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見解過去の判例を検討することは重要ですが、大事なのは「射程」です。 ここで挙げられているのは、2003年8月28日の東京地裁判決とみられますが、これは合法的に報酬を支払うことが認められている選挙カー運転手が、裁量的判断に基づき選挙運動も行った場合は「選挙運動者」(公職選挙法221条)に該当し、その報酬は選挙運動への対価とみなされ買収罪が成立するというものです。今回の兵庫県知事選で疑惑となっているのは、選挙期間前の準備作業の報酬が支払われた会社の社長個人が選挙運動を行ったと疑われる事例であって、報酬の約束があった労務者が選挙運動を行った事例ではありません。事案が大きく異なります。もう一つは100年近く前の判例であり、事案の詳細が不明です。 「包囲する判例」という見出しは読者を「判例によれば犯罪が成立する可能性が高い」との印象に誘導するもので要注意です。冷静な議論が求められます。

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 福永活也

    福永法律事務所 代表弁護士

    見解平成15年裁判例は、同じ選挙期間中に同一人物が選挙運動も有償の労務もしていた事案ですが、本件では会社…続きを読む

  • 園田寿

    甲南大学名誉教授、弁護士

    補足斎藤氏側の意見を前提にすれば、(1) 選挙期間前に(正当な)ポスター等の製作をPR会社に発注した、(…続きを読む

コメンテータープロフィール

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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