快挙の連続「はやぶさ2」 想定外と葛藤乗り越え カプセルが地球帰還
探査機「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」のサンプル(かけら)を抱いて、刻一刻と地球に迫っています。はやぶさ2は日本時間の12月5日午後2時30分頃、リュウグウのサンプルの入ったカプセルを地球に向けて投下。カプセルは翌6日未明に地球に届く予定で、地上に落ちたらすぐに発見、回収できるように準備万端で待ち構えています。カプセルが届く直前の今、あらためてはやぶさ2の探査を振り返ってみましょう。(科学ライター・荒舩良孝) 【図解】「はやぶさ2」のカプセルが地球帰還へ 6年の宇宙の旅路を振り返る
予想外のコマ型だった小惑星「リュウグウ」
はやぶさ2の旅が始まったのは、今から6年前。2014年12月3日午後1時22分4秒、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケット26号機で地球を後にしました。はやぶさ2は打ち上げから1年後の2015年12月3日に、地球の重力を利用して軌道を変更する「地球スイングバイ」を経て、2018年6月27日に目的地となる小惑星リュウグウに到着しました。3年半にわたる往路の飛行距離は32億キロメートルにも及びました。
直径900メートルほどのリュウグウという小惑星の詳しい形は、実ははやぶさ2が近づくまでよく分かっていませんでした。はやぶさ2に搭載された望遠の光学航法カメラ(ONC-T)がリュウグウの姿を捉えた当初、リュウグウは球形の小惑星のように見えました。しかし、どんどん近づいて見ると、カメラに写るリュウグウの姿が徐々に変化していきます。なんと、リュウグウはそろばんの珠のようなコマ型をした小惑星だったのです。 この姿は、はやぶさ2プロジェクトのメンバーにとって大きな驚きでした。これまでコマ型の小惑星は比較的早い速度で自転しているものばかりでした。しかし、リュウグウは7.6時間で1回転するという比較的ゆっくりとした速度で自転している小惑星だったので、そのリュウグウがコマ型をしていることが、とても不思議だったのです。 ちなみにチーム内では、リュウグウに大きなクレーターが見えたとき、映画「スター・ウォーズ」のデス・スターに似ているという声が上がったといいます(しばらくチーム内では「デス・スター・クレーター」とのニックネームで呼ばれていたが、その後、正式に「ウラシマ・クレーター」と命名)。