女子レスリングで“姉妹金”と連覇達成の川井梨紗子はパリ五輪で“霊長類最強女子”吉田沙保里氏の3連覇に並ぶことができるのか?
東京五輪レスリングの女子57キロ級の決勝が5日、千葉の幕張メッセで行われ、リオ五輪63キロ級金メダリストの川井梨紗子(26、ジャパンビバレッジ)がイリーナ・クラチキナ(27、ベラルーシ)を下し五輪連覇を飾った。前日に妹の友香子(23、同)が62キロ級で金メダルを獲得しており、夏季五輪での同一大会として日本初となる姉妹金メダルの快挙を達成した。五輪4連覇中だった伊調馨(37、ALSOK)との壮絶な代表争いを制して代表に選ばれていた。
戦略的に100点の戦いでプレッシャーはねのけ5-0勝利
五輪の舞台は経験を積めば積むほど逆に怖くなると言われる。26歳の川井梨紗子にも期待されていた連覇のプレッシャーがのしかかっていた。 「リオ五輪のときと比べると、一試合、一試合が、すごく重く感じた」と、5年前との立場の違いを言い表した。 そして「プレッシャーが応援になると信じている。私はそれを抱えられるだけの選手にならなきゃと思ったので、なんとか戦えました」と続け、手にした金メダルの喜びを感謝の言葉に変えた。 言葉では「なんとか」と表現しているが、東京五輪で連覇を達成した川井の全試合を振り返ると、一試合ごとに変化をつけ、とくに決勝は、それまでとは試合の運び方を大きく変えてきた。ソウル五輪金メダリストの小林孝至氏は「決勝は戦略的には100点。よい試合の組み立て方でした」と評価した。 2回戦が終わった段階で川井は、「改善すべき部分が出てきている。試合の組み立てなど、相手よりも自分の問題」と、自身の戦いぶりを評していた。階級違いの五輪金メダリスト対決となった準決勝では、吉田沙保里氏の五輪4連覇を阻止したマルーリス(米国)を相手に、テクニカルポイントがない我慢比べのような試合を制して決勝へ進んだ。そして小林氏が高く評価した決勝で「組み手の巧さ」を発揮する。 首の上に手を置きプレッシャーをかけ、積極的に押してくるベラルーシのクラチキナに対し、多彩な組み手を繰り出して同じポジションを長く取らせない川井。高めの位置のタックルにクラチキナが動いたとき、上半身がふわりと浮いた瞬間を逃さず、川井が回り込んでテイクダウンを奪い、2点を先制した。 タックルなど明らかな攻撃はクラチキナのほうが何度も動いていた。だが、得点に結びつかない。クラチキナにしてみれば、失点も連続技はないし、逆に何度もタックルに入って足を触っている。逆転は可能と信じていたからだろう、残り1秒からもタックルに入ってきた。だが、それらは一度も得点に結びつけられず、最終スコアは5-0で川井が勝利した。川井は試合の何をどう制していたのか。