なぜ日本レスリングは乙黒拓斗と須崎優衣の男女W金メダルで東京五輪を締めくくることができたのか…残された課題は?
東京五輪の男女レスリング競技の最終日が7日、千葉の幕張メッセで行われ、男子フリースタイル65キロ級で乙黒拓斗(22、自衛隊)女子50キロ級で須崎優衣(22、早稲田大)が揃って金メダルを獲得した。2人の決勝戦は、対照的な展開だった。
乙黒とアリエフ(アゼルバイジャン)の決勝戦は、乙黒が得意の片足タックルで2点を先制した約2分後、2点を奪い返され同点となった。ラストポイントでリードされたまま試合時間が残り15秒を示したとき、タックルで2点、さらに相手のチェレンジ失敗で1点を加え、5-2と勝ち越しに成功した。残り10秒を切ってから露骨な逃避行動を2度警告され、1点ずつ失ったが5-4で東京五輪金メダリストの座を手にした。 一方、今大会の全試合のラストを飾った須崎と孫亜楠(中国)による決勝戦は、須崎が終始圧倒し、アンクルホールドを次々と成功させて10-0のテクニカルフォールで終えた。須崎は全4試合すべてで無失点のテクニカルフォール勝ちをおさめた。これは4連覇の伊調馨氏、3連覇の吉田沙保里氏でもできなかった快挙。 ソウル五輪金メダリストの小林孝至氏は、乙黒も須崎も「攻撃がよかった」と評価した上で、3年後のパリ五輪で連覇を狙えるからこそ、期待をこめて課題を挙げた。 「最初から最後まで圧倒した須崎は、文句なしです。見事なものだと思います。乙黒も、敢にタックルに入ったのは勇気があることでした。ですが、得意なことだけをして勝つ、ということは繰り返せません。スタンド技もグラウンド技も点を取れる技術を増やして、五輪でしかレスリングそのものを見ることがないような人も思わず見とれてしまうような試合をしてほしいのです」 勝ち続ける選手は代名詞のような技を持っている。須崎ならタックルからのアンクルホールドだし、乙黒もタックルがそれにあたるのだろう。だが、それだけでは壁にぶつかる。世界のライバルに研究されることと、自らの体力や技術が年齢とともに変化することを踏まえ、点数をとれる新しい技を増やしていかねばならない。