若い世代で大腸がんが増加、進行して見つかる割合も高い、見逃してはいけない兆候とは
50の国と地域を調べた最新の研究結果が発表、高所得の国々に限らず世界的な傾向が判明
大腸がんは高齢者の病気だと思われがちだ。だが、2024年12月11日付けで医学誌「Lancet Oncology」に発表された50の国と地域を調べた新たな研究によると、50歳未満の若い人で大腸がんの発生率が世界の多くの国と地域で高まっていることが明らかになった。また、2023年3月に学術誌「サイエンス」に掲載された論文では、1990年代以降は多くの国で、50歳未満での大腸がんの発生率が毎年2~4%ずつ増えており、30歳未満ではより顕著だという。 ギャラリー:がんの治療に影響、炎症を抑える食べ物とは 写真6点 増加の理由は明らかになっていないが、「サイエンス」の論文では環境や遺伝などさまざまな説が挙げられている。また、検診受診率の低さや、がんを疑わないことによる誤診も原因の一つと考えられる。 「大腸がんは、もう高齢者だけの病気と考えるべきではありません」と話すのは、米ハーバード大学医学大学院教授で米マサチューセッツ総合病院消化器科副医長のアンドリュー・チャン氏だ。 特に心配されるのは、病状が進行した状態で診断される事例が増えている点だ。 「大腸がんの予防と早期発見には、大腸内視鏡というすばらしいツールが役立ちます。実際に(がんになる前段階の)前がん病変を見つけて取り除くことができるからです」と、米がん協会(ACS)でがん統計調査の上級科学ディレクターを務めるレベッカ・シーゲル氏はそう話す。早い段階で発見できれば、5年相対生存率は90%にのぼる。 シーゲル氏が著者の1人を務め、ACSが2023年3月に医学誌「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に発表した論文でも、米国では55歳未満で診断された人の割合が1995年の11%から現在は20%まで増加していた。 大腸がんにかかる人がより若い人で増えていることを受け、米予防医学専門委員会(USPSTF)は2021年5月に、検診を受け始める推奨年齢を50歳から45歳に引き下げた。だが、シーゲル氏によると、大腸がん患者の約3人に1人は家族に病歴がある人だ。そのため、危険因子を持つ人にはさらに早くからの検診を勧めている。 「再び減少傾向に変わるまでは、適切な戦略を検討し続ける必要があります。より若い年齢での発症の増加を何とかしてくい止めなければなりません」とチャン氏は言う。