大人の決着…井岡のタトゥー問題の厳重注意処分は妥当だったのか…なぜ井岡は沈黙を守ったのか
JBC(日本ボクシングコミッション)が22日、日本人初の4階級制覇王者でWBO世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(31、Ambition)のタトゥー問題に関して本人とジムのオーナーライセンスを持つ木谷卓也会長(47)の2人に対して厳重注意処分を下したことを発表した。井岡は大晦日に大田区総合体育館で行われた防衛戦で元3階級制覇王者、田中恒成(25、畑中)に8回TKO勝ちしたが、その試合中に左腕の肩付近まであるタトゥーと脇腹に彫った息子の名前が露出していた。JBCルール第95条2号で試合に出場できない選手として「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」が定められており、今回、そのルールに抵触したと判断された。JBCルールでの処分の程度は6段階あるが最も軽いもの。JBCルールでは不服を申し立てることは可能だが、井岡側は処分を受け入れた。今回のタトゥー問題はSNSなどでも様々な議論を呼び、時代の変化に応じてルールそのものを改正すべきとの意見も散見されたが、JBCは改正の考えがないことも明らかにした。今回のJBCの処分は妥当だったのか、そして井岡はなぜ沈黙を守ったのか。
「コメントは差し控えたい」と井岡サイド
予想通りの決着である。JBCは21日に倫理委員会が開き処分を決定、井岡サイドにも通知された。JBCルールでは不服申し立てができるが、井岡サイドは処分を受け入れる姿勢を示した。発表は1日置いて22日になったが厳重注意処分に留まった。制裁金をプラスする意見もあったが、6段階あるJBCの制裁規定のうち最も軽い処分とした。過去にタトゥーが露出した問題に対して厳重注意処分以上の処罰を下したことはなく過去の“判例”に従った判断だと言える。 厳重注意処分には具体的な罰則はなく、今後の井岡のボクシング活動に関してなんら制約を与えるものではない。 ただ井岡サイドに“ルール無視”の意図はなく試合前に控室でファンデーションを塗ってタトゥーを隠す措置を行っており、グローブ、バンテージのチェックのために控室にいたJBC職員も、それを確認していた。もし塗り方やファンデーションの種類などに問題があったのであれば、その場で注意すべきであったし、タトゥーを隠す措置を認めてリングに上げてしまってから「試合中に露出していたから処罰」では、“後だしジャンケン”ではないか、との意見もある。たとえ厳重注意の軽い処分であっても、処分そのものを出すべきではなかったのではないか、との議論もあった。 だが、JBC内部の不手際を理由にルールそのものが適用されないとなれば、リング内の秩序が保てなくなる。結果としてタトゥーはJBCに苦情メールが殺到するほど試合中に露出していた。完璧にタトゥーを隠す措置は施されていなかったのである。 JBCの安河内事務局長は“落ち度”を認めた上で「JBCにおいても管理を徹底すべきであったことを踏まえ、今後は、同様のケースにおいては、JBC指定の塗布剤を使用させるか、指定業者による塗布施術を受けてもらうなどの手当てを考えていきたい」とのコメントを出した。 一方の井岡サイドは沈黙を守った。所属事務所は「JBCの処分に対する井岡選手のコメントは差し控えたい」と伝え、あえてコメントを出さなかった。当初、公式発表は避け、井岡自身がインスタでなんらかのコメントを出すという方針も検討されていたが、結局、それも取り止めになった。