メンタルクリニックは増えているのに…なぜ予約困難? オンライン診療が活路になるか #今つらいあなたへ
精神科医で、都内のクリニックで臨床に従事しながら、放送大学などで教鞭をとる石丸昌彦さん(67)に、「初診の予約が取れない」という患者さんの声があることをぶつけてみると、「私の勤めるクリニックでは1カ月以上先まで初診の枠が取れないことはまずない」としつつ、こう分析する。 「外来患者の増加は、精神医療が身近になって、受診のハードルが下がったことが一因と言えるかもしれません。精神科クリニックの数は増えているのに初診予約が取れないということは、相対的に医師とクリニックが不足しているということでしょう。地域格差もありそうです。都市部に比べて、地方では精神科クリニックの数が圧倒的に少ないですから」 クリニックの経営者がどのような方針を採るかも関わってくる。石丸さんは週1日、外来診療にあたっており、初診の患者には30分以上を費やすが、「自分一人だったらそうはいかないかもしれない」と話す。 「精神科の初診は時間がかかるので、最低でも30分、可能なら1時間はとりたいところですが、一人の患者さんに長く時間をとると、診察できる人数が少なくなって、時間内にすべての患者さんを診ることができません。私が比較的時間のかかる患者さんをじっくり診られるのは、同時に診療しているほかの先生がたがたくさんの患者さんを効率よく診察してくれるからです」 実際に、初診受け付けを抑制するクリニックもある。オンライン診療中心のメンタルクリニックを開業した精神科医の椿佳那子さん(38)は、勤務医時代、初診の予約を断らざるをえない状況を経験した。 「大学病院から地域のクリニックへ派遣されていたのですが、どんなに良心的なクリニックでも8時間で30~40人を診なくてはなりませんでした。相当なハードワークです。私の派遣先は飛び入りの初診の患者さんも受け入れていましたが、やむを得ずお断りしなければならないこともありました。いつでもすぐ診てもらえることは、患者さんにとっては望ましいと思いますが、医師の犠牲の上に成り立っていると言わざるをえません」