「朝起き上がれない」中学生の10人に1人――起立性調節障害、不登校の要因に #今つらいあなたへ
起立性調節障害の診断は、横になった状態から立ち上がった後の血圧や心拍の変化などをみる「新起立試験」という検査を行い、どういったタイプに該当するかをみる。治療は子どもの重症度に合わせて、生活習慣の改善、薬による治療など主に6つの治療方法を組み合わせて行う。 吉田さんはまずこの病気について子どもと保護者にしっかり理解してもらうことが大切だと言う。 「毎日続く頭の痛みに『自分は死んでしまうかもしれない』と大きな不安を抱える子もいるし、保護者の中には朝起きられないことに対して『子どもがサボっているだけではないか』と考える人もいます。ですので、最初にこの病気を理解してもらうことが大切です。どういうことが体の中で起きているのかを知ると、お子さんも保護者も治療のモチベーションが上がっていきます」 次のステップは血圧を上げること。体の中の水分量を増やすため、水分や塩分をしっかりとり、規則正しい生活リズムや軽い運動といった生活習慣の改善や、薬を用いた治療を行う。薬剤としては、血管を収縮させたり、心臓の働きを強めたりして血圧を上げやすくする薬などがある。
治癒に必要な期間は数カ月から数年と幅があり、子どもによってさまざまだという。吉田さんは「家族や学校の先生や友達など周囲の人が起立性調節障害を理解し、当事者の子が孤立しないようにすることが大切です」と強調する。
学校現場では岡山県がガイドラインを作成
当事者や保護者が望むのが、学校の理解だ。取材をする中でも「担任の先生が代わり、主要科目はオンラインで授業をしてくれるようになった」という声があった一方、「学校のサポートがほぼなく勉強が遅れていて、個別塾に通っている」というケースもあり、学校現場の対応はまちまちのようだ。 教職員なども理解を深めてほしいと、岡山県教育委員会は2019年、医師や養護教諭らとともに「起立性調節障害対応ガイドライン」を作った。岡山県医師会から「不登校の子の中には、起立性調節障害の子もいるため、医療の観点から協力したい」と申し出があったことがきっかけだ。県内の小中学校・高校すべてに配布している。 ガイドラインの特徴は、周囲の子どもへの説明、進路指導の仕方、養護教諭とのかかわりなど、学校として起立性調節障害の子をどう支援するか具体的に書いてあることだ。季節によって症状に変動があるかや、自覚症状を問う「チェックシート」もあり、養護教諭や教員が子どもの不調に早期に気づけるように記されている。