メンタルクリニックは増えているのに…なぜ予約困難? オンライン診療が活路になるか #今つらいあなたへ
近ごろ、加藤さんのように「メンタルクリニックにかかりたいが、初診の予約が取れない」という声がSNSで目につく。「初診予約の電話かけたらまさかの2カ月先」「メンクリどこ電話しても初診受け付け不可」といった具合だ。精神科クリニックは「メンタルクリニック」や「こころのクリニック」という看板を掲げるところが多い。心療内科を併設したり、カウンセラーが勤務していたりするところもある。 発熱や腹痛で病院にかかる場合、予約が1カ月先になることは考えづらい。それがこころの不調だと1カ月も2カ月も待つケースが出るのはなぜなのか。 「メンタルクリニックを受診したときの経験を聞かせてほしい」とSNSで呼びかけたところ、6人が名乗りを上げてくれた。 そのうちの一人、都内に住む林和也さん(仮名、30代)は、今年に入ってから激しい倦怠感と睡眠リズムの狂いで心身の調子を崩し、受診を考えるようになった。 「不眠と気分の落ち込みがひどくて、動けるときと動けないときとの差が激しく、予定が遂行できない。そんな自分を責めるという悪循環です」 クリニックを探して実際に受診するまで、2カ月を費やした。 「通いやすく、初診予約がスムーズに取れそうなクリニックがよかったのですが、なかなか見つかりませんでした。すぐ予約が取れそうなところはGoogleのレビューが低いところばかり。レビューを鵜呑みにするべきではないと思いますが、怖くて行く気がしませんでした」 そんななか、自宅の近くに新しいメンタルクリニックがオープンした。問い合わせたところ、すぐに初診の日時が決まった。診断の結果、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害と診断され、現在は退職して療養を続けている。 「近くに新しいところができて、運がよかったと思っています。調子が悪いときにクリニックを探して電話して断られて……という作業は本当に心が折れるので」
クリニック数を上回る患者数の増加 初診を断らざるを得ない実情も
患者の肌感覚とは裏腹に、メンタルクリニックの数は増えている。 厚生労働省の「医療施設調査」によれば、2020年時点で全国の精神科クリニックの数は7223件。1993年の2644件と比べると2.7倍に増加している。また、心療内科は5063件ある。 一方、厚労省の「患者調査」によれば、精神科で治療を受ける患者の数は2017年で419.3万人。2002年は258.4万人だった。特に目立つのは外来患者の増加だ。内訳を見ると、入院患者が34.5万人から30.2万人に減っている一方、外来患者が223.9万人から389.1万人に増えている。 外来患者を疾患別に見ると、顕著に増えているのは、「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」だ。2002年には68.5万人だったのが、2017年には124.6万人に増加した。「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害」も、49.4万人から82.8万人に増えた。