初飛行から30年…毛利衛氏が語る宇宙新時代の「宇宙飛行士」とは
――初飛行時、「あと10年、20年経ってくると、もっともっと簡単にスペースステーションができ、今度は個人で旅行できるぐらい、宇宙というのは身近になると思います」とおっしゃっていました。30年が経過し、昨年からは民間企業による宇宙旅行が本格化したことについて、毛利さんはどのようにお考えになっていますか。 当時も、最終的には民間で旅行ができるようになることが一つの目標だったので、30年も経ってしまったことに、少し遅さを感じます。おそらく多くの人たちが望むのは、宇宙に行きたいという憧れを実現すること。昔の人が世界旅行に行きたいと望んでいたのと同じように、そんな素朴な気持ちを実現するというのが、ようやくビジネスになり始めたのかなと思っています。今後、宇宙旅行はより本格的になっていくでしょうから、お金持ちだけでなく、誰でも宇宙に行けるように早くなってほしいですね。
●新しい宇宙開発時代の職業「宇宙飛行士」の役割とは
長年、政府主導で進められてきた宇宙開発は、民間企業の参入によって新たな局面を迎えている。人が宇宙に行くことについては、昨年から何人もの民間人が旅行として宇宙へ出かけるようになった。ガガーリンによる世界初の有人飛行から約60年。特別な訓練を受けた「宇宙飛行士」という職業の人だけに限られていた宇宙が、より開かれた場になったのである。 ――今年、旅行で訪れた民間人による科学実験が、ISS船内で行われました。職業「宇宙飛行士」の仕事の一部を民間人も担えるようになった今、あらためて従来の宇宙飛行士の存在意義についてどうお考えでしょうか。 基本的に宇宙飛行士は「いつも挑戦する最先端の人」だと思っています。例えば研究者は新しいものを求めて研究をするわけで、誰かがすでに見つけているものは二番煎じになり、あまり意味をなしません。新しいものの発見によって次のビジネスにつながり、そして社会が安定して生き延びていく。そのきっかけをつくるという意味では、科学者であろうが芸術家であろうがビジネスマンだろうが、新しいものに挑戦するというのは職業としてはいずれも同じだと思います。