新型コロナ収束のカギ握る? でも簡単じゃない「集団免疫」
新型コロナウイルス感染症の流行終息に必要なものは何か。こうした議論でよく聞かれる言葉の一つが「集団免疫」です。もし、新型コロナウイルスに対して理想的な集団免疫が確立すれば、この流行は終息するでしょう。それだけに期待も大きいのですが、実際はそんなに簡単なことではありません。集団免疫を確立するにはたくさんの条件を満たす必要があります。そして、この条件の多さこそが集団免疫の話を複雑で分かりにくいものにしています。 【画像】ワクチン開発「感染予防効果は実証難しい」西村担当相が見通し示す 集団免疫とは? 確立するための条件って? この記事では、集団免疫に関する基本的な考え方について、新型コロナウイルス感染症の話を交えながら紹介します。
そもそも「免疫」とは何か?
集団免疫を理解するためには、まず「免疫」という概念についてのおさらいが必要です。 私たちの身の回りには、細菌やウイルスのような感染症のもととなる病原体がたくさんいます。ざっくりと言えば、こうした病原体と戦う力、それが免疫です。体の中には免疫を担う細胞が数多く存在します。 免疫は大きく2つの種類に分けられます。「自然免疫」と「獲得免疫」です。自然免疫はいわばオールラウンダーな免疫で、病原体が体内に入るや否や動き始め、感染力の弱い相手であればこの自然免疫が退治してくれます。獲得免疫はいわば免疫の特殊部隊で、自然免疫では手に負えないような病原体を退治してくれます。 免疫の仕組みにおいて、自然免疫と獲得免疫はとても優れた連携体制をとっています。自然免疫の細胞は、出会った病原体を退治するとともに、その病原体の情報を持ち帰ります。その情報を基に鍛えられた免疫が獲得免疫となります。再度同じ病原体が侵入したときは、獲得免疫がすぐに出動していち早く退治することができます。
あらかじめ獲得免疫を作るワクチン
こうした獲得免疫の仕組みを利用したものが「ワクチン」です。あらかじめ弱らせておいた病原体や、病原体の一部などを健康な体に打ちます。ワクチンはいわば“練習試合”のようなもので、本物の病原体が実際に侵入してくる前に獲得免疫を作っておくことができます。 もちろん、ワクチンを使わなくても、生活の中で一度その病原体に感染すれば獲得免疫は作られます。ですが、命にかかわるような危険な感染症に一か八かで感染するのは非常に危険です。例えば、麻疹(はしか)はワクチンができる前の時代、命定めの病と言われ、流行のたびに子どもを中心に多くの人が犠牲になりました。こうした病を爆発的に流行させないためにも、獲得免疫を作るワクチン開発がとても大きな役割を果たします。