「抗体検査」「PCR検査」それぞれの違いは?
●抗原検査=いま体内にウイルスがいるか?
続いて抗原検査ですが、こちらも「いま体内にウイルス(=抗原)がいるかどうか」を調べています。最も身近な抗原検査といえば、鼻を綿棒でグリグリするインフルエンザウイルスの検査かもしれません。あらかじめ用意したウイルスにくっつく検査用の抗体と、鼻や喉の奥などから採取したサンプルを反応させます。サンプルの中にウイルスがあれば、検査用の抗体と抗原抗体反応を起こすので、ウイルスがあることが分かります。 抗原検査の長所は検査結果がすぐに分かる点、短所はウイルスの存在をキャッチする能力がPCR検査に比べると低く、PCR検査よりも本当の感染者を多く見逃すであろう点です。つまり陰性になった場合、PCR検査以上に「本当に感染していないかどうか疑わしい」ということになります。ただし新型コロナウイルス感染症では、ウイルス量が多いとされる発症から9日目以内(※2)の有症状者についてはPCR検査での結果との一致率が高いことから、抗原検査での結果はそのまま確定診断として用いられます(2021年1月31日現在)。 なお、抗原検査には、「定量検査」と「定性検査」の2種類があります。定性検査は抗原の有無を判定するもので、検査キットだけあれば検査可能ですが、▽使用可能な検体が限られる(唾液不可)、▽無症状者には使えない、▽精度が低めといった短所があります。一方、定量検査は抗原の量を測定する検査で、定性検査よりは精度が高いですが、特殊な測定機器が必要になります。同じ抗体検査でも、ちょっと違いがあります。 (※2)…定性検査の場合、発症から2日目以降
●抗体検査=過去に感染したことがあるか?
3つ目の抗体検査は、その人が「過去に感染したことがあるかどうか」を調べるためのものです。血液をサンプルとして用い、感染後期に増えて治癒後もつくられ続ける「IgG(アイジージー)」という種類の抗体の有無、もしくは量・強さ(抗体価)を、検査用につくられた抗原を使ってチェックします(図3)。もし抗体が血液中に一定量以上ある場合、検査用の抗原と抗原抗体反応を起こし、「感染したことがある」と判定されますが、「いつ感染したのか」までは分かりません(※検査キットの中には、感染の初期にだけつくられる「IgM(アイジーエム)」という抗体を測定し、直近の感染を調べるもの、IgGとIgMの量の比から、感染時期も推定しようとしているものもあります)。 新型コロナウイルスについても多くの抗体検査キットが開発され、簡単に短時間で過去の感染について検査できるようになりました。一方で現在、さまざまな機関で検査キットの精度評価が進められており、例えば米国食品医薬品局(FDA)の報告では、キット間で精度に大きな差があることが指摘されています。また基準以上の精度が認められ、FDAから緊急使用承認を得ている検査キットでも、本当は陽性なのに陰性と判定される「偽陰性」に加え、逆に陰性のはずが陽性と判定される「偽陽性」も一定数出ると考えられています。 そのためWHO、FDA、日本の厚生労働省のいずれも、抗体検査の結果のみに基づいて、個人の過去の感染の有無について診断を下すことを推奨していません。一方で、地域単位でざっくり感染状況を捉える、という目的であれば、そこそこの精度で許容されるかもしれません。目的によりけり、といえます。