なぜ日本レスリングは乙黒拓斗と須崎優衣の男女W金メダルで東京五輪を締めくくることができたのか…残された課題は?
まだ詳細な分析は公表されていないので速報の段階での話になるが、今回、金メダリストが次々と誕生したにもかかわらず、レスリング競技の世帯視聴率はいずれも10%を超えていない。もっとも話題になった女子57キロ級決勝で川井梨紗子が勝利した8月5日も、東京五輪中継(日本テレビ)の視聴率は6.1%だった。同じ時間帯に卓球女子団体決勝・日本×中国(26.3%)があった影響も大きいだろうが、リオ五輪での女子レスリングが、連日、二桁視聴率を記録。伊調馨が女子58キロ級決勝に登場した日の20.7%はリオ五輪中継全体で5番目の高視聴率だったことを思うと、やはり寂しい数字だ。 視聴率がすべてではないし、今ではネット配信もあるという意見もあるだろう。また競技の価値はテレビの視聴率によって変わるものではないという考え方もある。だが、現実には、五輪そのものが莫大な金額が動く巨大ビジネスであり、テレビ中継はそれに大きな影響を及ぼす存在だ。マイナースポーツであるほど、五輪で得られる宣伝やイメージ効果によって運営を支えている現実がある。その効果を発揮する晴れの舞台を、もっとうまく活用できる道はないのか。 「最近の五輪ではレスリングの日程が後半にある。球技などさまざまな競技の決勝と、レスリングの試合が重なることが増えて、存在感を示すのが難しい。最近は、五輪の話題になる前半の日程になればいいのにと思う」というのが小林氏の意見。 短期的な目標としては、五輪の中でどうやってアピールするかを模索する必要があるのだろう。だが、もっと根本的な部分から問いかけを始めねばならない時期に来ているのではないか。レスリングはスポーツとして、実施する競技としてだけでなく、見る競技としてどんな姿を目指すのか。IOCの意向を確認しつつUWW(世界レスリング連合)が取り組まねばならない問題ではあるが、日本も指をくわえて推移を見守っている場合ではない。