初飛行から30年…毛利衛氏が語る宇宙新時代の「宇宙飛行士」とは
1992年9月12日、毛利衛(まもる)宇宙飛行士が日本人として米スペースシャトルに初めて搭乗し、宇宙へ飛び立った。打ち上げから帰還までの8日間にわたり、計43テーマに及ぶ材料やライフサイエンスに関する実験を行った。あれから30年、宇宙開発は新たな時代を迎えようとしている。2000年から始まった国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在を経て、人類は再び月を目指そうとしている。近年では、民間企業の参入によって宇宙産業が拡大し、昨年は多くの民間人が“宇宙旅行”を体験したことが話題になった。このような現状を、毛利氏はどのように見ているのだろうか。日本科学未来館(以下、未来館)の名誉館長であり宇宙飛行士である毛利氏に、話を聞いた。 【動画】月を目指す考え「確実にあります」若田宇宙飛行士が会見7月21日(全文2)
●初飛行を振り返って
――初めての宇宙飛行から30年、今はどのようなお気持ちでしょうか。 30年は、あっという間でしたね。後輩の宇宙飛行士がいろいろな試みをして、今では日本が宇宙開発においてリーダーシップを取れるほどまで成長したことを、とても嬉しく思っています。 ――スペースシャトルに搭乗する初の日本人宇宙飛行士ということで、相当なプレッシャーだったのではないでしょうか。 オリンピック選手が日本の日の丸を背負うのと同じように、まさに日の丸を背負っている感じでした。といっても、そのプレッシャーは楽しいもので、ものすごい力にもなりました。国家予算を使っているので失敗はできませんが、それを担える挑戦が自分にできるということに喜びを感じていました。
――初の宇宙飛行で、最も印象に残っているものはなんでしょうか。 初めて地球を宇宙から眺めた時です。宇宙という真っ暗な空間の中に、地球がふわっと青く輝いて浮き出ていたのを今でもはっきりと覚えています。帰還後、宇宙での経験を消化し、「ユニバソロジ」(※)という新しい概念を作り上げました。ユニバソロジは、今でもいろんな人たちが注目してくれていて、そういう意味でも自分にとって一番価値があったと思っています。 ※ユニバソロジ(Universology)…毛利氏が、宇宙からの視点でものごとを考えるという意味を込めて作った言葉。一見、つながりのない現象であったとしても、時間や空間のスケールを相対的に変化させ俯瞰することで、つながりが見えてくる。生命、地球環境、ロボットなど、あらゆる事象をユニバソロジ的にとらえることで、物事の本質の理解や、人類が地球でどのように生きるのがいいのかを見つめ直すことに結びつくという考え方である。