「朝起き上がれない」中学生の10人に1人――起立性調節障害、不登校の要因に #今つらいあなたへ
自律神経の不調が原因、不登校の要因にも
起立性調節障害とはどんな病気なのか。
起立性調節障害などの子を主に診察している、大阪医科薬科大学小児科・子どものこころ専門医の吉田誠司さんは、こう説明する。 「起立性調節障害は、血圧や心拍をコントロールする自律神経の不調が原因の病気です。症状は頭痛や立ちくらみ、動悸、倦怠感などです。思春期に発症しやすく、午前中に症状が強く出るため、学校生活に影響します。有病率は高く、中学生の10人に1人に起立性調節障害があると言われています」
なぜ自律神経が乱れると、起立性調節障害になるのか。吉田さんによると、こういうメカニズムだ。 立ち上がると、血液は重力の影響で上半身から下半身に移動する。このため、上半身は一時的に貧血状態になる。それに対して、自律神経の働きで足の血管が収縮し、血液が上半身に持ち上がることで貧血状態は改善する。 だが、自律神経の働きが不調になると、足の血管の収縮がうまくいかず、上半身の血流が不足し、立ちくらみなどの起立性調節障害の症状が誘発される。
日本小児心身医学会によると、不登校の子の30~40%に起立性調節障害があると言われている。コロナ禍以降、不登校の児童・生徒は大幅に増えている。2022年度の不登校の小中学生は29万9048人。うち中学生は19万3936人で、中学生の17人に1人は不登校だ。
コロナ禍で起立性調節障害の子が増えた
起立性調節障害という病気の概念は1958年に初めて日本で紹介された。今の診断基準になったのは2006年からだ。起立性調節障害の子が増えたきっかけの一つに吉田さんはコロナ禍を挙げる。 「起立性調節障害の子は以前から増加傾向でしたが、コロナ禍で大きく増えました。理由は複数ありますが、コロナ禍の一斉休校や分散登校で子どもたちの生活リズム(睡眠リズム)が乱れたことが要因の一つと考えます。睡眠リズムが乱れると自律神経のバランスが乱れます。また、外出制限から体を動かすことが減って身体機能が低下したことも、血圧や心拍に影響したと考えます」