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国民民主の2議席が自公へ 候補者不足なければ立国維が与党を上回っていた 過去の総選挙で制度見直し論も

楊井人文弁護士
筆者作成

 10月27日投開票の総選挙の結果、政権与党(自民・公明)が15年ぶりの過半数割れとなった。11月11日にも召集される特別国会での首班指名選挙の行方に注目が集まっている。

 今回の選挙では、国民民主党の比例代表名簿の候補者不足より、本来獲得できたはずの比例の3議席が他党に移っていたことが判明しているNHKなど)。北関東ブロックで公明党が1議席、東海ブロックで自民党と立憲民主党が1議席ずつ獲得した。

 その結果、自民・公明あわせて215議席となった。自・公を除くと250議席となるが、立憲民主、国民民主、維新の3党で合計すると214議席だった。

 もしこの3議席を国民が獲得していた場合、「立・国・維」の獲得議席が「自・公」の合計を3議席上回っていたことになる(下図)。

 首班指名選挙では、1回目で過半数を得られなかった場合、上位2名の決選投票で1票でも多く得た候補が内閣総理大臣に指名される。

 首班指名における一票の重みが増していただけに、国民民主の3議席が他党に移っていなかった場合、与野党間の交渉やその後の展開に影響を与えた可能性は否定できない。

筆者作成
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 国民民主党は改選前の7議席から大幅に躍進し、28議席となったが、本来は31議席を獲得していたはずだった。同党は小選挙区、比例代表に計42人の候補を立てたが、比例単独は1人だけで、41人が重複立候補だった。

 玉木雄一郎代表は、選挙結果が判明した直後に、SNS(X)で「十分な候補者を擁立できず、国民民主党に投じていただいた票の一部が他党の議席にまわる結果となったことについて、お詫びを申し上げます」と陳謝。翌朝の記者会見でも陳謝した上で「制度上の問題もどう対応すればいいのか、これから慎重に考えていきたい」と言及した

 小選挙区比例代表並立制による総選挙は1996年から実施され、今回が10回目。比例名簿の候補者不足により他党に議席が移ったケースは、今回が4回目となった(過去の事例を含め、詳しくはニュースレターで解説予定)。

国民民主党代表の玉木雄一郎代表(同党公式YouTubeより)
国民民主党代表の玉木雄一郎代表(同党公式YouTubeより)

 総務省の担当者によると、同省としては公職選挙法に基づく議席配分の結果なので議席の「譲渡」や「移動」とは認識しておらず、公式な記録にはしていないという。

 民主党が大勝し政権交代となった2009年総選挙でも、民主党が獲得できたはずの3議席が自民・公明に移る事態が起きていた。

 総選挙の直後は「ある政党に投票したのに、その分の議席が全く反対の主張をしている政党に回れば、有権者の意思が尊重されないことになる。候補者が足りない場合、定数を減らすとの考え方があってもいい」(岩井奉信・日大教授、朝日新聞2009年9月1日)などと、制度見直しを求める声が報じられていた。だが、その後の民主党政権、自公政権でも制度の見直しが行われることはなかった。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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