夏休みの自由研究が、世界的発見へ――ニホンオオカミの論文を書いた小学生の探究心 #令和の子
夏休み中盤。子どもも親も、宿題の自由研究に頭を悩ませる時期かもしれない。夏休みの自由研究が、後に大きな発見につながった女の子がいる。今年2月、ニホンオオカミの剥製標本が発見されたと科学論文で発表された。世界で6体目という快挙。保管されていた剥製標本を「ニホンオオカミだ」と気づいたのは当時小学4年生の小森日菜子さんだった。その後、彼女は本格的な論文を執筆、専門家たちからのお墨付きも得られた。ニホンオオカミの剥製標本が、どのように発見され、論文執筆に至ったのか。現在中学2年生の日菜子さんと支えた両親、研究者らの活動を追った。(文・写真:科学ライター・荒舩良孝/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
小4のとき「ニホンオオカミ」を発見
今年5月21日、東京・上野にある国立科学博物館(科博)上野本館。特別展「大哺乳類展3」で、一体の剥製標本が公開された。発見されたニホンオオカミの剥製標本だ。 ニホンオオカミは20世紀初頭に絶滅したと考えられており、剥製標本は世界で5体しか確認されていなかった。今回の標本は6体目。この標本は、長年、科博の自然史標本棟(茨城県つくば市)の片隅に保管されていたが、当時小学4年生だった女の子によって発見された。 「この剥製標本をこんなに早く展示してもらい、たくさんの人たちに見てもらえて、とてもうれしかったです」
そう語るのは、発見者である小森日菜子さん。東京都内に住む中学2年生だ。 日菜子さんは、小学4年生のときに見た剥製標本が「ニホンオオカミではないか」と直感した。その後、研究者の手を借りながら、同標本の調査を行い、自由研究としてまとめた。さらに、16ページに及ぶ論文を2人の研究者と共同で執筆。専門家の査読を経て、今年2月に研究論文集に掲載された。共著者の一人である国立科学博物館・動物研究部研究主幹の川田伸一郎さんは言う。 「日菜子さんは筆頭著者。(科学の世界で)論文の筆頭著者は、研究に対して一番貢献度が高い人です。中学生で筆頭著者の論文を出せたのは立派なことだと思います」 ニホンオオカミの標本を小学生が発見したのも、それを論文にまとめたのも、どちらも異例なことだ。 この論文は大きなニュースとなり、ニホンオオカミと結論づけられた標本は、会期途中から特別展「大哺乳類展3」で展示されることとなった。会場の出口近くに、急遽つくられたガラスケースに入った標本は人だかりができるほど注目を集めた。 日菜子さんはなぜニホンオオカミを発見でき、論文にまでまとめることができたのか。